自動車ブランドMINIは、新しいモデル投入をきっかけに、新たな顧客層との接点づくりに挑戦しました。その手段として活用したのが、Metaの広告自動化機能「Advantage+ Sales Campaign(以下、ASC)」 と、データ分析基盤「Meta Advanced Analytics」、そして「属性分析サブスクパッケージ」です。従来は想定していなかった顧客層を発見し、より効果的な広告配信につなげることができた施策の内容を、電通デジタルの担当者4人に聞きました。
2025.10.31
MINI、データクリーンルームを活用した属性分析活用術~ASC×ユーザー属性サブスクPKGの相乗効果とは~
AI自動化で獲得効率は向上するも、見えにくくなるユーザー像
――2024年にMINIがデジタル施策で直面していた課題について教えてください。
坂野:それまでは、認知から獲得まで一貫して自動車関心層を主軸に広告配信を行ってきました。2024年もリーチ、トラッフィク、リードといった数値目標は達成できていた一方で、セグメント内でのフリークエンシーが増加し、競合企業との間で限られたパイを奪い合う状況が生まれた結果、トラフィック全体に占める新規ユーザーの割合が伸び悩むという課題が残りました。
MINIとして2024年はフルモデルチェンジを含め新型車が多数投入されたことから、既納顧客からの乗り換えだけでなく、新規層の獲得を見据え、Webサイトのトラフィックにおける新規率を高めることが明確な目標として掲げられました。
新規層の獲得については、2023年4月からASCの配信を開始し、一定の成果パターンをつかんでいました。このパターンを他のファネルにも展開したいと考えましたが、ASCはユーザー像の最適化がブラックボックス化されているため、それを活用するのが難しいです。そこで「ASCで獲得しているCVユーザー属性を認知施策にも結び付けられないか」というのが、今回の施策の出発点となりました。
――Meta ASCの概要と効果、さらに課題感について教えてください。
今井:ASCは、ターゲティングや広告の配置などの運用設定をMetaのAIに任せることで、獲得を最大化するダイレクトレスポンス向けのソリューションです。従来は人が細かく設定していた要素をすべて自動化することで、自然と「コンバージョンしやすいユーザー」へ配信が寄り 、結果的に獲得効率が大きく向上します。そのため、近年は電通デジタル内でも業種を問わず多くの獲得案件で導入が進んでいます。
一方で、坂野も指摘したように「どのクリエイティブが効いているのか」「実際にどんな属性に配信されているのか」といった情報は管理画面では把握できません。そのため、クライアントへの説明や次の施策への応用に生かしにくい点が課題です。ただ逆に、この課題を解消できれば、自動車関心層以外の新たなターゲットを発掘できるのではないかという期待もありました。
高度な効果検証を実現するMeta AA+属性分析サブスクパッケージ
――そこで開発されたのが、Metaのデータクリーンルーム「Meta Advanced Analytics(以下、Meta AA)」を活用した「属性分析サブスクパッケージ」ですね。
今井:はい。プライバシーに配慮しながら高度な分析を可能にするデータクリーンルームは、広告会社にとって欠かせない効果測定ソリューションのひとつです。現在はさまざまなプラットフォームがデータクリーンルームを提供していますが、Metaと電通グループが草創期から共同開発してきたMeta AAは、電通グループ内で突合可能なデータが豊富にあり、それによってオンラインとオフラインを統合したフルファネルでの効果計測が可能になります。一般的な管理画面から得られるレポートを超える精緻な検証を求めるクライアントを中心に、多くの企業で導入が進んでいます。
Meta AAを活用してASCのターゲットを明らかにする際には、電通グループのデータパートナーが保有する属性データを利用します。具体的には、ASC配信の広告ログデータと属性データをMeta AA内で突合し、属性ごとにリーチ数やKPI達成ユーザーを可視化します。電通デジタルではこの分析を繰り返し行い、PDCA的に施策へ生かせる仕組みを構築しました。その属性分析を複数回行うプランが「属性分析サブスクパッケージ」です。
加藤:「属性分析サブスクパッケージ」は2024年にリリースされ、すでに複数案件で実施いたしました。特にASCを活用し、継続的に獲得を狙うダイレクト案件で多くの引き合いをいただいています。
元々、Meta AAには属性データがフィードされないため、別媒体で行う属性分析をMetaでも行い横比較できないかという課題がありました。その解決策として浮上したのが、電通グループのデータパートナーが保有する属性データと広告接触ログを突き合わせて、接触者の属性を可視化する方法です。
これによりASCの課題であった、ユーザー像のブラックボックス化の解消にもつながることがわかり、継続的に実施できるように分析の型化・パッケージ化しました。パッケージ化したことで、キャンペーンIDと配信期間さえあれば分析が可能になり、分析を型化したことによりコミュニケーションコストの削減にもつながったため、従来の属性分析よりも安価に提供できるようになった点も大きなメリットです。
3回のキャンペーン結果を分析し、新たなターゲット層を発見
――「自動車関心層以外の新たなターゲットを発掘できるのではないか」という仮説検証のために実施した属性分析はどのような内容ですか?
