Figma Config 2026、デザインとAIが交差する現場で感じた変化の予兆

「Figma Config 2026、デザインとAIが交差する現場で感じた変化の予兆」背景は登壇者の集合写真。左から栗林 夏未、デムリエ・アントワーヌ

世界中のデザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーなど10,000人以上の参加者を集めたFigma最大の年次カンファレンス「Figma Config 2026」が6月に米国サンフランシスコにて開催されました。デザインとAIが交差し、プロダクトのつくり方が変わり始めているこの時代に、現地参加だからこそ得られた気づきがありました。プロダクトデザイナーとしてUI設計に携わるデムリエ・アントワーヌと、UXデザイナーの栗林夏未が、それぞれの専門領域からFigma Config 2026で感じた変化について振り返ります。

Figma Config 2026、現地参加だから見えたデザインの転換点

――Figmaおよびそのカンファレンス「Figma Config」について、まず教えていただけますか?

デムリエ・アントワーヌ:Figmaは、ウェブサイトやアプリなどのデジタルプロダクトをデザイン・構築するためのコラボレーションツールです。デザイナーやエンジニア、プロダクトマネージャーなど異なる職種のメンバーがブラウザ上で同じファイルを同時に編集できることが大きな特徴で、世界中のプロダクトチームにとって共通言語のような存在になっています。日本でもここ数年で導入が広がり、デジタルプロダクト開発における標準的なデザイン・プロダクト開発プラットフォームとして広く定着しています。

現在ではさらに、AIを組み込んだ統合的な制作環境へと進化しつつあります。Figma内のAIエージェントが反復的な作業を支援することで、私たちはより複雑なユーザージャーニーの設計や、使いやすいプロダクト体験の実現、戦略設計、グローバルなデザインガバナンスの構築といった、より付加価値の高い仕事に注力しやすくなります。

栗林 夏未:「Figma Config」は、Figma社が毎年開催する最大のカンファレンスです。新機能の発表だけでなく、デジタルプロダクト開発の「これから」についてグローバルの実践者たちが議論する場として注目されています。今年はサンフランシスコのモスコーニ・センターで開催されました。

――オンラインでも視聴できる中、現地参加を選んだ理由を教えてください。

栗林:現地に行く一番の理由は「録画に映らない情報」が得られることです。Figmaのプロダクトチームやエンジニアと直接対話し、新機能の背景にある設計思想や今後の方向性について踏み込んだ議論ができます。パートナー向けのセッションでは、発表内容をより実務に落とし込む観点から、導入時につまずきやすいポイントや運用設計上の論点について、具体的な示唆を得られる機会もあります。また、Configへの参加は、グローバルで実践されている先進的なアプローチをいち早く持ち帰り、組織全体のケイパビリティ向上につなげるための機会でもあります。

もう一つは参加者同士のネットワーキングです。セッションの合間にさまざまな企業のメンバーと話す中で、AIをどうチームに取り入れるか、ワークフローをどう変えるかといった具体的な悩みや工夫について議論できる。これは現地参加ならではの価値ですね。

デムリエ:印象に残ったのは、Figma Agentです。プロトタイピングと改善の反復の中で、比較・修正のたたき台づくりを支援し、チームの意思決定を回しやすくする点に可能性を感じました。クライアントワークでも、初期案やバリエーション検討といった反復負荷を下げることで、検証サイクルを保ちながらブランドの品質要件を満たす設計につなげやすくなると考えています。

写真:Figma Config 2026の様子
Figma Config 2026の様子

「順番に進める」から「シグナルで更新し続ける」へ

――今回の内容を受けて、デザインの進め方はどう変わっていくと感じましたか?

