2023.04.25
UX QUEST UXデザイナー座談会
UXデザイナーのキャリアパスと必要なスキルの磨き方
電通デジタルには、さまざまな経歴を持つUXデザイナーが多数在籍しています。本記事では、電通デジタルのUXデザイナー4人が、これまでの経験やスキル、キャリアの築き方について、クロストークを行いました。
※所属・役職は記事公開当時のものです
これまでのキャリア 私たちはどのようにしてUXデザイナーになったか?
鈴木健史(以下、鈴木) 「人のココロを動かしたい」という思いがあり、2019年に電通デジタルに新卒で入社し、UXの世界に足を踏み入れました。新卒の頃は主に情報設計、ユーザー調査をスポットで担当。その後、UXコンサルティングを経験し、2022年からサービス開発にも携わっています。
喜々津良(以下、喜々津) XRメタバースやIoTなど、先端技術を活用したUXデザインに携わってきて、2021年、電通デジタルに入社しました。現在はR&Dプロジェクト「XRLAB」のリーダーとして、新しい体験をどのように社会実装していくかに挑戦しています。
馬問津(以下、馬) 中国出身です。2014年に来日して、美大でインタフェースデザインを学んだことがきっかけでUXを意識するようになり、2020年、電通デジタルに新卒入社しました。UXの知識を得る過程で、ソーシャルグッドやインクルーシブデザインにも興味を持ち始め、現在は、インクルーシブデザインの探求に取り組んでいます。
田中秀斗(以下、田中) 2016年、電通デジタルに新卒入社して以来、UXデザインを中心に、リサーチ、情報設計、カスタマージャーニーマップ、ペルソナ、人間中心設計など、いろいろな業務を幅広く行ってきました。現在は、クライアントにUX研修プログラムを提供したり、組織開発プロジェクトに従事したり、幅広いプロジェクトに取り組んでいます。今回はファシリテーターを務めます。
UXデザイナーって何者?
田中 「UX」も「デザイナー」も、人によりさまざまな定義がある言葉です。皆さんは「UXデザイナー」とは何者だと考えていますか?
鈴木 個人的には、課題を解決し、世の中に価値をもたらすことを「デザイン」と捉えているので、UXデザイナーは、「身の回りの課題を解決し、価値あるものとして世の中に出していく人」と認識しています。スキルとしては、想像力や共感力が一番必要ですね。
喜々津 私にとってUXデザイナーは「技術やビジネスを文化に変える人」というイメージです。AIやVRはまだまだ発展途上で、ただ作っただけだと心地よくないところがあります。技術を文化的に社会実装して、ユーザーが楽しい、面白いと感じる体験にして、多くの人に伝えていく。それがUXデザイナーの仕事なのではないかと考えています。
馬 私はUXデザイナーを「シェフ」のような役割だと捉えています。まずユーザーを観察して、何が美味しいと思うのかを把握する。そして、技術を使い、調理した食材を料理として提供し、美味しさを体感してもらう。それがUXデザイナーの役割かなと思っています。
田中 馬さんがそのように考えるようになったきっかけはありますか?
馬 美大で学んだことが影響しているかもしれません。美大は表現する場だと思われていますが、実は表現ではなく、見ることから始めます。インタフェースの授業でも、インタフェースを作るのではなくて、インタフェースをとにかく良く見て、観察して、分析する「目の筋力」を鍛えることを最初に教わりました。「目の筋力」は、UXデザインの仕事でも役に立っていると思います。
どういう人がUXデザイナーに向いている?
田中 皆さんは、どういう人がUXデザイナーに向いていると思いますか?
鈴木 共感力や想像力があり、イマジネーション豊かな人は、UXデザイナーの素質があると思いますね。
馬 日々の観察で、例えば何かシンボルを見たときに、その目的、意味、機能が何なのかを考えることが楽しいと思える人は、UXデザイナーに向いていると思っています。
田中 先ほど「目の筋力」という言葉がありましたが、目の筋力を鍛えるために、おすすめの筋トレはありますか?
馬 美大のときに、「同じものを違う見方で見てみよう」という課題がありましたが、目の筋トレにおすすめです。
例えば、100円玉の100通りの使い方を考えてみると、100円玉の見え方がそれまでとは全然変わります。すごく面白いので、ぜひやってみてください。
喜々津 鈴木さんと馬さんの回答に付け加えるとすれば、ふとした違和感に気づいて、体験を言語化できる人ですね。
自分の体験はもちろん、他人の立場だったらどうだろう。ご年配の方や、赤ちゃんが体験したらどうだろう。
そういった想像力を働かせて、いろんな視点から体験を考えることができる人は、すごくUXデザイナーにマッチするような気がします。
電通デジタルUXデザイナーにはどんな人が多い?
田中 皆さんの感覚として、電通デジタルのUXデザイナーにはどのような人が多いでしょうか?
喜々津 コミュニケーション力や調和力が高い人が多いですね。大きなプロジェクトには、社内の他の専門家もたくさん参画しています。その人たちとコミュニケーションをとって、より良いUXを考えるのがうまい方がいっぱいいるなと感じます。
馬 マーケター寄りや、クリエイティブ寄りなど、さまざまなバックグラウンドを持っているUXデザイナーが在籍しているのが特長かな、と。ダイバーシティのある組織になっていると思います。
鈴木 ダイバーシティがあるというのは、まさにそうですね。メーカーで自動車を作っていた人、銀行員をやっていた人など、多彩な人たちのさまざま要素や知見が掛け合わさって、最適なUXデザインが作られる、という印象はあります。
馬 リアルプロダクトのUXが得意な人もいますね。Webやアプリなどのデジタルに閉じず、リアルとデジタルの融合に強いところも特長かなと思っています。
UXデザイナーのスキルアップ法
田中 UXデザイナーとして、本やセミナーなど、どのようなところから知識や情報をインプットして、スキルを磨いてきましたか?
