ブランデッドダイレクト事例|バズで終わらせない。VTuberファンの熱量をブランド価値につなげるソーシャル設計
一過性の話題化に留まらず、事業成長に寄与するソーシャル施策へ。電通デジタルは「ブランデッドダイレクト」の思考軸を取り入れ、ブランド構築と購買獲得までを促すソーシャルアプローチを展開しています。ビジネス成果を創出するクリエイティブの設計思想やプロセス、Google Androidの成功事例から、その実効性をひもときます。
なぜ「いいね」の先を見るべきなのか
――企業のSNSマーケティングにおいて、クライアントから寄せられる課題はどういった声が多いのでしょうか?
戸塚:ソーシャル施策といえば、これまではバズやフォロワー獲得といったソーシャル指標に合わせて運用するのが基本でした。近年はそれに加えて、リーチを広げたい案件、投稿を届けた先でサービスの利用や顧客獲得まで引き上げたい案件など、求める目的が多様化してきています。
また、各種ソーシャル指標は伸びているものの、それがブランド価値の向上や実際の売上貢献にどう結びついているのかが分からない、といった声もよく耳にするようになったと感じています。
出宮:今はせっかくトレンド入りしても、話題は1週間も持ちません。単に瞬間的に消費されるのではなく、ソーシャルの特性のひとつである「ユーザーとの距離が近い」という利点を生かしながら、きちんとユーザーに残るものを出していきたいと考えるクライアントは多いです。
――バズるだけのコンテンツとブランド価値を高めるコンテンツ、この2つの違いは何だと考えていますか?
出宮:「ユーザーとの持続的な接点を創出できるかどうか」が大きなポイントです。接点を通じたコミュニケーションがユーザーのブランドへの愛着を向上させ、ソーシャル上でのブランドに関するさらなる発話を促すことに繋がります。実際、ユーザーの発話を促すコンテンツをやりたいというご要望はとても増えています。
ブランデッドダイレクトにおけるソーシャル施策の設計思想
――電通デジタルでは、ブランディングとダイレクトを融合させた独自のアプローチ「ブランデッドダイレクト」を提唱しています。ソーシャル領域における位置づけや目指すところを教えてください。
村上:ブランデッドダイレクトは、ブランディングと獲得効率という二律背反になりがちな課題を同時に達成し、感情的な高まりである「熱量」と購買行動へ引き寄せる「引力」を掛け合わせることで、最終的に売上をスケールさせていくアプローチです。
この発想は、デジタル広告だけでなくソーシャル施策においても非常に有効であることが見えてきました。ソーシャルにおいてもダイレクトに閉じず、ブランド価値構築と成果獲得を一気通貫で狙っていくのが私たちの基本的な設計思想です。
――一般的なソーシャル運用と、どういった点が異なるのでしょうか?
戸塚:最大の違いは、運用の「出発点」と「終着点」にあります。従来のソーシャル運用が、話題化やフォロワー獲得といったソーシャル指標の向上をゴールにしていたのに対し、ブランデッドダイレクトではビジネス成果やブランド化を最終目的に置いています。購入意向や好意度、質の高い発話、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)の向上など、目指すべき成果から逆算して施策を設計する点が大きな違いです。
話題化やソーシャル指標を追うこと自体を否定するわけではありませんが、一過性のバズで終わらせず、事業成長につながる成果を求めるクライアントに対して、ビジネス成果から逆算するソーシャルクリエイティブをご提案しています。
――分析・設計・実行・成果といったプロセスの中で、電通デジタルとしての強みが特に発揮されるのはどの部分でしょうか?
