2022.07.21
なぜ今、DXをテーマとする大学寄附講座を開設したのか?事務局担当者に聞いた
2022年4月、電通デジタルは、早稲田大学、大阪大学、神戸大学[1]において、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)講座をスタートしました[2]。
社会全体におけるDX人材の重要性と需要が高まる中、電通デジタルが持つ知見やナレッジを活用した寄附講義を通じて、DX人材の創造や育成、日本社会全体の活性化を目的としています。
本記事では、事務局メンバーとして早稲田大学(以下、早大)の講義プロジェクトを担当した石渡大地と奥田成美、大阪大学(以下、阪大)の講義プロジェクトを担当した前里穂子と有川昂佑、全体の企画・設計・調整・進行を担当した仲井亜紀子に、寄附講座開講の目的や運営で心がけたことなどについて聞きました。
※所属・役職は記事公開当時のものです
未来の社会を担うDX人材の創造・育成に貢献したい
――本プロジェクトは、どのような経緯でスタートしたプロジェクトですか?
仲井 未来を担う若者が、学生のうちからDXに触れ、デジタルマーケティング業界に興味を持ってもらう機会を創出したいと考え、各大学において産学連携の一環として企業や団体の寄附金をもとに専門分野の講座を開設する、寄附講座という仕組みを活用しようと考え、企画をスタートしました。
――寄附講座のテーマとして、DXを選んだ理由は何でしょうか?
仲井 現在、社会全体でDX人材の重要性が高まっていますが、大学生が学問として大学で学ぶ機会はほとんどないそうです。
そこで全15回の講義を通し、デジタル登場以後のマーケティング理論の体系化を試みると同時に、大学生の皆さんにDXの本質的な理解を深めていただき、未来の社会を担うDX人材の創造・育成をすることで、当社だけでなくデジタルマーケティング業界全体の成長にも貢献できるのではないかと考えました。
各大学の教授や担当者の方からも、現場の活きた知識を学べる良いテーマであるとして、好感を持って受け止めていただきました。
――事務局メンバーは、どういった形で選定されたのですか?
仲井 講義を行う各大学のOB/OGで、かつ現在の大学生に近い感覚を持っている新卒4年目くらいまでの方を中心に、チームを構成しました。
石渡さんと奥田さんは早大卒で中途入社2年目と新卒入社4年目、前さんと有川さんは阪大卒で新卒入社4年目と3年目です。実際、皆さんの感覚や提案は、大学関係者、社内・外の講師陣の大きな助けになっています。
企画から実施までゼロベースで作りあげていく
――皆さんは、事務局ではどのような仕事をしていますか?
石渡 全15回の講義には、電通デジタルの社員が登壇する回と、クライアント企業様の方に登壇していただく回があります。各登壇者の方と打ち合わせをしながら、講義の内容や構成を検討したり、資料作成のサポートをしたりすることが主な仕事です。
奥田 そのほか、大学生とより年齢的にも近い新卒の後輩社員にインタビューやアンケートを実施して、そこから得た大学生ならではの気持ちや関心ごとを、講師の方々にフィードバックしました。聴講する学生により興味を持っていただくという点で、非常に重要な業務でした。
前 基本の動きは早大チームと同じです。メンバー間で臨機応変に役割分担しながら、社内共有資料の作成や社内外の各登壇者への連絡、講義内容のすりあわせ、登壇資料の準備などを行いました。
有川 阪大ではオフラインで講義を実施したので、そのために必要な情報収集・整理が必要でした。たとえば、事前に阪大を訪問して、実際の講義環境や学生の雰囲気を確かめて情報を共有したり、講師の方向けに、新大阪駅から阪大の講堂までの案内資料を作ったりもしました。
ほかには、各登壇者の方々から最終試験問題の原稿を受け取り、編集とレイアウト作業を担当しました。最終回には、執行役員と一緒に私たちOB/OGも座談会形式で登壇し、デジタル業界の魅力と同時に、実際に働いている生の声も伝えていく予定です。
――このプロジェクトで、特に苦労した点をお聞かせください。
有川 私たちは年齢的に学生に一番近いということで今回のプロジェクトに携わっていますが、それでもジェネレーションギャップはあります。コロナ禍で講義形式がオンライン型、ハイブリッド型などに変わった影響も大きいです。そうした状況を踏まえながら、今の大学生が何を考えていて何を知りたいのかといったニーズや意識を探りつつ、教授や講師の方々と認識をすりあわせながら、ペルソナ作成をしていく作業は非常に苦労しました。ただ、その分やりがいも大きかったです。
奥田 もっとも多くの時間を費やしたのは、大学関係者の方々との認識のすりあわせです。講座全体の目的、方向性、各講義の内容などに関して、合意を形成するまでに何度もやりとりを重ねました。
石渡 大学の方々、クライアント企業様のご登壇者の方々には、皆様大変ご多忙な中、貴重な時間を割いていただいています。そうした方々のお時間を1分1秒でもムダにするわけにはいきませんので、伝える情報は十分か、わかりにくくないか、煩雑になっていないか、お返事にお手間をとらせないかなど、強い緊張感をもってやりとりに臨んでいました。お恥ずかしい話ですが、メールを1通書き上げるのに推敲を繰り返して、30分かかってしまうこともありました。
学生に新しい視野を提示できたことが自信に
――今回の全社プロジェクトに携わって得たものは何でしょうか?
