2024.11.26

カスタマイズされた実践型研修で、ビジネス変革をリードするデジマケ人財を育成

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスのデジタルマーケティング部は、顧客視点・ビジネス視点両軸を持って複数の起点からビジネス変革ができる人財の育成に取り組んでいます。電通デジタルは、2024年4月から6月にかけて行われた新任者オンボーディングのカリキュラム設計と研修実施を担当しました。その目的と具体的な実施内容について、サントリーホールディングスと電通デジタルの担当者に聞きました。

  • 事業のさらなる発展に向け、「デジタル+マーケティング」の素養を持ちビジネス変革を主導できる人財育成に取り組むも、研修プログラムの作成に苦心。多数あるデジタルやマーケティングの分野別に複数の外部パートナーに依頼したものの、「研修体験」が分断して一連の流れが掴みにくかった。
  • 新任者の理解を実務レベルまで引き上げられるオンボーディングにも取り組んできたが、実践込みの研修を内製化するのは困難だった。 

  • デジタルマーケティングのスキルを基礎から実務レベルに上げるため、計8日間のプログラムを約3カ月間かけて提供。 
  • サントリーのロイヤルティプログラム「プレモルメンバーズ」をテーマとした演習中心のプログラムで、各日アンケートをとって次回プログラムに反映させた。 
  • Day4、Day6、Day8のあとには電通デジタルのメンバーが一部受講者と1on1を実施。振り返りを促しフィードバックを行い、実務レベルの引き上げを後押しした。 

  • 大きな課題だった「体系的な学び」ができたという声が多くの受講者からあがった。スキルだけでなく、ビジネス変革に欠かせないマインドを醸成できたことで「サントリーが顧客視点の会社を目指す限り、全社員が受講すべき」という声もあった。研修後は受講者の多くがさまざまなビジネス変革プロジェクトで活躍している。 
  • デジタルマーケティング部のプロジェクトをサポートするグループ会社のメンバーは、研修後に社内で勉強会などを開いて学んだ内容を共有。知見を社内に広げ、業務に反映させている。 

全社横断で、顧客起点で付加価値の高い「コト」を創出

――サントリーホールディングスのデジタルマーケティング部は、どのような組織なのでしょうか?

サントリー・井上由美子氏:基本的には、デジタルを活用してマーケティングを推進していく部署ですが、「顧客起点で考える」ことを重視しています。ビジネス視点だけでなく、お客様を理解した体験設計を全社横断で行い、生活をより豊かにするサービスを生み出して売上や利益につなげたマーケティングを行っていくのが特徴です。

サントリーは、100年以上にわたってモノ売りをしてきました。でも、飲料ひとつとっても、お客様は、単に「飲みたい」だけでなく、「気分に合わせて楽しみたい」「リフレッシュしたい」といったニーズがあります。「顧客起点で考える」とはまさにそういうことで、より深いニーズに寄り添えるようになったデジタル技術を活用し、お客様にとって価値のあるコト(体験)を提供することをミッションとしています。

――具体的にはどのように顧客起点で価値ある「コト」を提供し、ビジネス変革に繋げているのでしょうか?

サントリー・岡田美衣氏:担当しているサービスやプロダクトの顧客理解を深め、課題仮説に対しソリューション案を考え、クイックに検証を回しながら顧客への価値創造とビジネス効果の確度を上げていくのが基本的なプロセスになります。「顧客起点」で物事を考え、結果としての「ビジネス成果」にこだわるというスタンスは変わりませんが、ビジネス変革を起こすためのプロセスはまだまだ模索中です。最近では、世の中で新たに生まれている技術やさまざまなトレンドから顧客ニーズを探り、後にビジネス課題とマッチさせていくなど、新しいプロセスにも取り組んでいます。

井上:プロセスを模索しながらビジネス変革につなげた事例のひとつが、法人向け健康促進サービス「SUNTORY+」です。

「SUNTORY+」は、健康行動を続けるとアプリ上でポイントが貯まり、自動販売機でサントリーの健康飲料と交換できるサービスです。営業をして自動販売機を設置する従来の自動販売機ビジネスに、社員の健康促進という新たな付加価値を提供し、差別化を図ることができるようになりました。

サービスをリリースするだけでなく、継続的な成長のためのさまざまな施策を行うのも、大切な取り組みです。「SUNTORY+」では、サントリーにとっても新たな試みだったカスタマーサクセス組織の構築と運用も行っています。

井上由美子氏(サントリーホールディングス株式会社 デジタル本部 デジタルマーケティング部 課長)

複数の起点からビジネス変革をする人財に求められる力とは

――幅広い視点でビジネス変革に取り組んでいるのが伝わってきます。そうした取り組みを継続的に推進するため、デジタルマーケティング部ではどのような人財育成をしているのでしょうか?

