2023.08.29
データを通して、人と社会が見えてくる(前編)
データアナリスト座談会 vol.1
データ量の増加や個人情報保護法の改正など、デジタルマーケティングは大きな変革の時を迎えています。そんな中、個人のプライバシー保護と企業のマーケティングニーズを両立させるデータ基盤として、注目を集めているのが「データクリーンルーム」です。データクリーンルームとは、大手ポータルサイトやSNSなどのプラットフォーム事業者が提供している環境で、個人を特定することなく、データの分析・運用を行うことが可能。
そんなデータクリーンルームをはじめとして、さまざまなデータプラットフォームを活用したデータ&デジタルマーケティングが企業や商品・サービス成長の大きな原動力となっています。こうした動きを推進する役割の1つが「データアナリスト」です。データアナリストの重要性は高まる一方で、多くの企業が人材確保に取り組んでいます。同時に、特に若い人たちを中心に「データアナリストになりたい」と考える人も増えてきているようです。
そこでTransformation SHOWCASEでは、今注目の職種となっている「データアナリスト」のリアルをお伝えする記事を連続してお届けします。電通グループには、既に多くの人材がデータアナリストとして活躍し、プラットフォーム事業者と共同開発したデータクリーンルームや、電通グループオリジナルのDMP(Data Management Platform)、そこにクライアント企業さまの1stパーティーデータも加えるような形で、最先端のデータ&デジタルマーケティングを実践しています。そんなデータアナリストたちを集めての座談会を3回にわたって実施しました。
「データアナリスト座談会」第1弾は、データクリーンルームの開発やデータ分析に関わる、株式会社 電通の堀越由希氏、足立茉由香氏、阿部萌子氏、株式会社電通デジタルの久保村萌乃果氏、栗山和子氏の5名が参加。日々の業務の中で起こる出来事や、そこでどんなことを感じているか、などのリアルな様子を聞きながら、データ分析の奥深さや仕事に対する思いを語っていただきました。まず前編では、これまでの経歴、現在携わっている仕事について聞きます。
※2023年7月時点での情報です
※Transformation SHOWCASEからの転載記事
データ分析により、世界の解像度が上がる
Q.皆さんは、そもそもどのような経緯でデータアナリストになったのでしょうか。それぞれバックグラウンドを教えてください。
堀越:私は大学では日本語学を専攻していました。日本語が好きだったので、言葉の工夫が詰まったキャッチコピーや広告を取り扱う広告会社に興味を持ちました。ただ、自分がコピーライターになりたいと思っていたかというとまた違って、当時なりたいと思っていたのは、メディアプランナーでした。その根幹にあるのは、「人の気持ちがきちんと伝わる社会をつくりたい」という思いです。私がまだ学生の時、オンライン上で全く興味のないサービスのバナー広告が表示されるという経験がしばしばあり違和感がありました。せっかく心を込めて作られたサービスや商品なのだから、必要としている人にきちんと届いたほうがいいし、届けたい。それを実現したいと思って、入社しました。
データを取り扱う経験がほとんどなかったので、データ・テクノロジーセンター(以下、DTC)に異動になった時は楽しみでもあり、不安もありました。実際、異動した直後は、飛び交う言葉に馴染みがなく、違う世界に来たような感覚を味わい苦労しました。ですが、今の時代、データは最も重要な領域の1つだと思います。未経験の分野にチャレンジできることを前向きに受け止め、周囲に助けられながら日々業務にあたっています。周りには専門スキルを持つプロフェッショナルがたくさんいて、その方々が味方だと思うととても心強いです。
栗山:私も大学は文学部出身で、メディアコミュニケーションに関わる仕事をしたいと思い、CCIに入社しました。やはり自分がデータを扱う仕事をするとは全く想像していませんでしたね。
そんな中、2017年にDTCに出向し、動物の生体データを扱うプロジェクトに携わることになりました。広告におけるデータ活用は、ユーザーにとっては自分の行動を追跡されているようで、ネガティブな印象を持たれることもあります。しかし、ヘルスケア領域におけるウェアラブルデバイスのデータなど、人の命や生活に関わるデータは人に良い影響を及ぼすように使われていますよね。このプロジェクトを機に「人が幸せになるようなデータを活用したい」と思うようになりました。製薬会社への転職も、この経験がきっかけでした。