出宮:全体を滞りなく推進できる総合力こそが最大の強みですが、あえてひとつ挙げるなら「設計」です。
ブランド価値を高めつつ獲得へ導くコンテンツを作るには、ユーザーに何をどう届けるか、ソーシャル上でどんなコミュニケーションを行って、その結果どんな質の高いUGCや購買動機が生まれていくのか、その「らせん型の顧客体験」を事前に想定しながら設計することが何よりも重要だからです。
土台となる「設計」がしっかりあるからこそ、企画から実行まで一貫したコンセプトで実施でき、ブレずにユーザーへ届けることができます。この一貫した体験の提供こそが、ユーザーの中に残るブランド体験と行動喚起を生み出すと考えています。
事例に見る実践と成果――Google「AndroidかこってMUSIC」
――Google「AndroidかこってMUSIC」キャンペーンに関しては、どのようなビジネス課題や目的があったのでしょうか?
柴田:大元の課題は、Z世代におけるAndroidの認知率の低さにありました。Z世代のスマートフォンシェアは競合商品が大きな割合を占めており、Androidは選択肢に入っていない方が多い現状があります。ただ、スペックや機能を理解することで興味を持つ方も一定数いるため、Androidならではの機能をアピールし、Z世代の興味・関心を引き上げることが本質的な目的でした。
Google様からのKPIは、Xにおいて「Z世代のAndroidに関する発話量を増やしたい」というものでした。それを受けて、この「Android かこってMUSIC」キャンペーンを2024年から展開しています。
――キャンペーンの概要を教えてください。
柴田:Z世代からの人気が高く、Xでの発話と相性の良いVTuberを通じて、Android独自の機能を伝えるのがキャンペーンの骨子です。
具体的には、起用した5組のVTuberのミュージックビデオ(MV)それぞれに、Androidの独自機能である「かこって検索」を組み込んだコラボMVを制作しました。並行して、個々のVTuberごとにティザー投稿やSNSキャンペーンを実施し、全体の話題化を図りました。
――KPIである「価値ある発話・UGC」を生み出すために、どのようなコミュニケーション設計を行いましたか?
出宮:質の良いUGCや発話を増やす最大のカギは、VTuberさんを応援するファンの方々のインサイトにあります。
まず、「ファンはなぜこのVTuberが好きなのか」「普段どういう発話をしているのか」を軸に分析を行いました。ファンの方たちが共有している感情や、Xで発話する際に大切にしている心理を読み解き、それを基にコミュニケーションを設計しました。
例えば、第三弾として起用した「VOLTACTION(ヴォルタクション)」は、にじさんじ所属のダンスボーカルユニットです。彼らは努力を重ねてデビューを勝ち取った熱いヒストリーを持っており、ファンの方々はそんな彼らの努力の過程や想いに胸を打たれ、応援はもちろん、一緒に成長すること自体も楽しんでいらっしゃるように感じました。
このインサイトを捉え「憧れの夢の舞台にみんなで行こう」というコンセプトを設定。これに基づき実施した施策のひとつが、「かこってヴォルタ Vチケメーカー」というバーチャルチケット発券施策です。MVの中でも登場するコンサートのチケットを発券できる体験型コンテンツで、ユーザー名やそれぞれ異なる座席番号が表示されるなど、本当のライブ気分を味わえる工夫を凝らした結果、東京ドームのキャパシティ(約5万席)を超える7万枚以上のダウンロードを記録しました。
――そうしたファンへのアプローチの中で、本来の目的である「Androidの機能訴求」はどのように組み込んだのでしょうか?
出宮:「リーチ拡大」と「機能体験」の2軸で展開しました。「かこって検索」の訴求では、「MV中のアイテムをかこって推し活を楽しめる」という今回の施策の肝である体験のトライアルを促しながらUGCを生み出すため、MV内のメンバーの私物や思い出のグッズを「かこって検索」してみるチャレンジ企画などを展開しました。
ファンが楽しんで参加できる文脈の中で機能を体験してもらうことで、「Androidを初めて触った」「実際にAndroidに乗り換えた・買い替えた」といった行動につながる声も生まれました。
――最終的にはどのような成果が得られましたか?
