インド市場のリアルを、AIと現地知見で解き明かす。ユニ・チャームのペット事業参入支援の舞台裏
ユニ・チャーム株式会社
ユニ・チャーム株式会社
インドでベビーケア事業を展開するユニ・チャームが、新たにペット事業の現地展開を検討するにあたり、電通デジタルとdentsu IndiaはAIソリューション「LOCAL ZOOM」を活用した市場分析・戦略策定を実施しました。AIによるデータ分析と現地プランナーの知見を掛け合わせることで、インド市場のリアルな生活者理解をどのように導き出したのか。dentsu India・電通デジタルの担当者3名に、グローバル連携だからこそ生まれた価値とそのプロセスを聞きました。
清水麻里子(電通デジタル):もともとdentsu Indiaの高田さんがUnicharm India(現地法人)のベビーケア事業の支援を行っていました。そうした中で、クライアントから「インドで新たにペットケア事業を立ち上げ、ビジネスを拡大したい」というご相談をいただきました。
ちょうどその頃、電通デジタルでは「LOCAL ZOOM」というAIソリューションのPoC(概念実証)を進めていました。これは、SNSや商品レビューなどの公開データをAIで分析し、海外市場における生活者インサイト(深層心理)や市場動向を把握することで、戦略立案を支援するものです。このソリューションがクライアントの課題解決に非常に適していると考え、dentsu Indiaのチームを通じてご提案しました。
プロジェクトでは、高田さんがフロントの営業担当として全体を推進し、dentsu Indiaでプランナーを務めるダグルさんには、LOCAL ZOOMの分析内容の現地目線でのレビュー、確らしさの裏付けの取りまとめを担っていただきました。
高田和憲氏(dentsu India):インドは人口増加と経済成長が著しく、世界でも競争の激しい市場の一つです。ペット市場についても成長余地が大きく、非常に魅力的なフェーズだと感じています。
高田 和憲氏
(dentsu India Executive Vice President Dentsu Creative)
カルナ・ダグル氏(dentsu India):インドでは以前から犬がペット市場の中心でしたが、ここ5〜6年で猫を飼う人が急増している点が大きな特徴です。現在、市場全体は約40億米ドル規模とされ、その約80%をペットフードが占めており、現状は犬関連の商品がマジョリティです。
一方で、猫市場は発展途上ながらも急速に拡大しています。その背景にあるのが、「DINKWADs(ペットと暮らす共働き夫婦)」と呼ばれるライフスタイルの広がりです。彼らは仕事や旅行で家を空ける時間が長いため、比較的飼いやすい猫を選ぶ傾向があります。私自身も猫を飼っていますが、この2〜3年で猫用品の選択肢が一気に増えたと実感しています。
たとえば、インドの大手ペットケアブランド「Heads Up for Tails」は、ECに加えて実店舗も展開しています。バンガロールやデリー、グルガオンの店舗では、以前は売り場の大半が犬向けで、猫用品は小さなコーナーがあるだけでした。しかし現在では、犬用・猫用それぞれの専門売り場が並ぶまでに拡大しています。特にコロナ禍以降の5年間で、猫用品市場は目覚ましい成長を遂げています。
カルナ ダグル氏(Karuna Dagur)
(dentsu India Vice President Dentsu India Management Team)
清水:大きく3つの柱で構成されています。まず、InstagramなどのSNSデータをもとにしたペットオーナーのペルソナ分析・クラスタリング。次に、Amazonなど ECの商品レビューの定量・定性分析を通して商品の差別化ポイントを探ります。それらの分析結果を基に、インドと既にペット事業を展開しているタイとの市場比較を通じた「競合ポジショニング分析を行いました。これらを統合し、「誰に・何を・どう伝えるか」というコミュニケーション戦略の方向性と、クリエイティブの構造案までをレポートとして納品しました。
納品レポート例
ダグル:特に的確だと感じたのは、ペットオーナーのペルソナ分析です。SNSデータを活用し、ペットオーナーの属性やタイプを可視化していたのですが、その内容は私自身が現地で見聞きしている実態や、各種市場レポートとも非常によく一致していました。精度が高く、有用な分析だったと思います。
