日本生命グループの個人向け生命保険会社であるはなさく生命は、Meta、電通デジタルとともに、Metaのデータクリーンルームを活用し、広告接触が検索行動に与える影響を可視化する「検索行動リフト分析」に取り組みました。本記事では、分析の背景や導入経緯、成果、そして今後の展望について、各社の視点から紹介します。
2025.10.21
Meta広告は検索リフトにも効く!はなさく生命が実施した「検索行動リフト分析」とは?
はなさく生命保険株式会社
はなさく生命におけるMeta広告の役割とは?
――はなさく生命のダイレクトマーケティングにおけるミッションは何でしょうか?
はなさく生命・日下部氏:ダイレクトマーケット推進部のミッションは、ネットダイレクト領域No.1を達成することです。そのために若年層もしっかり取り込む必要がありますが、20~30代は生命保険への関心が顕在化していない場合があります。その層にどう商品を届けるかが、大きな課題となっていました。そうした中で、Meta広告は、若年層を含め幅広く配信でき、接点を広げられる点で、大きな魅力があると考えています。
――はなさく生命のマーケティングコミュニケーションにおいて、検索行動はどのような意味を持っていますか?
日下部:社名を検索してウェブサイトを訪問するお客様は、すでに弊社の商品に強い関心を持っているため、申し込み率や継続率が他の広告チャネルと比べて高い傾向があります。直接的なコンバージョンを重視しつつ、検索行動を促す施策にも積極的に取り組んでいます。
――はなさく生命のダイレクトマーケティングに関して、これまで電通デジタルはどのような取り組みを進めてきたのでしょうか?
電通デジタル・京谷:はなさく生命様では、これまで直接コンバージョンに寄与する広告を中心に投資してきましたが、長期的に成果を伸ばすにはアッパーファネルやミドルファネルの拡大も欠かせません。Meta広告は機械学習精度が高く、重要なプラットフォームであり、間接貢献も高いと想定していますが、なかなかその効果の可視化が難しいという課題があります。そこで今回は、Meta Advanced Analytics(Meta AA)を活用し「検索行動リフト分析」を実施しました。これにより、実態に近い評価を行い、正しい投資判断につなげることを目指しました。
Instagramの「検索行動リフト分析」が可能に
―― Meta Advanced Analytics(Meta AA)とはどのようなソリューションですか?
Facebook Japan・田中氏:Meta AAは、Metaが提供するいわゆるデータクリーンルーム(DCR)と呼ばれるソリューションです。企業ごとに専用の分析環境を提供しており、そこにはMetaの利用者単位での情報が蓄積されています。ただし、そのデータはMeta AA内部でしか扱うことができず、外部に持ち出せるのは分析結果のみであるため、プライバシーに配慮しながら、通常の分析よりも深く柔軟な分析を可能にします。利用者ごとの広告接触やウェブサイト上での行動に関する生データを分析することができるため、検索行動などやや長めの期間でのアトリビューション分析にも対応可能です。
――Meta AAを使った支援に関して、電通グループの強みは何でしょうか?
電通デジタル・今井:Meta AAについては、2018年の黎明期から積み重ねてきた豊富な実績が大きな強みです。さまざまな分析の型や手法に関する知見を持ち合わせており、それを生かしてご提案できる点に価値があると思っています。
さらに、電通グループが取り扱えるデータの多様さも大きな強みです。これらを活用することで、オンラインとオフラインを統合し、フルファネルでの活用が可能になります。結果として、通常の管理画面で作成できるレポートよりも一段深く、精緻な効果検証を求めるクライアントを中心に、Meta AAの導入が広がっています。
田中:私から見て、電通デジタルはデータ基盤をしっかり整えており、とても使いやすい環境になっています。さらに、分析官のバックアップ体制も充実していて、急なニーズにも的確に対応できる仕組みが整っていると思います。
――電通デジタルが提供する、検索行動リフトを可視化するソリューション「検索行動リフト分析」の概要を教えてください。
今井:Instagramを含めた各種SNSプラットフォームは、もはやコミュニケーションインフラの一部となっています。そのような中で、ユーザーは1つのSNSの中で「検索・購入」などのアクションを起こすだけでなく、複数のチャネルをまたいでアクションを起こすケースが多々あります。そのため「SNSで広告接触した後に、その場で即コンバージョンしなかったとしてもその後、別のチャネルでの検索行動に寄与(間接貢献)しているか」を可視化したい需要は年々増加していました。
Meta広告でも管理画面上の様々な指標を用いて効果を可視化することが可能ですが、ユニークなサイト来訪者数を出すことは簡単ではありませんでした。そこで今回は、Meta AAに蓄積された利用者単位のデータを活用して「Meta広告接触者」がその後別のチャネルで検索行動を起こしているかを分析しました。
具体的には、Metaのコンバージョンリフト計測とMeta AAを組み合わせて利用しています。コンバージョンリフト計測は、Metaが振り分けた広告接触者と非接触者が起こした行動、今回の場合は検索によるサイト来訪の差を見ることで広告の真の効果を計測する手法です。サーチ広告経由でのサイトへの流入ごとに別パラメーターを付与したタグで設定管理することで、Meta広告に接触したユーザーが検索行動を起こしているかを計測するのですが、コンバージョンリフト計測のみだとユニークなサイト来訪者数が計測できないため、Meta AAを用いてそれを算出できるようにしています。
Meta広告が検索行動にも寄与していることを、データで可視化
――はなさく生命の「検索行動リフト分析」で、どのような示唆が得られましたか?
