“誰ひとり取り残さない”設計で、野村不動産のウェブサイトがアクセシビリティ賞受賞
野村不動産ホールディングス株式会社
野村不動産ホールディングス株式会社
野村不動産ホールディングスは、中長期経営計画の再構築や本社移転を機に、2025年4月、同社と野村不動産の公式ウェブサイトを全面リニューアルしました。プロジェクトには電通デジタルが企画段階から支援しました。なお、リニューアルした野村不動産のサイトは第13回Webグランプリ「企業グランプリ部門」において「アクセシビリティ賞」の優秀賞を受賞。本記事では、今後の運用や拡張性も見据えた本プロジェクトの取り組みを紹介します。
曽束由氏(野村不動産ホールディングス):旧ウェブサイトにはページ表示速度やUI/UXの課題がありましたが、最大の問題は「課題の言語化ができていなかったこと」でした。言語設定不備などの明確な問題も発生しており、改善の余地が大きいことが明らかになり、コーディングやタグ設定に構造的な課題があることも分かりました。
2025年4月の決算発表と新たな経営計画のリリース、同年8月の本社移転など、重要な施策を控えていて市場の注目が高まる中、ステークホルダーの皆さまにも公式ウェブサイトに訪問いただく機会が増えるとも想定していました。情報発信のあり方を再定義し、顧客体験の向上を図っていかなければいけない。そのため、25年4月のリリースを目指し、24年8月からリニューアルプロジェクトを始動しました。
佐々木まどか氏(野村不動産ホールディングス):我々が所属する部署ではIR・対外広報・社内報・広告宣伝を担っています。また、私も曽束も住宅事業部門出身なため、グループの商品や事業の動向には常に注目しています。近年はサステナビリティやウェルネスの観点から、バリアフリーへの配慮など社会や顧客のニーズに対応する重要性が増しています。
こうした思いや取り組みを適切に伝え、お客さまが求める情報へ導くことが「会社の顔」である公式ウェブサイトの役割です。現場の努力に応えるためにも、ホールディングスの責任として改善を推進する必要があると感じ、電通デジタルさんに支援いただくこととなりました。
櫻田航士(電通デジタル):まずは、今後の指針となる戦略構築にあたり、徹底的な課題の洗い出しと分析から始めました。広報・IR課やサステナビリティ推進部をはじめ多くの部署の皆様にご協力いただき、「社内ヒアリング調査」を広範囲に実施しました。「ウェブサイト運用・更新」「デザイン」「情報設計・ウェブサイト構築」「アクセス解析・KPI設計」「ブランディング」「コンテンツ」などの分野ごとに、現状の課題を把握し整理を進めていきました。
同時進行で、現行ウェブサイトについてもアクセス解析やSEO調査、樹形図設計・ウェブサイト構造調査、インフラやシステム(CMS)、運用体制の調査、さらに競合他社の調査も行い、様々な観点から課題を抽出しました。
課題が明確になったことで、リニューアルの方針として「利便性」「直観性」「保守性」「正確性」という4つのキーワードを掲げました。何よりも「正しい情報へ、誰もがアクセスしやすく・見やすくする」ことを重視して、検索需要に応じたSEO対策や直感的なわかりやすさ、ガイドライン策定による品質担保、情報の正確性・迅速性の向上を主眼にプロジェクトを進めました。
松本純怜(電通デジタル):また、主な利用者である投資家や取引先、社員、求職者などのペルソナを明確化し、「すべてのステークホルダーをつなぐコミュニケーションハブ」というコンセプトを策定しました。公式ウェブサイト訪問者が企業や各事業への理解を深め、適切な情報にたどり着けるよう、情報設計を構築しました。
曽束:電通デジタルさんの提案を受けながら戦略策定を進めた中で、グループ共通のCMSや運用体制の統一といった新たな課題も明らかになりました。これを機に、当初構想よりも大規模な、グループ全体の基盤刷新プロジェクトへと発展。フェーズ1のリニューアルから、フェーズ2の新基盤・新CMS構築、フェーズ3のグループ全体への展開という3段階のロードマップを描き、現在も取り組みを進めています。
松本:リニューアル方針やコンセプト、ペルソナ定義やニーズ仮説に沿って情報設計を進め、ウェブサイト内の回遊性を意識した導線設計に注力しました。また、キーワード対策やブランドイメージの統一感を伝えるデザイン、表示速度の改善など、多角的なポイントに気を配りながら開発・構築を行っています。
限られた期間内で400ページを超える大規模リニューアルに取り組む中、スケジュールの遅延を防ぎ、発生した課題をスピーディーに解決することを大事にしました。社内外のメンバーの力を集結しつつ、質を担保しながらスケジュール通りに「やり切る」ことに注力しました。
佐々木:私は最終ランナーとしてリリース前の“人の目”によるチェックを担当しましたが、育児期間中で夜間残業ができなかったため、早朝から作業に取り組む日々でした。意思疎通や進捗確認が相違なく進められた要因として大きかった点は、プロジェクト最終段階で毎朝実施していた30分間のオンラインミーティングです。その日のタスク確認や、発生した課題の即時解決に非常に役立ち、チームの連携強化にもつながったと感じています。
