顧客を360度ビューで見る――スヴェンソンが挑んだ組織横断のデータ統合プロジェクト
株式会社スヴェンソン
株式会社NTTドコモ
電通デジタルは、NTTドコモのdポイントクラブのデジタルコミュニケーションを長く支援しています。常駐チームに加えて、デジタル広告やクリエイティブのチームも交え、一気通貫の支援で強みを発揮してきました。今回は、この3つのチームがどのように連携し、dポイントクラブの事業拡大に寄与したのか紹介します。
川原:NTTドコモ様は、長く通信事業をメインに行ってきた企業ですが、「dポイントクラブ」というポイント事業を中心に、回線契約ユーザーはもちろんのこと、回線契約ユーザー以外の方との接点も拡大していくことに取り組まれていました。これまでリアル店舗でのお客様とのコミュニケーションノウハウは溜まっていたものの、dポイントの会員拡大に向けたデジタル上のマーケティングやコミュニケーションをどうしていくかという点に、課題をお持ちでした。
そんな中、経営直轄で「デジタルマーケティング推進部」を立ち上げ、dポイントを軸にユーザー接点の拡大に力を入れようとしていたところでした。
川原:もともとNTTドコモ様とは、常駐型で回線事業のマーケティングのご支援をしていました。デジタルマーケティング推進部の立ち上げの際に、NTTドコモ様の社内で相談している中で、電通デジタルの良い評判が届いたようで、そこからお声がけいただいたという流れです。
川原:クライアント企業の近くで同じ目線を共有しながら事業を推進できることです。これにより、クライアント企業のスピード感や温度感をリアルタイムで把握し、環境の変化にも素早く対応することが可能になります。また、個人情報以外の1stパーティデータも扱えるため、リアルな事業の現状を知ることができます。実態に即した提案や支援ができる点が常駐型の大きなメリットですね。
川原:当初のプロジェクトの目的は、dポイントクラブの会員獲得です。ドコモの回線を利用している方は、dポイントとの親和性がありますが、他キャリアユーザーの方はそうではありません。他キャリアユーザーにどうやって会員になっていただくか、若年層の方にどうアプローチしていくかなど、やるべきことが多くありました。
そこで、SNS運用やキャンペーンのデジタル広告の配信などを実施するべく、他部署の電通デジタルのメンバーにも参加してもらいました。
一宮:私はNTTドコモ様の課題を解決するための打ち手の一つとして、メディアをどう活用していくかという立場で参加させてもらいました。これまで当社で回線事業での支援をしてきた成功事例を踏まえて、dポイントの課題にマッチするものが何かを議論しながら、広告配信の企画や運用をしていきました。
NTTドコモ様と私たちマーケティングチームとの間にある前提や指針のズレを、常駐の川原さんチームがうまく調整してくれたおかげで、質の高いサービスを迅速に提供することができました。これが今回のプロジェクト全体を通して特に良かった点だと思います。
門馬:私はソーシャルメディアの企画、クリエイティブ開発、運用面を支援しました。もともとdポイントは、X(当時はTwitter)を運用されていたので、新たにInstagramの開設を提案しました。
SNSをメディアとしてきちんと機能させるためには、フォロワーを獲得していかなければいけません。そのためにどんなコミュニケーションを展開していけばよいか。さらに獲得したフォロワーに対してdポイントへのエンゲージメントを高めてもらうにはどういった投稿・コミュニケーションを行なっていくかなどをNTTドコモ様と一緒に企画を考えていく中で、やはり我々も常駐チームのメンバーにはかなり助けてもらいました。先方の温度感などを教えてもらいながら、有効性の高い提案ができたと思っています。
川原:我々常駐チームは、dポイントの会員拡大に向けたキャンペーン設計やインセンティブ設計など、会員獲得のスキームを構築していきました。また、一宮さんや門馬さんのチームの提案に対し、NTTドコモ様が議論していく中での全体的な調整などの役割を担いました。