為ヶ井:MINIは2024年4月から8月にかけて3回、ファネルの深さに応じたASC施策を展開し、それぞれ分析を行いました。1回目はボトムファネル向けの「試乗+見積もりキャンペーン」、2回目はミドルファネル向けの「モニター抽選キャンペーン」、3回目はトップファネル向けの「宿泊体験付きモニター抽選キャンペーン」です。
その結果、ファネルの層とキャンペーンごとに相性の良いユーザー属性が明確に見えてきました。また、トップファネルで反応するもののミドルファネル以降で脱落する層については、理解促進のための補完施策が必要であることがわかりました。さらに、ボトムファネルでも反応していたにもかかわらず、ASC以外では訴求していなかった層も発見され、通常配信に加える対応を進めました。
――仮説であった「想定外のユーザー層」は発見できましたか?
為ヶ井:はい。特に驚きだったのは、1回目のボトムファネル向けキャンペーンで反応が見られたIT関心層と健康関心層です。自動車関心層から間接的に連想できる属性ではありますが、追加の判断に足る裏付けを取ることができたのは今回の分析の一つの成果だと考えています。
また、2回目のミドルファネル向けキャンペーンでは、ショッピング関心層やガジェット・ゲーム関心層に一定の反応が見られました。これらは「ピンポイントのターゲット」として追加し、新しい効率的なユーザー属性を開拓する成果につながりました。
――分析結果はその後の施策にどのように活用されましたか?
為ヶ井:分析で得られた知見は、媒体横断での新規層アプローチを目的とした別キャンペーンのターゲット選定や、非ASCの認知施策におけるターゲット拡張にも反映されています。今後は、新たに見つかった属性層に対して認知施策を順次広げていく予定です。
――新規層アプローチによって、予算配分にはどのような変化がありましたか?
為ヶ井:ASCの効率が相対的に非常に高かったため、Metaへの予算配分は前年の約1.5倍に拡大しました。2023年までは獲得施策予算の4割をMetaに投じていましたが、2024年以降は6割以上を配分しています。個人的には、まだ拡大の余地があると考えています。
――クライアントからの評価やフィードバックはいかがでしたか?
為ヶ井:これまで想定していなかった層を発掘できた点を高く評価いただきました。当初から新規層開拓への期待は大きかったため、それに応えられたのは大きな成果です。
坂野:自動車関心層だけに配信を続けると、中長期的にはコンバージョン数が頭打ちになります。今回発掘できたIT関心層を新たに加えることで、ターゲットの幅が広がりましたし「ASC分析での反応率」を下地にした新規層へのアプローチ提案、それに付随したターゲットの深掘りから潜在層へのアプローチが行える可能性があれば、クライアントからの理解も得られると思います。
広告効果を改善していくには、継続的な計測と検証が不可欠
――今後、電通デジタルのクライアントに対して、Meta AAをどのように提供していきたいと考えていますか?
今井:デジタルマーケティングの重要性が増す一方で、個人情報保護への意識も高まっています。その中で、プライバシーに配慮しつつ精緻なデータ分析を可能にするデータクリーンルームの役割はますます大きくなるでしょう。Meta AAはその要件を満たすソリューションであり、今後も電通グループの強みを活かした効果検証を継続していきたいと考えています。
また、関連ソリューションとして「Meta Advantage+ オーディエンス」が新たにリリースされました。これはASCのブラックボックス化を解消するための仕組みで、Meta AAの分析結果をそのままカスタムオーディエンスとして広告配信に活用できます。ターゲティングだけでなく、除外設定としても使えるため、PDCAをより効率的に回すことが可能です。現状は外部データに対応していませんが、今後は「属性分析サブスクパッケージ」の結果も活用できるようになることを期待しています。
――「属性分析サブスクパッケージ」は今後どのように展開していきたいと考えていますか?
加藤:現状の属性分析ではクリック指標を中心に型化していますが、コンバージョンなど他の指標に関してはまだ整備の余地があります。今後はCTRとCVRを同時に分析し、その差分から新たな示唆を得られる仕組みも追加したいと考えています。ユーザーの動きは非常に速いため、継続的な属性分析を行い、定常的に確認できるような使いやすい形へと発展させていきたいです。
さらに、電通グループが提供する「TOBIRAS」というソリューションと組み合わせ、定期的に行いたいと依頼があった分析に関してはアカウントプランナーが自ら分析を行えるよう、社内整備を進めております。今後は、上記のような社内ソリューションも駆使し、より汎用性の高いパッケージを目指したいと思っています。
坂野:CVR起点でASC分析を行い、リフトが確認できるかどうかは特に注目しています。今後は分析結果を認知や理解促進の領域にも広げ、今回発掘した新規層への継続的なアプローチを通じてナーチャリングにつなげていきたいと考えています。
――最後に、Meta AAや「属性分析サブスクパッケージ」を検討しているマーケティング担当者に向けてメッセージをお願いします。
加藤:Meta AAは、属性データを直接参照できないという制約はあるものの、TVデータとのクロスリーチ分析など、幅広い計測が可能な強力なソリューションです。今回ご紹介した「属性分析サブスクパッケージ」は、多くの企業が潜在的に抱えていた課題への一つの解として生まれました。すでに多くの企業から高い注目と期待をいただいており、今後もASCとMeta AAを組み合わせることで、より精度の高い広告配信を実現していきたいと考えています。
今井:2021年にインターネット広告費がマス四媒体を上回って以来、広告におけるデジタルの存在感がより大きくなっています。配信ソリューションは数多く存在しますが、確実に効果を改善していくには、継続的な計測と検証が不可欠です。そのための解として、Meta AA、そしてその課題を補う「属性分析サブスクパッケージ」や「Meta Advantage+ オーディエンス」があります。特にInstagramを活用した獲得施策で効果検証に悩んでいる方には、ぜひご活用いただきたいと思います。
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