顧客を360度ビューで見る――スヴェンソンが挑んだ組織横断のデータ統合プロジェクト
株式会社スヴェンソン
スマドリ株式会社
電通デジタルは2022年、アサヒビールと共同で、お酒を飲む人と飲まない人が尊重し合える社会の実現を目指す「スマートドリンキング®」を推進するため、合弁会社「スマドリ株式会社」を設立。お酒を飲まない/飲めない約4000万人にアプローチできる商品開発とマーケティングに向けた取り組みを進めています。
佐藤:アサヒビールが提案する新しい飲み方であるスマドリを普及するにあたり、お酒を「飲まない/飲めない」若い世代が在籍していること、Z世代のインサイトに詳しいこと、かつデータを活用した顧客理解やマーケティング推進に強い会社ということで、電通デジタルにお声がけいただきました。
吉岡:ターゲットのインサイトを可視化する方法としてN1分析を採用し、実在する1人のターゲット顧客を選び、商品やサービスに対する考え方を深く掘り下げました。お酒を飲まない/飲めない人は、お酒を飲む場が嫌いというわけではなく、飲む人/飲める人と一緒に楽しみたいと思っています。その一方で、飲めないことに不自由感を感じていました。そうしたインサイトを丁寧に掘り下げ、2022年、渋谷・センター街にスマドリバー渋谷をオープンしました。
野溝:私は昨年秋の領域内公募を経て、24年1月からスマドリバー渋谷のプロモーション担当に従事しています。長らくマーケティングコミュニケーション領域で仕事をしてきましたが、デジタル広告経験のあるZ世代を募集しているとのことで、今回の機会をいただきました。現在の業務は、InstagramやLINEといったスマドリバー渋谷オウンドSNSアカウントからの配信コンテンツ精査、クリエイティブのクオリティチェック、店舗イベント検討のほか、新メニュー開発に伴う試飲・試食会での意見出しです。これまでコミュニケーション領域で培ってきたデジタルマーケティングの知識や経験と、スマドリバーのターゲット年齢層としての視点を活かして取り組んでいます。
若年層向けの広告施策や、諸処確認工数の多い“コンテンツ制作型の案件”を手掛けていた経験は、担当領域が変わった今でも活きていると感じます。例えば、カクテルやフードの味、メニューの見せ方、SNSでの配信コンテンツ等を考える際も、ターゲットに対してどのような形であれば刺さりやすく、認知され、実際にバーに足を運んで貰えるのか、気に入ってもらえそうかを第一に、社内のみならず店舗スタッフさん、運営パートナーさんも含め、相互の最適解に至るまでじっくり協議します。
これは、クライアント企業の戦略に寄り添って広告商品の仕様調整をしたり、実際に広告接触する方の視点に立って提案方向性を試行錯誤したりしていた経験にも似ている部分が多いので、相手の意識を捉えるという点で共通のアプローチができていると思います。
皆川:私は「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」というスマドリを中心とした産官学連携の取り組みに関わっています。 渋谷区と渋谷区内にある大学、企業を中心とした取り組みとしてスタートしたプロジェクトだったのですが、 スマドリも今後、渋谷区内はもちろん、区外の自治体や様々な企業との取り組みを拡大・強化していきたいということで、上司から声をかけてもらい、 23年から産官学連携に関する新規アライアンスの獲得・ 運営支援を担当しています。
スマドリバー渋谷の最終目的は、リアルな場での体験を通して、スマドリという新しい文化を多くの方々に認知、理解していただき、飲み方の多様性を尊重し合える社会を実現することです。単にスマドリバー渋谷という存在を認知させたいだけであれば、広告という手法が、ごくごく一般的な選択肢だったと思います 。しかし、適正飲酒という考え方も含めた、「スマートドリンキング」という新しい文化の浸透において行動変容を促すためには、広告以外の異なる切り口からのアプローチが必要です。
その一つの解決策が、自治体・団体・大学・他の企業など、より多くの人を巻き込みながら一緒に何かをしていくことだと思います。実際に、「スマートドリンキング」を起点に繋がり、互いの課題と理想を持ち寄った上でディスカッションし、双方にとってより良い在り方や関わり方を模索していくことは、地道ではありますが関わった人の行動変容を起こしています。この関わりがハブになり「スマートドリンキング」という新しい文化の浸透とスケールすることに繋がっていくのだと思います。