川原:一番避けたかったのは、クライアント企業との会議の場なのに、電通デジタル同士の会話になってしまうようなことです。これでは、誰のために議論しているのかわからなくなってしまいます。専門用語の翻訳作業をしつつ、意思決定はNTTドコモ様側に委ねるように心がけました。また、一宮さんや門馬さんが話しやすいように、事前にクライアント企業の温度感を共有し、2人の提案に対してフィードバックを行うことも、重要なポイントでした。
門馬:我々は、SNSの運用とデータ分析を含めたPDCAを回していくという点で多くのノウハウを持っています。他社と比べて、より深い分析ができるチーム体制があることも強みだと言えます。
実は、NTTドコモ様と日々話していく中で、一度アカウントの運用方針を大きく変えたのですが、それによって成果が加速していった経験は、我々にとっても非常に貴重なものでした。フォロワーが増加しメディアとしての力が付いていく中で、クライアント企業社内での活用の要望が高まったことにも、大きな手応えを感じましたね。
一宮:デジタルメディアの運用は非常に複雑なため、極力シンプルなKPIにすることが多いのですが、そうするとビジネスの本質からずれてしまうこともあります。今回のプロジェクトでは、常駐チームをハブにしてNTTドコモ様の感触を把握しながら、本質的な効果を見失うことなくPDCAを回せたのは非常に良い経験でした。
例えば、他社キャリアユーザーへアプローチすることは、コスト効率が必然的に下がってしまいます。しかし、事業戦略としてどこまでが許容範囲なのか、どういうスコープであればLTVとして有効だと考えられるのかなどをきちんと紐解いて議論できたのはすごく良かったと思っています。
また、デジタル広告についての知見を得てもらうために、勉強会を3回ほど開催させてもらいました。こうした勉強会は、恣意的に最新トレンドを伝えて、聴講者も消化しきれずに終わってしまうというようなパターンに陥る場合もあります。しかし今回は、どんな勉強会をしてほしいのかきちんとヒアリングをしたうえで実施したので、すぐに仕事に生かせるようなインプットを提供することができました。その知識をベースに議論が加速し、一つひとつの施策の精度が上がった実感があります。
川原:プロジェクトのマネジメントと推進力を持つメンバーを常駐チームに配置しました。さらに、NTTドコモ様の要望に応じて、データ分析やSNS運用のスキルを備えた人材もアサインしています。次に発生する可能性のある課題を予測し、必要な人材の提案も行っています。このように、多様な領域に対応できる組織や人材を有しており、臨機応変に対応できることが私たちの強みですね。
門馬:これは我々だけの力ではありませんが、dポイントクラブの会員数は当初約7000万人だったのが、およそ1億人を超えるまでに成長しました。また、ゼロから立ち上げたInstagramは、現在フォロワーが68.7万人(2024年12月時点 )となっています。我々の支援が、この一助になっていると実感しています。
川原:現在では、会員基盤を拡大するフェーズを終え、その会員基盤で得られるデータを活用したマーケティングの深化や、新規事業の検討支援などのフェーズに入ってきています。dポイントの周辺にある「d払い」や「dカード」など、その他のサービスをいかにクロスで利用してもらえるようにするかも大きなテーマです。
これまでプロジェクトの支援を続けてきた中で、ご担当者も異動されるなど、気がつけば、dポイント中心でやっている立場としては、私が一番長い人間となりました。これまでの歴史も分かるので、過去の議論から次に目指すべき事業の話ができるのも、常駐で支援しているからこそだと思います。
門馬:このプロジェクトでは、試行錯誤を繰り返したという思い出があります。そんな中、NTTドコモ様の信頼をしっかりと得ている常駐の川原さんチームは、ありがたい存在でした。NTTドコモのご担当者が、すぐに川原さんチームに相談する姿を見て、「電通デジタルの看板を背負っている」と感じていました。