デムリエ:これまで多くのプロダクトチームは、「課題を見つける→解決策を考える→デザインする→実装する」というステップを順番に進めてきました。例えば、プロダクトマネージャーが課題や要件を整理し、デザイナーがそれを画面に落とし込み、エンジニアが実装する。担当者が変わりながら成果物を受け渡す「リレー方式」です。

しかし現地で見えたのは、AIによってこの「順番に進める前提」が崩れつつあるということです。プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアが早い段階から同じ検討サイクルに入り、アイデアを出しながらプロトタイプをつくり、試した結果をもとにすぐ修正する。職種や工程をまたいで短いサイクルで行き来しながら進めることが、ツールの進化によって現実的になっています。

――従来は一方通行だったものが、行き来しながら進む形になるということですね。

栗林:はい。私たちはこの変化を、プロセスを順番に消化するのではなく、設計と検証を早い段階から積み上げていく「プログレッシブ・マッピング」と捉えています。これまでも開発の中で反復的な改善は行われてきましたが、AIによって、仮説を形にし、試し、修正するサイクルを開発のより早い段階から細かく回しやすくなっています。ユーザーの反応や行動データ、ビジネス要件、実装上の制約といった複数のシグナルを継続的に参照しながら、何を進めるか、どこを戻すかを小さな単位で更新し続ける。結果として、仕様確定を待ってから作るのではなく、初回のリリースに至るまでにも試作と検証を重ねながら、作りながら学び、学びながら設計を強化していく柔軟なサイクルで進むイメージです。

デムリエ:例えば、新しいチェックアウトの流れを設計する場合、あらゆる例外ケースを事前に洗い出して完成させるまで何カ月も待つのではなく、まずシンプルな形で試し、実際のユーザーの反応を見ながら改善していく。利用データからつまずきや課題が見えてきた段階で、そのシグナルを次の設計に反映していく。こうした進め方が、より現実的になってきています。

――デザイナーの役割も変わりますか?

栗林:はい、大きく変わると感じています。UXデザイナーはこれまでも、ユーザー理解から課題の整理、解決策の検討、体験設計まで幅広く関わってきました。今後はその専門性を、より職種横断的かつ継続的に発揮し、プロダクトマネージャーやエンジニアとともに、検討から実装・検証までを行き来しながら意思決定を支えていくことが重要になります。

デムリエ:UIデザイナーにとっては、静的な画面を仕上げることにとどまらず、実装やモーション、コンテンツ、AIと連動しながら成長していく仕組みを設計・運用する力が問われるようになります。今回発表された新機能群は、こうした職種横断の連携と反復を前提にした流れを後押しするものでした。

写真:デムリエ・アントワーヌ
デムリエ・アントワーヌ | Antoine Desmeliers(グローバルソリューション室 ソリューション事業部)

――こうした変化に対して、クライアントは何を求め始めていますか?

デムリエ:端的に言えば「速さ」と「仕組み」の両方です。AIで選択肢を素早く出し、短期間でより良い意思決定ができることへの期待が高まっています。同時に、ブランドやアクセシビリティの一貫性を保つためのルールやガバナンスの仕組みも、これまで以上に重視されています。

実際、あるクライアントからグローバルテンプレートの刷新についてご相談いただいた際にも、まさに同じ課題がありました。各地域のワークフローを大きく変えることなくスピードを上げたい、一方で市場ごとのブランド表現のばらつきは避けたい。求められていたのは、制作スピードとブランドの一貫性を同時に担保できる仕組みでした。


「速さ」と「一貫性」を両立させる、グローバルデザインの実践

――Dentsu Digital Global Center(DDGC)の得意領域について教えてください。

栗林:DDGCが特に深い知見を持つのは、日本企業の海外進出支援と、外資系企業の日本市場展開支援の2つの方向の支援です。Configで語られたAIとデザインの融合は、この両方の現場で急速に求められていることです。

写真:栗林 夏未
栗林 夏未(グローバルソリューション室 ソリューション事業部)

――それぞれどのような取り組みをされていますか?

デムリエ:日本企業の海外進出支援では、グローバルで統一したブランド体験を保ちながら、各市場のローカル要件にも対応できるデザインシステムを構築しています。あるグローバル企業の25以上の地域にわたるEC展開では、マスターとなるウェブ基盤を軸にFigma上にデザインシステムを整備し、ブランドの一貫性とウェブアクセシビリティの国際基準を担保しつつ、各地域チームが迷わずローカライズできる設計にしました。グローバルチーム向けのオンボーディングハンドブックも整備し、チームや市場が拡大しても品質が揺らがない仕組みを支えています。

外資系企業の日本市場展開支援では、グローバルのデザイン基盤を壊さずに日本特有の要件を素早く反映する支援を行っています。日本でのローカライズを「一回限りの特別対応」にしないことが重要で、現場で得たデザイン要素や運用の学びを本国のデザインシステムへ還元し、他市場の展開にも生かせる持続可能な仕組みとして構築しています。

