電通デジタルは、NTTドコモのdポイントクラブのデジタルコミュニケーションを長く支援しています。常駐チームに加えて、デジタル広告やクリエイティブのチームも交え、一気通貫の支援で強みを発揮してきました。今回は、この3つのチームがどのように連携し、dポイントクラブの事業拡大に寄与したのか紹介します。
背景
dポイントクラブのデジタルマーケティングで成果を出したい。デジタルコミュニケーションの知見を深め、他キャリアユーザーとのつながりを増やし、自社サービスのクロス利用を促進したい
ソリューション
常駐型支援でdポイントクラブ会員拡大に向けた戦略策定からSNS運用、デジタル広告のプロジェクトを推進
成果
dポイントクラブ会員は、約7000万人から1億人超へと成長。こうしたデータアセットを社会課題解決に生かす「社会OS構想」への支援にフェーズが移行
社員インタビュー
クライアント企業と同じ目線で事業が支援できる常駐型のメリット
――NTTドコモが「デジタルマーケティング推進部」を設立された当時、どのような課題があったのでしょうか。
川原:NTTドコモ様は、長く通信事業をメインに行ってきた企業ですが、「dポイントクラブ」というポイント事業を中心に、回線契約ユーザーはもちろんのこと、回線契約ユーザー以外の方との接点も拡大していくことに取り組まれていました。これまでリアル店舗でのお客様とのコミュニケーションノウハウは溜まっていたものの、dポイントの会員拡大に向けたデジタル上のマーケティングやコミュニケーションをどうしていくかという点に、課題をお持ちでした。
そんな中、経営直轄で「デジタルマーケティング推進部」を立ち上げ、dポイントを軸にユーザー接点の拡大に力を入れようとしていたところでした。
――電通デジタルが支援に入ったきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
川原:もともとNTTドコモ様とは、常駐型で回線事業のマーケティングのご支援をしていました。デジタルマーケティング推進部の立ち上げの際に、NTTドコモ様の社内で相談している中で、電通デジタルの良い評判が届いたようで、そこからお声がけいただいたという流れです。
――dポイントのマーケティングにおいても、常駐での支援をされてきましたが、常駐型支援のメリットを教えてください。
川原:クライアント企業の近くで同じ目線を共有しながら事業を推進できることです。これにより、クライアント企業のスピード感や温度感をリアルタイムで把握し、環境の変化にも素早く対応することが可能になります。また、個人情報以外の1stパーティデータも扱えるため、リアルな事業の現状を知ることができます。実態に即した提案や支援ができる点が常駐型の大きなメリットですね。
dポイントクラブ会員拡大に向けた領域横断の支援
――具体的にどのようなプロジェクトだったのか教えてください。
川原:当初のプロジェクトの目的は、dポイントクラブの会員獲得です。ドコモの回線を利用している方は、dポイントとの親和性がありますが、他キャリアユーザーの方はそうではありません。他キャリアユーザーにどうやって会員になっていただくか、若年層の方にどうアプローチしていくかなど、やるべきことが多くありました。
そこで、SNS運用やキャンペーンのデジタル広告の配信などを実施するべく、他部署の電通デジタルのメンバーにも参加してもらいました。
――それぞれの領域で、どのような役割を担ったのでしょうか。
一宮:私はNTTドコモ様の課題を解決するための打ち手の一つとして、メディアをどう活用していくかという立場で参加させてもらいました。これまで当社で回線事業での支援をしてきた成功事例を踏まえて、dポイントの課題にマッチするものが何かを議論しながら、広告配信の企画や運用をしていきました。
NTTドコモ様と私たちマーケティングチームとの間にある前提や指針のズレを、常駐の川原さんチームがうまく調整してくれたおかげで、質の高いサービスを迅速に提供することができました。これが今回のプロジェクト全体を通して特に良かった点だと思います。
門馬:私はソーシャルメディアの企画、クリエイティブ開発、運用面を支援しました。もともとdポイントは、X(当時はTwitter)を運用されていたので、新たにInstagramの開設を提案しました。
SNSをメディアとしてきちんと機能させるためには、フォロワーを獲得していかなければいけません。そのためにどんなコミュニケーションを展開していけばよいか。さらに獲得したフォロワーに対してdポイントへのエンゲージメントを高めてもらうにはどういった投稿・コミュニケーションを行なっていくかなどをNTTドコモ様と一緒に企画を考えていく中で、やはり我々も常駐チームのメンバーにはかなり助けてもらいました。先方の温度感などを教えてもらいながら、有効性の高い提案ができたと思っています。
川原:我々常駐チームは、dポイントの会員拡大に向けたキャンペーン設計やインセンティブ設計など、会員獲得のスキームを構築していきました。また、一宮さんや門馬さんのチームの提案に対し、NTTドコモ様が議論していく中での全体的な調整などの役割を担いました。
常駐チームをハブに、SNSとメディア運用で有効性の高い支援を実現
――常駐メンバーと一宮さん、門馬さんのチームとの連携する際に、注意したポイントはありますか?