一宮:各チームが専門性を持って本質的な提案ができたと思っています。例えば、「この場合は広告をやらなくても良いのでは」というような提案は、広告を扱う他の会社ではまずできません。我々は、何がクライアント企業にとって最善策かを考えたうえで広告以外にも幅広い支援を提案することができます。今回は、そんな電通デジタルのバリューが出せたプロジェクトだと感じています。
川原:今までやってきたのは、電通デジタルのアセットをうまく活用して、クライアント企業に価値を出すということでした。ただ、NTTドコモ様にも、素晴らしいアセットがあり、貴重なデータが存在します。これらを、NTTドコモ様のマーケティングだけで完結するのは非常にもったいないことです。約1億人にまで増えた会員基盤を持つdポイントなどのデータ資産を、もっと世の中に出していきたいです。
今後は、NTTドコモ様と他社との新たな関係構築を支援できるよう取り組んでいきたいと思っています。我々は、多くのクライアント企業とのつながりを持っているため、その強みを生かすことで、NTTドコモ様にとってのビジネス拡大につながるだけでなく、電通デジタルの価値も高めていけると考えています。
NTTドコモ様では、自社のアセットを社会課題の解決に生かす「社会OS構想」というものがあります。これは、ドコモの会員基盤のデータやポイント/決済、顧客接点といった機能を多種多様な領域で活用することで、社会課題を解決し、社会を豊かにするプラットフォームに進化させていく取り組みです。我々も、このプロジェクトに参画し、イネーブラー(目的達成を可能にする支援者)としての役割を果たしていきたいと思っています。
株式会社NTTドコモ
コンシューマサービスカンパニー
カンパニーコーポレート部 カンパニー戦略統括室カンパニー戦略統括 担当部長
白井 拓也
デジタルマーケティング推進部は組織の名前を変えながら、2020年にマーティングプラットフォーム本部、2022年にスマートライフカンパニー、2024年にはコンシューマサービスカンパニーと所属も変えて、ミッションも会員基盤拡大→顧客接点拡大→アクティブ化→サービスクロスユース→BtoB向けデータ活用/社会OSと拡大していきました。
ミッションの拡大・変遷に伴い、当然チームに求められるケイパビリティも拡大していきましたが、そのケイパビリティを電通デジタルさんが保有していたことと、我々と深く併走してくれていた川原さんが最適な形で結びつけてくれたことで、スムーズに業務を拡大し、メンバーも成長することができました。
2024年に私は5年間所属していたdポイントチームを離れてしまいましたが、dポイントはコンシューマサービスカンパニーにおいて核となる基盤として更なる価値提供が求められています。引き続き、川原さんを中心に電通デジタルの皆さまと一緒に事業と社員の成長をお手伝いいただきたいと願っています。
プロフィール
Web制作ベンチャーにてサイトの開発・運用・ディレクションを一気通貫で経験した後、電通デジタルでは、不動産や通信会社等のオウンドメディアを中心にUI/UX設計、サイト構築/改善、運用ディレクション業務などを担当。2015年よりUI/UXデザインの専門チームにて、UXコンサルティング/調査、UI設計業務に従事。直近では、企業様へ常駐をしながら伴走型でDX推進、事業のグロース支援を行っている。
2013年にCCIに転職して以降、一貫してデジタルメディアプランナーとして多様な業種をご支援。2019年に電通デジタルに参画。メディアによるご支援に留まらず大型コンペ、マーケティング組織支援、データ基盤構築など様々なプロジェクトをリード。
2010年電通入社。人事担当・ビジネスプロデューサーを経て、2019年より電通デジタルへ出向。人事担当・ビジネスプロデューサー・CXプランナーを経て、電通デジタルへ出向。多様な業種のクライアントとともに、ソーシャルデータを活用したインサイト発掘~ブランドとのエンゲージメント向上、ブランドロイヤルティ向上を主としたコンサルティングなどに携わる。
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