井上:デジタルマーケティング部が人財育成方針として掲げているのは、「事業が更なる発展を遂げるために、“デジタル”+“マーケティング”の素養を持ち、複数の起点からビジネス変革ができる人財を育成する」です。

これは決して簡単ではありません。デジタルスキルも当然磨かなくてはなりませんが、むしろ重要なのは、変化に柔軟に対応しながらビジネス変革を進めていくマインドです。社内のあらゆる部署や外部パートナーなど、多くのステークホルダーを巻き込んでいく力も必須ですし、ビジネススキルも高めなくてはなりません。そのために、「個客理解力」「体験デザイン力」「ビジネス提案力」「プロジェクトマネジメント力」の大きく4つのスキルを持つ人財の育成に取り組んでいます。

――人財を育成するうえで、抱えていた課題を教えてください。

井上:多岐にわたるスキルの習得が必要なうえ、全社にまたがる取り組みなので、世間一般の概念をそのまま導入するのではなく、サントリー流にアレンジする必要があります。多くの社員が理解し、様々な部署でDX取り組みを推進させていくためには、デジタルマーケティング部が目指す全体像をできるだけわかりやすく伝えたうえで、一連の流れの中で体系的に学ぶことが重要だと考えていました。

岡田:ところが、試行錯誤を繰り返してもなかなか思いどおりの人財育成プログラムを設計することができなかったんです。

スキル項目が幅広いため、昨年までは各分野で外部の専門家の方をお招きして研修を組んでいました。個々の研修内容は満足度も高く良いものだったのですが、複数の会社に委託することでプログラムが分断してしまい、一連の流れがつかみにくい点が課題でした。 内製化も検討しましたが、実践込みの研修を社内で作成するのは困難でした。

岡田美衣氏(サントリーホールディングス株式会社 デジタル本部 デジタルマーケティング部)

「サントリーらしさ」を盛り込んだ8日間の研修プログラム

――電通デジタルに人財育成のカリキュラム設計と研修実施を依頼した理由は何でしょうか?

井上:デジタルマーケティングを幅広く支援しているご実績のもと、一連の流れでスキル習得ができる体系的なプログラムを作成いただけるのが大きかったですね。座学のみでなく実践を重視した内容で、実際に現場で活躍しているスペシャリストが講師になっていただけるのも魅力でした。「サントリーらしさ」やデジタルマーケティング部の強みを生かしたいという思いが強かったので、そこに合わせてカスタマイズしてくださるというのが決め手になりました。

――電通デジタルは、具体的にどのようなプログラムを提案したのですか?

電通デジタル・笹原:必要な基礎知識から実務で活用できるスキルまで得られるプログラムとして、8日間のプログラムをご提案しました。「一連の流れ」を意識してDay1、Day2は座学を中心に「デジマ基礎」と「トレンド紹介」を行い、Day3以降はデザイン思考の実践的フレームワーク「ダブルダイアモンド」に沿った演習中心のプログラムとしました。

その中でも重視したのは、「サントリーらしさ」を盛り込むことです。たとえば「トレンド紹介」は、いくらでもお伝えできる内容がありますが、闇雲に情報を並べても意味がありません。サントリーのデジタルマーケティング部として押さえておくべき内容に絞り込み、オンラインとオフラインを分断せず融合するOMO(Online Merges Offline)やファンマーケティング、D2C(Direct to Consumer)の考え方や事例紹介をしました。

演習中心のDay3以降では、具体的なプロダクトとして、ザ・プレミアム・モルツのロイヤルティプログラム「プレモルメンバーズ」を題材に用いました。KGI・KPIの策定や運用方法、顧客分析の仕方やペルソナの設定などを教科書的に学んでも身につきにくいですが、「プレモルメンバーズをよりグロースするにはどうすればよいか」を考えていただくことで、サントリーならではのデジタルマーケティングが理解しやすくなると考えました。