川原:一番避けたかったのは、クライアント企業との会議の場なのに、電通デジタル同士の会話になってしまうようなことです。これでは、誰のために議論しているのかわからなくなってしまいます。専門用語の翻訳作業をしつつ、意思決定はNTTドコモ様側に委ねるように心がけました。また、一宮さんや門馬さんが話しやすいように、事前にクライアント企業の温度感を共有し、2人の提案に対してフィードバックを行うことも、重要なポイントでした。
――それぞれの領域において、電通デジタルのどのような強みを持って支援されたのでしょうか? また、逆に得られた知見などもあれば教えてください。
門馬:我々は、SNSの運用とデータ分析を含めたPDCAを回していくという点で多くのノウハウを持っています。他社と比べて、より深い分析ができるチーム体制があることも強みだと言えます。
実は、NTTドコモ様と日々話していく中で、一度アカウントの運用方針を大きく変えたのですが、それによって成果が加速していった経験は、我々にとっても非常に貴重なものでした。フォロワーが増加しメディアとしての力が付いていく中で、クライアント企業社内での活用の要望が高まったことにも、大きな手応えを感じましたね。
一宮:デジタルメディアの運用は非常に複雑なため、極力シンプルなKPIにすることが多いのですが、そうするとビジネスの本質からずれてしまうこともあります。今回のプロジェクトでは、常駐チームをハブにしてNTTドコモ様の感触を把握しながら、本質的な効果を見失うことなくPDCAを回せたのは非常に良い経験でした。
例えば、他社キャリアユーザーへアプローチすることは、コスト効率が必然的に下がってしまいます。しかし、事業戦略としてどこまでが許容範囲なのか、どういうスコープであればLTVとして有効だと考えられるのかなどをきちんと紐解いて議論できたのはすごく良かったと思っています。
また、デジタル広告についての知見を得てもらうために、勉強会を3回ほど開催させてもらいました。こうした勉強会は、恣意的に最新トレンドを伝えて、聴講者も消化しきれずに終わってしまうというようなパターンに陥る場合もあります。しかし今回は、どんな勉強会をしてほしいのかきちんとヒアリングをしたうえで実施したので、すぐに仕事に生かせるようなインプットを提供することができました。その知識をベースに議論が加速し、一つひとつの施策の精度が上がった実感があります。
川原:プロジェクトのマネジメントと推進力を持つメンバーを常駐チームに配置しました。さらに、NTTドコモ様の要望に応じて、データ分析やSNS運用のスキルを備えた人材もアサインしています。次に発生する可能性のある課題を予測し、必要な人材の提案も行っています。このように、多様な領域に対応できる組織や人材を有しており、臨機応変に対応できることが私たちの強みですね。
NTTドコモのアセットを社会に生かす「社会OS構想」の支援に参画
――こうした取り組みを通して、どのような成果が出たのでしょうか?
門馬:これは我々だけの力ではありませんが、dポイントクラブの会員数は当初約7000万人だったのが、およそ1億人を超えるまでに成長しました。また、ゼロから立ち上げたInstagramは、現在フォロワーが68.7万人(2024年12月時点 )となっています。我々の支援が、この一助になっていると実感しています。
――現在はNTTドコモに対してどのような支援をされていますか?
川原:現在では、会員基盤を拡大するフェーズを終え、その会員基盤で得られるデータを活用したマーケティングの深化や、新規事業の検討支援などのフェーズに入ってきています。dポイントの周辺にある「d払い」や「dカード」など、その他のサービスをいかにクロスで利用してもらえるようにするかも大きなテーマです。
これまでプロジェクトの支援を続けてきた中で、ご担当者も異動されるなど、気がつけば、dポイント中心でやっている立場としては、私が一番長い人間となりました。これまでの歴史も分かるので、過去の議論から次に目指すべき事業の話ができるのも、常駐で支援しているからこそだと思います。
――最後に、今回のプロジェクトの振り返りや今後の展望についてお聞かせください。
門馬:このプロジェクトでは、試行錯誤を繰り返したという思い出があります。そんな中、NTTドコモ様の信頼をしっかりと得ている常駐の川原さんチームは、ありがたい存在でした。NTTドコモのご担当者が、すぐに川原さんチームに相談する姿を見て、「電通デジタルの看板を背負っている」と感じていました。
一宮:各チームが専門性を持って本質的な提案ができたと思っています。例えば、「この場合は広告をやらなくても良いのでは」というような提案は、広告を扱う他の会社ではまずできません。我々は、何がクライアント企業にとって最善策かを考えたうえで広告以外にも幅広い支援を提案することができます。今回は、そんな電通デジタルのバリューが出せたプロジェクトだと感じています。
川原:今までやってきたのは、電通デジタルのアセットをうまく活用して、クライアント企業に価値を出すということでした。ただ、NTTドコモ様にも、素晴らしいアセットがあり、貴重なデータが存在します。これらを、NTTドコモ様のマーケティングだけで完結するのは非常にもったいないことです。約1億人にまで増えた会員基盤を持つdポイントなどのデータ資産を、もっと世の中に出していきたいです。
今後は、NTTドコモ様と他社との新たな関係構築を支援できるよう取り組んでいきたいと思っています。我々は、多くのクライアント企業とのつながりを持っているため、その強みを生かすことで、NTTドコモ様にとってのビジネス拡大につながるだけでなく、電通デジタルの価値も高めていけると考えています。
NTTドコモ様では、自社のアセットを社会課題の解決に生かす「社会OS構想」というものがあります。これは、ドコモの会員基盤のデータやポイント/決済、顧客接点といった機能を多種多様な領域で活用することで、社会課題を解決し、社会を豊かにするプラットフォームに進化させていく取り組みです。我々も、このプロジェクトに参画し、イネーブラー(目的達成を可能にする支援者)としての役割を果たしていきたいと思っています。
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