顧客を360度ビューで見る――スヴェンソンが挑んだ組織横断のデータ統合プロジェクト
株式会社スヴェンソン
日本マイクロソフト株式会社
マンパワー不足の中、日本企業の99%以上を占めると言われる中堅・中小企業を対象としたマーケティング施策に課題を抱えていた日本マイクロソフト。この課題に対し、電通デジタルはマーケティングモデルのリデザインを提案。両社はどのようにプロジェクトを進め、課題解決を実現したのか、取り組みを紹介する。
※「日経ビジネス電子版Special」(2023年8月25日公開)に掲載された広告を転載
禁無断転載©日経BP
日本マイクロソフト・鈴木哉氏(以下、鈴木):当社の中堅・中小企業向け事業は、営業担当が直接製品を販売するのではなく、提携する販売パートナー様の営業活動を通して各企業様にご購入いただくというビジネスモデルです。
販売パートナー様は、当然ながら他社製品も扱っていますので、マーケティング担当としては、いかに当社の製品を優先的に扱っていただくかが重要です。しかし、中堅・中小企業向けのマーケティング担当が私を含め2人しかいなかったため、なかなか販売パートナー様との連携強化にまで手が回り切らないという課題がありました。
また、最終的にご購入いただく中堅・中小企業の決定権者へのアプローチにおいても、有効なコミュニケーションをいかに構築するかが課題となっていました。少ないマンパワーでこうした課題を克服するため、広くお声掛けし、施策をご提案いただく形になったというのが経緯です。
電通デジタル・相原孝文(以下、相原):わずか2人の担当者で販売パートナー様と中堅・中小企業の決定権者の双方にアプローチするのは、かなり困難です。そのため、1つの施策でこの両者を同時にアクティベートできる手法を考える必要がありました。
そこで中堅・中小企業に向けたBtoCと販売パートナー様に向けたBtoBを別々に考えるのではなく、両者を融合させた「BtoC&B」を実現することを目指したわけです。
電通デジタル・井村友美(以下、井村):最初に鈴木様からお話を伺った際、今までのマーケティング手法から変えていきたい強い意志を感じたので、単にマーケティング構想を示すだけでなく、「BtoC&B」を実現できるような具体的な施策も含め、フルパッケージでご提案しようと考えました。
この事業リデザインチームは、クリエイティブ発想でマーケティングモデルを開発することを得意とするチームのため、戦略からアウトプットまでスピード感を持って、一気通貫で提案できるという点は強みだったと思います。
鈴木:BtoCとBtoBを融合するという考え方は、従来とは視点の違う新しいものでした。考え方の筋道も納得できるものでしたし、電通デジタルさんからは具体的な施策もセットでご提案いただき、腹落ち感があったのが採用を決めた理由です。
鈴木:「Microsoft Defender for Business」は、当社が新たにローンチした法人向けセキュリティソフトです。近年、中堅・中小企業を対象にしたランサムウエアによる攻撃が増加傾向にあり、セキュリティ対策のニーズの高まりが開発背景にありました。
マイクロソフト自身が長年サイバー攻撃を防御してきたノウハウがあり、その蓄積を生かした優れた製品であるとの自負はありました。ただ、セキュリティソフトとしては後発であるため、販売パートナー様と中堅・中小企業の双方に対して認知度を高める必要がありました。
相原:双方に同時に届く「BtoC&B」施策として当社からご提案したのが、地方特化型のコミュニケーションです。中堅・中小企業の多くが地方に立地している点に着目し、決定権者との親和性が高い地方テレビ番組や新聞広告、つまりノンデジタルチャネルを活用しながら、セキュリティの重要性や製品の優位性をプロモーションすることをご提案しました。
鈴木:25局にも及ぶ地方テレビ番組を活用したプロモーションで、販売パートナー様と中堅・中小企業の決定権者の双方に対し、効率的に情報を届けることができました。その結果、一気に認知度が高まり、中堅・中小企業から販売パートナー様に当社製品を “逆指名”いただくケースも増えました。電通デジタルさんの思惑通り、両者を同時にアクティベートできた成果だと思います。
日本マイクロソフト・松村仁樹氏(以下、松村):「Microsoft 365」は、Officeアプリケーションを核とした法人向けサブスク型グループウエアです。当社製品は、従来のパッケージ販売中心のビジネスからクラウド型ビジネスへの移行を進めていますが、日本は欧米に比べると遅れているという課題がありました。
Office自体は十分に浸透していますが、「単体買い切り版で十分」「サブスクに切り替えるメリットが分からない」といった中堅・中小企業の声が多く、いわばニーズ自体を再発掘しなければいけないという困難さがあり、第1弾で成功した「BtoC&B」のマーケティングを活用できないか相談をさせていただきました。
井村:当社から提案したのは、「Microsoft 365」をサブスク型サービスとしてではなく、中堅・中小企業が手軽に始められるDXソリューションとしてプロモーションするという考え方でした。
第1弾同様、販売パートナー様と中堅・中小企業の双方に刺さるマーケティング施策を検討し、その中の目玉としてご提案したのが、観音開き仕様の120段パノラマ新聞広告です。「使い慣れたOfficeソフトを、DXの即戦力に。」というキャッチコピーと共に、中堅・中小企業の困りごとを解決するツールとしてアピールしました。
松村:DXなのにあえて紙の広告というのは、電通デジタルさんでなければできない発想だったと思います。観音開きでインパクトもありましたし、「Microsoft 365」の多岐にわたるサービスをDXという観点で、しかも中堅・中小企業の決定権者が自分ゴトとして理解できるようにまとめていただいたので、当社の販売パートナー様が持ち歩いて営業ツールとしても活用できるというメリットがありました。
鈴木:競合他社はあれを見て「やられた!」と思ったのではないでしょうか。
結果的に、第1弾の「Microsoft Defender for Business」は当社グローバル売り上げランキングで2位、第2弾の「Microsoft 365」は当社グローバル売り上げで対前年比成長率1位という成果につながりました。
相原:当社と日本マイクロソフト様の間で、同じ目標を共有し、密に連携が取れていた点です。ディスカッションする中で出てきた失敗のリスクをつぶしながら進めることができたので、成功の確度が高まったのだと思います。
鈴木:当社では、中堅・中小企業の業務効率化や生産性向上、DX導入支援などをサポートするため、社内部署横断の「Project Ocean」という取り組みを進めています。
今後も当社は、中堅・中小企業にフォーカスする方針ですし、「BtoC&B」で2つの事例が成功したことがこの取り組みを進める追い風になっています。「Project Ocean」をはじめとする中堅・中小企業支援において、今後もこのマーケティングモデルを活用したいと考えているので、「BtoC&B」のますますの進化に期待したいと思います。
井村:当社は「クライアント企業の事業成長パートナー」をミッションに掲げています。鈴木様、松村様からフルパッケージでの提案が採用の決め手だったとご評価いただいたように、豊富なスキルを持ったメンバーとチームを組んで伴走できるのが当社の強みです。今後もクライアント企業の多様なマーケティング課題に対して、共に打ち手を考え成長していけるパートナーとして支援し続けたいと思います。
相原:日本マイクロソフト様同様、少数精鋭でマーケティング課題に立ち向かっている企業は少なくありません。マーケティングとクリエイティブをセットで提供できる当社は、本質的な課題解決のために、ビジネスモデル構築から具体的なアウトプットまで、一気通貫で、かつスピード感を持って支援することができます。今後もこの優位性を生かしながら、クライアント企業の成長に貢献できればと思います。
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