Zoom

電通デジタル・廣田:ご提案した内容をベースに、全体像として受講者に伝えたいところはどこなのか、どのように強弱をつけるかといった部分をしっかりと議論できたのは、プログラムを仕上げるうえで非常に助かりました。細かいようですが、どのような言葉で伝えるべきかといったレベルまですり合わせができたのは、質の高いプログラムをご提供するうえで大きかったと思っています。

廣田耕望(電通デジタル トランスフォーメーション部門 トランスフォーメーション事業部)

研修と実務を繰り返すサイクルで、学びを定着

――8日間を約3カ月間にかけて行うプログラムですが、各日の間を空けるのはどういった狙いがあったのでしょうか?

岡田:研修内容と業務を結びつけることが狙いでした。前年は2カ月間みっちりと研修でインプットを行い、その上で実務に入るという流れで組んでいたのですが、実務に入ってもらったほうが研修内容もイメージしやすくなると思い、実務に入りながら合間に研修を受けてもらうという流れに変更しました。研修と研修の間が空きすぎると学んだことを忘れてしまうので、研修頻度は週1ペースの実施でお願いをしましたが、学びを実務で定着させるうえでちょうどいいペースだったと思います。

井上:ありがたかったのは、各日アンケートをとって、その集計と分析をしたうえで、ごく短時間で素早く次の開催のカスタマイズの提案をいただけたことです。しかも、電通デジタルの皆さんはサントリーで実務をしているわけではないのに、私たちから提供する資料やデータをもとに深く理解して毎回のワークに反映していたので、受講者もやりやすかったと思います。

――研修の実施前だけでなく、研修をスタートさせてからも随時カスタマイズをしていったということでしょうか?

岡田:現場の視点を盛り込んでどのようにチューニングしていくか、毎回しっかりと議論し、それを反映いただきました。やはり、同じ内容でも、一般的な教科書に書いてあることと現場で起きていることは違うんですよね。必ずしもきれいに物事が進むわけではないので、「なぜかうまくいかない」という悩みを抱えてしまい、そこでつまずくこともよくあります。

電通デジタルさんは、研修専門の会社と違って現場の最前線で活躍されている方ばかりなので、「サントリーの現場ではこういうことが起きているので、この部分をより強めたい」といった内容もすんなりと理解いただきました。リアリティのある事例を豊富に示してくださったのも研修参加者の理解促進に繋がり、大変ありがたかったです。

笹原:現場で起きていることを理解するという意味では、受講者の皆さまからの質問が非常に多かったことに助けられました。しかも、実務に根ざした質問なので、現場でどんなことに直面されているのか伝わってくるんです。

廣田:そういったご質問の多さから、たとえばマーケティングやDXという言葉に対する認識も、それぞれの業務経験をもとにつくられているということが改めてわかりました。やはり受講者のみなさまそれぞれの業務を理解したうえで研修をしないといけないと思いましたし、毎回のカスタマイズにも生かすことができたと思います。

笹原史郎(電通デジタル トランスフォーメーション部門 トランスフォーメーション事業部 マネージャー)

質が高く自分事化した質問を誘発した「信頼関係と心理的安全性」の構築

――こういった研修では質問がなかなか出ないことも多いと思います。

井上:基本的に学ぶ意欲の高い人財が集まっている部署なので、質問の多さは想定内だったのですが、質問自体の質が非常に高かったですね。今回はデジタルマーケティング部以外の部署からも参加してもらったのですが、自分事化した質問が多く出ていました。これは、電通デジタルさんが早期段階で信頼関係と心理的安全性を構築してくれたおかげだと思っています。

岡田:Day1のアイスブレイクで笹原さんが一気にあたたかい雰囲気をつくってくれましたよね。

笹原:お話がしやすい関係をつくりあげることで、内容も伝えやすくなりますので、こうした研修を実施する際は常に意識しています。これもカスタマイズの一部ですが、途中からチームを分けてそれぞれに担当者をつけ、ワークの際に出てくる質問にすぐ答えられるようにもしました。