櫻田:「アクセシビリティ賞」は、高齢者や障害のある方はもちろん、ウェブサイトに訪れた方々すべてがストレスなく、快適に利用できるかを審査するものです。誰ひとり取り残さないウェブサイトを目指して地道な作業を積み上げ、アクセシビリティ改善に取り組んだことが、結果的に受賞につながったと感じています。
審査員のコメントを見ると、情報構造や操作性、視認性などの基本要件がしっかり考慮されている点を評価していただきましたが、飛び抜けた決め手があったというよりは、一つひとつの丁寧な積み重ねが功を奏した結果だと思います。
私たちが大切にしたのは、アクセシビリティガイドラインを順守しつつ、企業のブランディングやデザイン性をどう担保するかというバランスです。伝えたい情報が多い中で、どこまでガイドラインに合わせ、どこまで自分たちの思いを表現できるか。野村不動産ホールディングス様の思いとガイドライン準拠のバランスに最大限配慮しながら、綿密なコミュニケーションと細やかな調整を重ねてきたことが、今回の評価につながったポイントだと考えています。
松本:たとえば、トップページで芝浦から見える海の写真に白抜き文字を重ねる際の写真のトーンやコーポレートカラーの使い方など、視認性を保ちつつ美しさも追求するため、細かな点まで丁寧に議論しながら進めました。
戦略立案から開発まで同じメンバーが一貫対応し、社内にアクセシビリティの専門チームがいることで、判断に迷ったときはすぐアドバイスを受けられたのも、当社の大きな強みだと思います。
曽束:戦略フェーズで課題解決の方針をしっかり固めても、リニューアルを進める中で「もっとかっこいい写真がいいのでは」など複数の意見や要望が入り、思いが揺れることもありました。
そうしたときでも「この方法はアクセシビリティ基準を満たさなくなるリスクがあります」「代替案としてこういった方法も考えられます」など、ガイドラインの説明を踏まえつつ複数案を出してくださり、思いに寄り添いながらも適切に導いていただける姿勢が本当に頼もしかったです。
佐々木:迷ったときは「お客様優先」で判断するという姿勢を電通デジタルの皆さんと共有でき、情熱だけでなく論理的な伴走をしていただいたこともありがたかったです。チーム全体で対話を重ねながらプロジェクトを進められたことが、今回の結果に結びついたと実感しています。
佐々木:今回の受賞を機に、グループ会社からは実際に行ったアクセシビリティ対策の共有要望や、表示速度、目的の情報へのアクセスがしやすくなったなど、ポジティブな反響が相次いでいます。「誰もが見やすいサイト」というスタート地点にようやく立てたことで、今後はグループ全体のウェブサイト品質向上に波及させていきたいですね。
曽束:アクセシビリティに関する取り組みは、今や企業の評価に直結する“当たり前の基準”になってきています。今回の受賞は、グループ全体の品質向上への第一歩です。今はフェーズ2としてCMS改善に着手していますが、この大規模プロジェクトをやり切って、グループ全体のウェブサイト品質向上、さらには企業価値向上へとつなげていきたいです。
松本:今後、アクセシビリティをはじめ公式ウェブサイトに求められる要件は、多様化・複雑化が進むと想定しています。だからこそ、電通デジタルならではの総合力を発揮して、ガイドラインに準拠しつつ各社ごとの課題に丁寧に向き合い、これからも伴走していきたいと思います。
櫻田:ウェブサイトのリニューアルのみならず、テクノロジーの急速な進化は常に起こっており、企業DXの取り組みに終わりはありません。近年はAI活用が叫ばれていますが、私たちは「最新技術の導入=目的達成ではない」と考えており、企業の目的や課題解決の選択肢として、AI含め、多くの手段手法から適切・効果的と考えた提案を行っています。
電通デジタルには、多様なニーズに応えられるさまざまなアセットがあり、「デジタル」における全方位的な支援が提供できる点が大きな強みです。アクセシビリティは特別なものではなく、使いやすいウェブサイトを支える「当たり前の基盤」と考えています。遵守すべきガイドラインや企業としてのブランディング、UI/UXのバランスを取りながら、これからも企業価値向上に向けて多様なご要望にオーダーメイドで対応していきます。
プロフィール
2022年に電通デジタルへ入社。オウンドメディア事業部に所属し、セールスファネルマネジメントからWebサイト制作まで、マーケティングの上流から下流まで幅広い業務に従事。戦略設計から実行フェーズまでを俯瞰し、ビジネスゴールとユーザー体験を統合することを強みとする。Webサイト制作においては、ユーザーインサイトを起点とした情報設計を軸に、UI/UX設計、コンテンツプランニング、クリエイティブ制作まで横断的に対応。
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