喜々津 VRは、新しいデバイスを実際に使ってみないと、何が体験できるか分からないところがあります。また、体験は人それぞれ異なります。なので、まずは自分が体験すること。それから新しい違和感を言語化・可視化して、人に伝えていくことをすごく大事だと思って取り組んできました。
馬 私は、「業務」「観察」「学ぶ」の3本柱でスキルを磨いてきました。人間工学や人間中心設計など、理論的なことを学ぶのは、電通デジタルに入ってから始めました。すごく面白いし、ためになります。あとは、本やセミナーなどで学ぶことも非常に面白いです。
鈴木 僕は、基礎となるUXデザインのスキルは案件ベースで身につけました。その時々で必要な情報を、本やセミナーでインプットし、スピーディに案件に生かしてみる。インプットとアウトプットを繰り返しながら、自分の血肉にしてきた感じです。
先ほど、馬さんが「UXデザイナーはシェフだ」って言っていましたが、まさにそのとおりです。シェフが食材や調味料について学ぶように、UXデザイナーは、Web3やブロックチェーンといった新しい技術や、携わる業界の関連知識を学ばないといけません。良いUXを作るには、いろいろな知識や情報をインプットして、引き出しを増やしていくことも重要かなと思っています。
田中 インプットしたことを自分の血肉にして、アウトプットするためのコツはありますか?
鈴木 読んだ本の内容や参考になったこと、考えたことを、UXをやっている同期の人たちと会話ベースで共有して、情報交換しています。あとは、学んだことや体験したことを言語化して、社内コミュニケーションツールで発信しています。最近読んだ本では、『This is Service Design Doing』や『起業の科学』がとても面白くて、参考になりました。
馬 アウトプットの質を上げるコツは、人と協力して、たくさん作ることかもしれません。UXデザインには、ただ1つの正解はありません。1人で時間をかけて完璧を目指すより、スピーディにたくさんのアイデアやパターンを出して、大勢でディスカッションして、意見を聞いて、1個のUXデザインに仕上げていくのが大事だと思います。
喜々津 いろいろな人の視点でテストをして、フィードバックをもらって、すばやく改善する。このサイクルを繰り返して行えるようにあらかじめ設計して、スケジュールに織り込んでおくということは意識しています。PDCAの回し方、フィードバックを反映する際の調整方法なども考える必要があるかなと思います。
Google UXデザイン プロフェッショナル認定とは?
田中 鈴木さん、馬さんが受講して取得したGoogle UXデザイン プロフェッショナル認定(Google UX Design Professional Certificate)について、ウェビナー参加者から質問が来ています。なぜこのプログラムを受講しようと思ったのでしょうか?
鈴木 体系的にUXを学ぶプログラムは、一般に座学のことが多いです。座学ではなかなかすぐに業務に生かしづらく、自分の血肉にならないだろうと考えて、このプログラムを受講しました。
課題を自分で作って評価してもらい、OKが出たら次の課題に行けるという実践的な内容で、しっかり自分の身になったという実感がありますね。かなりの量の課題がありますが、私は短期集中で受講して、2.5カ月ぐらいで認定資格を取得しました。
馬 私は、そもそもGoogleのUXデザインとはどのようなものかを知りたくて受講しました。鈴木さんの言うように、講座内容は実践的でとても充実していましたし、プレゼン資料の作り方や、Google社員へのインタビューもあって、すごく勉強になりました。受講内容は、私も自分の筋肉になっていると実感しています。
ちなみに、私は毎週土日に受講して半年ぐらいで資格を取得しました。普通はこれぐらいの期間が標準だと思いますので、鈴木さんはかなり短期集中ですね(笑)
鈴木 「UXとは?」から始まるので、UX初心者でも大丈夫ですが、ある程度UXの知識と業務経験があって、もう少し実践的なスキルを身につけたい、体系的に学んでみたいという方だと、自分ごと化できるのでお勧めです。
UXデザイナーとしてやりたいこと
田中 最後に、UXデザイナーとしての今後の目標、やっていきたいことをお聞かせください。
喜々津 私は新しいテクノロジーが好きなので、新しいゴーグルや、ハンドのコントローラーなど、次々と出てくるハードもどんどん取り入れながら、新しいUXを作っていきたいと考えています。
馬 今のWebサイトやアプリのデザインは、マジョリティを対象に作られていることが多く、レアケースやマイノリティへの配慮が少ないと感じています。私自身も日本で働く外国人というマイノリティですが、マイノリティにフォーカスしたアイデアの創出と、現在のプロダクトの改善、この2軸をこれからの自分のテーマにしていきたいなと思っています。
鈴木 私はUXデザイナーとして、ウェルビーイングを社会に実装していきたいと思っています。これまでのようなお金、モノ、便利さだけではなく、平等、透明性、幸福感、社会的な価値、地球に優しいといったところまでを視野に入れたUXをデザインして、サービスに落とし込んでいきたいですね。
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