結局のところ、データは使い方次第。過剰に追跡されると、ユーザーは不安や不快感を抱くかもしれません。ですが、1人ひとりにとって、ちょうどいいタイミングに適切な情報が表示されればむしろうれしいはず。プライバシーを保護することと広告の効果を高めることを相反させず両立させるには、ユーザーにとってうれしいデータ活用を行うことが、結果として広告効果を高める、そういった考え方が求められる時代になっていると感じています。私もそういうWin-Winな使い方を目指し、「何を返すことがクライアントさまと顧客、双方の利益になるだろう」と意識しながら日々データに向き合っています。
久保村:私も大学時代は文系でした。就職活動の時点では、やりたいことが定まらず、だからこそ幅広い業界に携わることができる、電通を志望しました。幸い私は、わりと何事も楽しめるタイプなので、出版社関連の業務を行う部署に配属されてからも、楽しく働いていました。
それから1年半で、電通デジタルに出向することになりました。全く経験のないデータ関連の部署に移ると聞いて驚きましたが、広告業界で働く以上、デジタルの知識は必要だと感じていました。出向していろいろと勉強するうちに、「こういう世界もあるんだ」と目の前が開けるような感覚を味わいました。
堀越:その感覚、分かります。デジタル広告の仕組みを知り、データから人の顔が浮かび、世界の解像度が上がったように感じますよね。
適切なマーケティングが、人の幸せにつながっていく
Q.堀越さん、栗山さん、久保村さんは文系出身だったのですね。阿部さん、足立さんはいかがですか。データ分析やそれに近い分野に触れることはあったのでしょうか
阿部:私は大学・大学院で建築を学んでいたため、ゆくゆくは都市ブランディングに携わりたいと思っていたので、就活ではデベロッパーなどの企業も視野に入れていましたが、やはりそういった領域だけにとらわれず、幅広い業務に携わりたいと思い、最終的に電通を選びました。
しかし、いざ入社してみると、新卒でDTCに配属されることに。「データベースって何?」というところからのスタートだったので、最初はとても苦労しました。ただ、空間や街といった定性的なものを定量的にスコアで評価する建築領域での研究・知見は、広告コミュニケーションの効果検証と似ているように感じました。そういう共通性をもっと見いだせないかと思いながら、日々の業務に臨んでいます。
足立:私の場合、大学時代は医療分野を専攻していましたが、医療以外の業種で就職先を検討していました。そんな中、電通デジタルが「ワクワクするデジタルへ」というキャッチコピーを掲げていたんです。それを見て「人を幸せにする仕事がしたい」と思い、入社を決めました。
ただ、「電通デジタル」という会社に入社したにもかかわらず、データ分析をすることになるとは想像しておらず(笑)、配属された時は驚きました。医療現場では目の前に患者さまがいて、意識せずとも患者さまの言葉や表情が見えますが、データ領域の仕事はデータからユーザーや消費者の反応や表情を思い描く想像力が求められると思っています。最初はなかなかそのユーザーの反応についてリアリティーを感じることが難しく、「この仕事を通じて自分のプランニングした広告はどんな人に届いてどんな反応をしているのだろう。本当に良い体験につながっているのだろうか?」と不安に感じるときもありました。でも、さまざまなクライアントさまのご相談を受け、データの力で課題を解決するうちに、クライアントさまの喜ぶ声、そしてその結果商品やサービスが世の中に届いていくことをサポートするということにやりがいを感じるようになりました。直接的に「あ、人を幸せにしているな」という実感を得る場面はまだまだ多いとは言えないのですが、より高度なデータ分析、より適切なマーケティングをすれば、最終的に人の幸せにつながっていく。そういう思いで、仕事に取り組んでいます。
データアナリストと聞くと理系出身者が目指す職種というイメージが強いかもしれませんが、電通グループでは文学、建築、医療などさまざまなバックグラウンドを持つ人材がデータを扱っています。それぞれのメンバーが、勉強によってスキルを身に付けつつも、多様なバックグラウンドによって培われた視点を取り入れながら、多角的にデータ分析・ソリューション開発に取り組んでいる様子を語ってくれました。後編では、データを扱う仕事のやりがい、仕事を通して実現したいことについて、さらに深く聞いていきます。
電通グループでは、多様な人材がデータ分析によるソリューション開発に、日々向き合っています。データマーケティングに新たな視点を加えたい企業の方は、お気軽にお問い合わせください。
EVENT & SEMINAR
イベント&セミナー
ご案内
FOR MORE INFO