柴田:Xの発話数を目標としていましたが、VOLTACTIONのキャンペーン全体で、Xのビュー数450万、最大9,000件のリポストを記録しました。ファンにいかに喜んでもらえるかを追求したプランニングが、数値にもしっかりと表れた形です。
出宮:発話数は目標対比約170%、質の良い発話に限定すると目標対比225%を達成しました。数値的な効果を残しつつ、ファンに対してもポジティブなブランド体験を届けることができたと感じています。
――今回の事例から得られた知見で、他のブランデッドダイレクト施策に応用できるポイントはありますか?
柴田:本キャンペーンでは、いわゆる直接的な購買訴求はほとんど入れていません。ファンに喜んでもらえる情報発信を徹底し、ファンの信頼を得られたことが成果の要因です。「自分たちが応援するVTuberを支えてくれる企業にも好意を持つ」という関係性を構築できたことが大きく、これは他の案件でも応用できる枠組みです。ただし、企業側の意図が透けて見えると見透かされてしまうため、事前の緻密な設計が不可欠です。
出宮:実際の企画検討時は、ファンの分析結果を基にした「AIペルソナ」を活用しました。投稿企画段階でAIペルソナでの評価・チェックを行うことで、ファンのインサイトに寄り添ったコミュニケーションの精度を高めることができました。
ブランドの未来をつくるソーシャルクリエイティブ
――ソーシャルマーケティングの担当者様に向けてメッセージをお願いします。
戸塚:ソーシャルに求められる役割が多様化し、進むべき方向性を見失っている企業も多いと感じています。私たちは、単なる一過性のバズではなく、ブランド価値向上や事業成果をKPIに置き、皆様と一緒にソーシャルに向き合っていきたいと考えています。
私たちの強みは、AIなどのテクノロジー活用に加え、ブランドやファンに最適化された「愛される文脈」を作り出すクリエイティブ力と人財が豊富な点です。顧客理解とクリエイティブを融合させ、最適な成果を生み出していきます。
村上:セールス施策が細分化される中で、「KPIはエンゲージメントだけでいいのか?」と疑問を持つのは自然なことです。売上との相関性やユーザーインサイトなど、これまで捉えていなかった視点に目を向けることで課題や突破口が見えてきます。
ブランドの持つ「熱量」と購買行動へ導く「引力」で売上をスケールさせるブランデッドダイレクトのアプローチを、ぜひソーシャル領域でもご活用ください。課題をお持ちの際は、お気軽にご相談いただければと思います。
関連サービス
アドバンスト・クリエイティブ
一過性のバズで終わらせず、ファンの熱量をブランド価値と事業成果へつなげる。戦略・広告・ソーシャルを横断し、ビジネス成果から逆算したクリエイティブを設計します。
PROFILE
プロフィール
村上 一輝
デジタル専業代理店を経て電通デジタルに入社。現在は事業部長とシニアクリエイティブディレクターを兼務し、デジタルを起点とした統合案件を手がける。エンタメ業界を中心に、ワクワクする商材を得意としている。
出宮 百合絵
イラストレーター、SE、デジタル専業広告代理店でのブランディング・ダイレクト広告のクリエイティブに従事したのちに電通デジタルにジョイン。マス・イベント・デジタル・SNS施策が連動した立体的な施策設計および実行が得意。
戸塚 亮介
CMプロダクションにてシネマトグラファーとして従事、その後インターネット専業広告代理店でのクリエイティブ制作を経て電通デジタルへ入社、2023年より現職。デジタルに最適化したクリエイティブの全体プランニング。また各種クリエイティブの企画・制作を担当。デジタルのみならずTVCMやOOHの企画など幅広い企画を行う。
柴田 亜希奈
CMプロダクションでPMとして従事、TVCMやMVの制作を経て電通デジタルへ入社、2018年より現職。動画領域を得意とし、デジタルのみならずTVCMやアクティベーションなど幅広い領域をプロデューサーとして担当。
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