吉岡:私は主に、スマドリバー渋谷のデータ収集と活用を担当しています。取得しているデータは大きく分けて4つあります。1つ目は、スマドリバー渋谷の来店者データ。2つ目は、お客様へのデプスインタビューによる定性データ。3つ目は、スマドリアンバサダー[注1]の皆さんとのワークショップから収集した定性データ。4つ目は、サードパーティの買い物データです。これらのデータを活用して、スマドリバー渋谷のメニュー開発、顧客分析、ペルソナの作成を行っています。
吉岡:オープンからこれまでの間に、約5万人の方にご来店いただきました。来店者の定量データを収集し、定性データで深掘りしていくことで、アサヒビール様の商品開発にも活かせるようなデータを収集することができました。
佐藤:電通デジタルの4つのサービス領域「トランスフォーメーション」「テクノロジー」「クリエイティブ」「コミュニケーション」すべてが融合した案件だと思います。各領域から人員を出してプロジェクトを回していても、どうしても各領域分断されがちです。しかし電通デジタルでは、他部門連携が当たり前な社風かつ各部門のケイパビリティが組織全体に浸透しやすい文化なため、スマドリでも参加する社員全員が自らの領域だけに閉じていない。だからこそ、小回りが利いて、クライアント企業も驚くほどのスピードで、施策を実行していくことができます。電通グループであるシナジーも含めて、電通デジタルは、非常に顧客融通力の高い会社だと改めて思いました。
吉岡:今回のプロジェクトを通して、電通デジタルはデジタルマーケティングに関する知見が非常に多い会社だと感じています。それにH型人材[注2]がすごく多い。個々人の専門性が高くても、結局、それが有機的に連携していないと、プロジェクトとしては意味をなさないですからね。
例えば、以前所属していたメンバーは、CX設計が主な業務でしたが、どういうテクノロジーを使ってお客様とコミュニケーションを取るかまで含めて提案できた。もちろん最終的にはテクノロジー領域と連携して実施していきますが、そのやりとりは非常にスムーズですし、イメージを具現化する際の解像度も高い。こういった社員が揃っていることが、電通デジタルの強みかなと思います。また、電通グループ各社との連携により、オンライン・オフラインをまたいだ様々な施策をシームレスに実施できることも、大きな強みだと思います。
1.スマートドリンキングの推進役やメニュー開発のアドバイザーを担う
2.自身が専門性と知識を持ちながら、他の分野の人材とも繋がり仕事を進められる人材
元田 済 氏(スマドリ株式会社 取締役CMO)
ターゲットの視点かつデジタルマーケティングの知見を持つ心強いパートナー
電通デジタルのメンバーの多くは、スマドリのターゲットである「飲めない/飲まない」「MZ世代」と重なり、精度の高いユーザー視点のアプローチとユーザー理解が可能になっています。その最初の成果がスマドリバー渋谷で、現在同所で実施している各種デジタル施策は、電通デジタルとの協業だからこそ成し得たことです。今後も、リアルとデジタルを融合した新たなチャレンジに取り組んでいきたいと思っています。
プロフィール
スマドリ株式会社 アライアンスマネージャー。 ネット広告代理店を経て2018年4月に電通アイソバー(現:電通デジタル)に入社。主に保険、不動産業界を担当。事業会社に常駐しデジタルマーケティング全般のサポートを実践する経験複数。2022年4月より現職。
小規模の総合広告代理店のアカウントからキャリアをスタート。グラフィックメインのプロダクション、Web・デジタル周りのプロダクションを経て、2022年から電通デジタルに入社。アカウントエグゼクティブとして、事業企画や戦略立案といったコンサル業務から、Webサイト制作や広告運用等のコミュニケーションプランニングまで、お客様の課題に応じたソリューションの提供をリードする。
2020年、電通デジタルに新卒入社。以降、ABEMAやSpotifyなどの新興媒体、電通専売商品『PremiumView』の担当プランナーとして、メディアグロースに向けた拡販活動~各種パッケージ開発に従事。ブランディング案件を中心に、動画プランニングや、メディアタイアップ、企業プレイリスト制作ディレクションを複数件経験。2024年より現職。
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