前 コーポレート部門の仲井さんのほか、講師として登壇する役員や他部門の方など、通常業務ではご一緒する機会の少ない方たちと一緒に取り組めたことが貴重な経験でした。特に現在はリモートワークがメインなので、社内でリアルに知っている人の幅が広がったのはすごく良かったです。
有川 私も同じですね。普段の案件では関わらない方々と密にやりとりできたことが新鮮でしたし、後藤好孝副社長の前で簡単なプレゼンを行ったときにはものすごく緊張したのですが、とてもいい経験になりました。こうした経験は、きっと仕事にも活かせる時が来ると思っています。
石渡 打ち合わせで川上宗一社長と同席した際に、とてもフランクに接していただいたのには驚きました。役職の上下を問わず、会議やチャットでやりとりする風通しの良さは、これまでの会社では経験のないことで、やはり驚きが大きかったです。
また、普段の業務であるマーケティング支援とはまったく異なる、人材育成に関する領域の仕事に関われたことは、視点が変わってとても勉強になりました。今後の業務にもプラスになると思っています。
奥田 毎回、講義後には学生へアンケートをとっていて、結果をその日のうちに講師や関係者へ共有し、次回の講義をより良いものにするために工夫を重ねています。アンケート結果を見た限りでは、皆さん講義の満足度は非常に高く、講義後には学生からの質問もたくさん送られてきています。
学生からのアンケート結果には、「講義を受講したことで、デジタルマーケティング業界に興味を持ちました」「この業界は自分には不向きだと思っていたけど、検討してみようかなと思います」といった意見もあり、とても嬉しかったです。これから社会に出る学生に対して、新しい視点や選択肢を提示できたことは、大きな自信になりました。
どんな人でもDX人材として活躍できることを伝えたい
――最後に、寄附講座のこれからについての抱負をお願いします。
奥田 早大の講座はすべてオンライン形式だったので、今度はぜひ、リアルで実施してみたいです。ワークショップ形式を取り入れるなど、コミュニケーションの幅も奥行きも拡がり、学生の皆さんの満足度や理解度を高められると思います。そして、もっと幅広い業種・業界のクライアント企業様に登壇していただく機会を作っていきたいです。
石渡 私自身、今回のプロジェクトは、受講した学生と電通デジタルだけでなく、クライアント、業界さらには社会全体へ貢献するための第一歩となる貴重な経験を積むことができました。今後は、このプロジェクトがこれからの若手の経験値アップの場として活用されるといいなと思います。
有川 若手が率先してグリップして進められるプロジェクトですので、今後はもっと若いメンバー、入社1年目、2年目、また来年入ってくる新入社員も参加してほしいです。自分の強みを活かして全社プロジェクトを主導していく機会は、とても得がたい経験になるはずです。
前 講義を受けた学生から「デジタルな仕事って、文系の自分には関係ない。理系の専門的な人が行く業界だと思ってた」という感想がけっこうあったのが印象に残っています。デジタルネイティブ世代である学生から見ても、DXやデジタルマーケティングといった業界の存在感はまだまだ曖昧なんだなという気づきがありました。私自身はずっと文系で、現在は企業のDXを推進する業務を担当しています。寄附講座を通じて、さまざまなバックグラウンドを持つ人材がこの分野で活躍していることを伝えるとともに、”デジタルな仕事”をもっと身近に感じていただけたらと思います。
仲井 ありがたいことに大学側からは、講義内容に対するお褒めのお言葉をいただいています。社内では、今回の活動を見た他大学出身の若手が、ぜひ自分の出身大学でも開催したいと手も挙げてくれています。事務局のメンバーには今後も大学との間を取り持つハブになってもらうことで、DX人材の育成にもっと深く広く寄与していただきたいです。また、コーポレート部門と部門が横断で共創する全社プロジェクトとして、よりいっそう全社で盛り上げていきたいと考えています。
脚注
1. ^ 神戸大学は寄附講義として実施。
2. ^ "日本のデジタル人材育成に向け複数の大学にてDX講座をスタート". 電通デジタル.(2022年3月24日)2022年6月23日閲覧。
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