今井:分析の結果、Meta広告に接触したユーザーは、いずれのターゲティングでも非接触ユーザーに比べて指名検索経由でのサイト来訪率が高いことが分かりました。つまり、「Meta広告は広告接触による真水の効果であるリフトにおいても指名検索に間接的に寄与している」ということが確認できました。
さらに、ターゲティング別に見ると、「ASC(Advantage+ Sales Campaign)」が他を上回ることも確認できました。MetaのAIによる自動最適化であるASCは、直接的なコンバージョンに対して高い効果があることはよく知られていますが、今回の結果は直接的なコンバージョンだけでなく、リフトという真水の広告効果においても、AIを使わない従来の手法と比較して、その後の間接的な検索行動に最も寄与している点を可視化できたのは大きな示唆だと考えています。
はなさく生命・上元氏:これまで日々の運用の中で、「Meta広告は検索行動にも寄与しているのではないか」という仮説を持っていましたが、それをデータでしっかり可視化できた点は非常に大きな意義があったと思います。
はなさく生命のデジタルマーケティングは、基本的に「効率の良い施策に予算を寄せる」という考え方が軸になっています。テレビCMについても同様で、認知目的ではなく、効率的に申し込みに繋がるかどうかを基準に投資しています。
これまでは効率を重視したボトムファネルの施策が中心でしたが、最近ではミドルファネルやアッパーファネルを狙った取り組み、たとえば動画活用などにも少しずつ広げてきています。その成果が最終的にどの程度コンバージョンにつながるのか、効率はどうなのかを知りたいというのが課題でした。
今回のMetaによる「社名検索への貢献度可視化」は、その点をわかりやすく示してくれました。ただし、実際には他の媒体やオーガニック検索、テレビからの流入もあるため、それらをすべて含めて「社名検索にどれだけ返ってきたか」「アトリビューションをどう捉えるか」を評価する必要があります。
社名検索のコンバージョンの増加に至るまでに、どんなプロモーションを実施すればいいのか、お客様はどんなトラフィックを重ねて来ているのか、それがより明確に見えればバジェットの配分が今より最適化しやすくなります。
プラットフォーマーのデータ接続の制約が強くなる中で、Meta様・電通デジタル様と一緒にMeta AAを活用した分析を行えたことで 可視化できる範囲が広がり、その結果、広告施策のさらなる拡大にもつなげられるのではないかと感じています。
田中:ラストクリックを重視する従来の評価軸に対して、リフトに基づく間接効果の可視化という視点を提示できたのではないでしょうか。間接効果も含めて広告としての真の価値を測る「リフト」は、検索行動以外においても広告投資の意思決定を誤らないための重要な指標だと思いますので、今回のような計測が今後広がっていくことを期待しています。
京谷:今回の分析結果を踏まえ、指名検索をしそうなユーザーをコンバージョンポイントに設定すれば、ASCが新しい層を学習し、より効果的な配信につなげられそうです。そうした仕組みを活用することで、 Metaのみならず広告施策全体でさらにデジタル上での申し込みを増やしていき、コンバージョンの最大化を目指す施策を検討していきたいですね。
柔軟な分析で、最適な解決策を提案する
――はなさく生命として、電通デジタルとMetaにどのような期待をしていますか?
日下部:特に期待しているのはInstagramでの配信です。今後の販促では「女性向けブランディング」を大きな柱として強化していきたいと思っています。具体的には、医療保険やがん保険において、特に若年層のニーズにどうアプローチし、どう配信すれば成果につながるのか――その部分を電通デジタルやMetaの皆さんと一緒に分析していきたいですね。
上元:データ分析の観点では、もっと深掘りした取り組みを期待しています。以前は漠然としか見えなかったものが、ファーストパーティデータを用いることで、より精緻に把握できるようになってきました。今後は、Metaをはじめ各メディアやオフライン広告も含め、統合的にデータをまとめて分析できる仕組みを提供していただけると大変助かります。各プラットフォームと密接に連携している電通デジタルなら、そのような取り組みを実現してくれるのではと期待しています。
京谷:電通デジタルの強みは、課題に応じて分析官が柔軟にアプローチを考え、最適な解決策を提案できる体制にあります。単なる依頼対応ではなく、対話を重ねて潜在的なニーズを見つけ出し、新しいソリューションを共創することで成果につなげていく。そうした取り組みを今後も続けていきたいと思います。
――「検索行動リフト分析」を今後どのように展開していきたいと考えていますか?
今井:若年層を中心としたユーザーがInstagramで何を見て、そこからどのような行動をとり、コンバージョンにつながったのか――その道のりをデータとして見える化することは、広告投資対効果の把握や新たな顧客マーケティング戦略の立案において非常に重要です。
今後も私たちは、こうしたデータ活用・分析支援を通じ事業成果への貢献度を可視化することで、広告主の皆様がMetaをさらに活用いただけるように導入から運用まで伴走し、最適なソリューション提供を強化していきたいと考えています。
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