一方で、現地ならではの補足として、インドではペットフード購入時にAmazon以外のプラットフォームも非常に多く利用されているという実態があります。現在のインドの都市部では、注文後15〜20分で商品が届く「クイックコマース(即時配送サービス)」が爆発的な急成長を遂げており、ペットフードの日常的な購入にも広く利用されています。また、ポイントプログラムや割引が充実したペット専門のECモールや、近所の個人経営のペットショップに直接電話して配達してもらうようなコミュニティに根ざした購入チャネルも根強く存在しています。
こうしたチャネルはAmazonのようにカスタマーレビューがWeb上に蓄積されにくく、デジタルデータとして分析対象に含めることが難しい側面があります。今回はLOCAL ZOOMの分析結果にこうした現地のリアルな購買動向を掛け合わせることで、さらに解像度の高い戦略へと昇華させることができたと感じています。
高田:グローバル協業において私たちが基本スタンスとしているのは、現地メンバーの知見へのリスペクトと、彼らが100%の力を発揮できる環境づくりです。
今回はLOCAL ZOOMという先進的なAIソリューションを武器に、現地市場に深く精通し、かつ実際の生活者としての視点を持ったメンバーとタッグを組む体制を重視しました。その結果、ダグルさんをはじめとする現地チームから、非常にシャープなインサイトをタイムリーに引き出すことができました。
清水:AIによる膨大なSNSやECのデータ分析によって、インドで猫の飼育率が伸びている実態をWeb上にある「現象」として捉えることができました。ただ、そこに現地チームが持つ生活実感や価値観といった定性的な文脈が組み合わさることで、データから導かれる示唆や仮説の解像度が飛躍的に高まりました。電通デジタルが「ハブ」となって日本企業の戦略立案に活用できる形へと咀嚼・翻訳(トランスレート)することで、より実践的で納得感のある価値を提供できたと感じています。
高田:短期間でここまで精度の高い分析と提案ができたことに、驚きと喜びの声をいただきました。特に、AIによる定量分析と現地のリアルな視点を組み合わせたことで、クライアントが既存商品に対して持っていた仮説を裏付けるだけでなく、「新しい見せ方やアプローチの方向性」という予期せぬ視点も発見していただけたことは大きな成果です。
ダグル:インド市場は「一つの国でありながら、非常に多様性が大きい」という複雑さを持っています。地域が異なるだけで、言語も生活者行動も購買スタイルも大きく変わります。
さらに、現在のインド市場で何より重要なのは「スピード」です。クイックコマースなどの急速なデジタル化によって毎日のように新しいブランドが登場しており、生活者のマインドシェアを獲得するには、誰よりも早く市場を理解し、動く必要があります。そのためには、AIベースのソリューションと現地の知見を組み合わせ、市場参入までの時間を圧倒的に短縮することが不可欠です。
高田:海外市場、特にインドは非常に複雑で、どれだけ綿密に机上で戦略を立てても、その通りに進むとは限りません。だからこそ重要なのは、すばやく仮説を立てて実行し、検証しながら改善を繰り返す「高速なサイクル」です。電通グループは、LOCAL ZOOMをはじめとするAIソリューションを活用し、市場データの収集・分析から戦略立案、そして現地での実行・改善までを一気通貫で支援できる体制を整えています。
清水:今回の事例で言えば、まだインド市場について十分なデータや知見をお持ちでないクライアントに対して、現地のリアルな市場環境を、日本のビジネス視点に合わせた分かりやすい言葉や文脈に「翻訳」してお伝えできたことが、私たちの大きな価値だったと思います。
「速さ」と「質の高さ」を両立し、短期間でも打率の高いアウトプットを提供する。そこにLOCAL ZOOMと電通デジタルの本質的な強みがあります。海外市場への参入やビジネス拡大を目指す企業にとって、私たちは常に最適な伴走パートナーであり続けたいと考えています。
海外進出や現地理解に課題を感じていませんか?「LOCAL ZOOM」は、AIデータと現地知見を融合し、市場参入までの時間を圧倒的に短縮。戦略立案から実行まで、打率の高いグローバル展開をサポートします。
プロフィール
日本IBMでキャリアをスタート。ITソリューションサービスの営業として、金融業界を中心に幅広いクライアントを担当。特に企業の働き方改革の中心となるワークプレース最適化に寄与するプロジェクトをリード。2018年に電通アイソバーに入社後はロンシャンをはじめ外資系クライアントを中心にアカウントマネージャーとして従事。CXを起点としたマーケティング・コミュニケーション領域に関してコンサルテーションからエグゼキューションまで様々なプロジェクトを推進。2021年7月からは電通デジタルとして、より幅広い業界においてグローバルプロジェクトをリードするグローバルアカウントマネージャーとして従事。
この記事・サービスに関するお問い合わせはこちらから