栗林:Configを通じて感じたのは、こうしたグローバルデザインシステムの運用自体も、より協働的で反復的な進め方へと進化させられるということです。グローバルマスターを完成させてから各市場へ引き渡すのではなく、デザイナーやエンジニア、各市場のチームが早い段階から同じ検討サイクルに入り、設計を進めながら実装要件や市場固有の制約を反映していく。そうした進め方が、今後より現実的になっていくと考えています。

――こうした支援の基盤となるDDGCの強みを整理するとどうなりますか?

デムリエ:DDGCは企業がデジタルプロダクトをグローバルに展開・運用する上で重要な3つの領域に注力しています。

  1. Context Architecture(コンテキスト設計)
    グローバルのガイドラインを「現場でそのまま使える形」に変換する取り組み。ブランドルールをFigmaのデザインシステムに落とし込み、各地域が迷わずローカライズできるようにする
  2. Agentic Design Operations(エージェンティックな運用設計)
    AIを日々のワークフローに組み込み、品質・アクセシビリティ・ブランド一貫性のチェックが最初から走る運用を設計する
  3. Reusable Enterprise Workflows(再利用可能な制作プロセスの構築)
    テンプレートやモジュール化されたパーツを整備し、市場やメンバーが増えても品質を保ちながら制作をスケールさせる仕組み

栗林:中でも、Config 2026とのつながりを最も強く感じたのがエージェンティックな運用設計です。AIによって制作や検証のスピードが上がるほど、ブランドの考え方やアクセシビリティ、ローカライズの基準といった判断の前提となるコンテキストを明確に整備しておく重要性も高まります。人とAIのどちらが関わっても同じ基準で判断できる状態をつくるという意味で、エージェンティックな運用設計とコンテキスト設計は切り離せない関係にあると考えています。

――最後に、Figma Config 2026全体を振り返ってのメッセージをお願いします。

栗林:AIがデザインの価値を小さくするのではなく、人間中心の思考と堅牢な仕組み、責任あるガバナンスを統合できる組織こそが差をつけられる。Configを通じてその確信はさらに強まりました。DDGCは、グローバルとローカルの橋渡しをしながら、クライアントのプロダクト開発を加速させるパートナーでありたいと考えています。

デムリエ:AI活用を進める企業にとって、次に求められるのは、既存のプロセスにAIを加えるだけでなく、アイデアを形にしていくまでの進め方そのものを見直すことです。つくりながら学び、学びながら設計を強化していく。DDGCは、そうした新しい進め方を実際のプロジェクトや組織の中で継続的に機能する形へ落とし込み、チームが自ら活用し、スケールさせ、継続的に進化させていけるワークフローへと変えていく支援をしていきます。


関連サービス

グローバル

デザインとAIが交差するグローバルの最前線を捉え、日本企業のプロダクト開発・海外展開に還元。ブランドの一貫性と各市場への最適化を両立する仕組みづくりを支援します。

PROFILE

プロフィール

デムリエ・アントワーヌ(Antoine Desmeliers)

グローバルソリューション室 ソリューション事業部

東京を拠点に活動するフランス出身のシニアプロダクトデザイナー。日本とヨーロッパ、双方の視点を生かし、複数のチャネルを横断するデジタル体験の設計に取り組む。電通デジタルでは10年以上にわたり、UI/UX、デザインシステムの構築、グローバルなデザインガバナンスなどを担当。さまざまなグローバルブランドに向けて、拡張性のあるデザインフレームワークを構築してきた。細部へのこだわりを大切にしながら、複雑なシステムを直感的で使いやすい体験へと落とし込み、洗練されたインタラクションの設計を追求している。

デムリエ・アントワーヌ(Antoine Desmeliers)

栗林 夏未

グローバルソリューション室 ソリューション事業部

外資系IT企業にてUXデザイン・コンサルティングに携わり、システム導入における要件定義からUXUI設計までを担当。その後、2023年に電通デジタルに参画し、自動車・小売・製造・ラグジュアリーなど幅広い業界で、ユーザー調査・分析を起点に、サービスやデジタル体験の企画・UX設計に従事する。

栗林 夏未

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