岡田:それに対しては、受講者から「アウトプットを出しながらすぐ疑問が解消できるのがすごくよかった」という声があがっていました。各回同じ担当者がついてくださっていたので質問もしやすかったと思いますし、実務経験者からのフィードバックなので納得感ももった上で疑問解消できていたと思います。

受講者の中でより集中的にインプットしたい人財に対し、1on1をしてほしいという要望にも丁寧に対応してくださって、「受講者全員を実務レベルに引き上げる」という目標に向けて関係者一丸となって取り組んでいただいたという実感が非常にあります。

――ほかに受講者のみなさまからはどのような声がありましたか?受講者のその後の変化などもお聞かせください。

岡田:「一連の流れで体系的に学べる研修」という目標は、受講者には伝えていなかったんです。ところが、「体系的に学べた」という感想が非常に多かったんですね。座学と演習を1日の研修の中でやりつつ、研修の間に取り組む実務で反映するというサイクルが回り、理解を深められたのではないかと思っています。

Zoom

印象的だったのは、イノベーションを開発する部署の受講生が「この研修は全社員が受講するべき」とアンケートに記載してくれたことです。顧客起点で考えたくても、どうしても目の前の売上達成を目標として短期視点になりがちな部門からは「そんな中でも忘れてはいけないことに気付いた」という声も多くありました。ユーザー調査を経験したことのない人財からは「販促費をユーザー調査に活用すべき」といった反応もありました。

井上:研修を終えてまだ半年も経っていませんが、すでにビジネス変革プロジェクトに入って活躍している人財がたくさんいます。成長サイクルは点が線となり、面となっていくとよくいわれますが、一人ひとりと会話をしていても、少なくとも線の成長フェーズに到達している人財が多いと感じます。

価値観が通じる「同志」として、さらに進化したアジャイルな研修づくりへ

――今回の成果を踏まえ、今後、どのような人財育成を実施しようとお考えでしょうか?

井上:今回、電通デジタルさんとともに研修を実施したことは、人財育成のあり方や磨くべきスキルを改めて見直す契機となりました。現在、電通さんとともにロールのあり方やスキルの再定義に取り組んでいます。それをもとに、来年もまた電通デジタルさんとともにオンボーディング研修を実施したいと思っています。

同時に取り組みたいのが、OJTの強化と組織風土の進化です。醸成した変革のマインドを組織全体に広げることで、変革へのモチベーションが底上げされ、学ぶ意欲もさらに高まります。そうやって全員で人財を育成する意識を維持することで、さらなる事業の発展に貢献できると思っています。

岡田:デジタルマーケティング部という部署ですが、デジタルはあくまでもお客様を理解し、より良いサービスを提供する手段だと思っています。電通デジタルさんと議論を深めながら感じていたのは、こうしたスタンスや向き合っている課題が共通しているということです。これからも同志としてアジャイルな研修づくりに取り組んでいきたいですし、自社に閉じない新たな考え方を常に取り入れるという観点からも、現場経験を活かしたフィードバックにはこれからも大いに期待しています。

――電通デジタルはこうしたご要望に対し、どのような支援をしていきたいと考えていますか?

廣田:同志とおっしゃっていただいたのは非常にありがたくて、議論を交わす中でも共鳴する部分が非常に多くありました。それに連れて、8日間のプログラムの中でも、求められるレベルが高まっていったと感じています。

今後は、さらに受講者のみなさまの状況に応じて求められるものも変わってくると思います。たとえばプロジェクトマネジメントに軸足を置いたワークを組むなど、より柔軟な対応ができるようにしっかりと準備をしていきます。

笹原:今、世の中にあふれる課題は、明確な答えの出ないものばかりです。それを解決するには、常に現状を把握してカスタマイズをしていかなくてはなりません。この課題解決のスタンスは、電通デジタルとして非常に重視しているものです。

私たちのように戦略に取り組むチームだけでなく、クリエイティブから最先端のテクノロジーまで多彩な領域の専門家が揃い、あらゆるフェーズに対応できるのも、電通デジタルの強みです。そうした強みをフルに活かし、ビジネス変革を手動するみなさまのイネーブラー(伴走者)として、最適な実行支援を続けていきたいと思っています。

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トランスフォーメーション部門 マネージャー

笹原 史郎

トランスフォーメーション部門

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