2025.07.29

トレジャーデータ活用で進化するOWNDAYS。CDPとAIが拓く新マーケティング戦略

株式会社オンデーズ

国内外に約600店舗を展開するアイウェアブランド、OWNDAYS(オンデーズ)。グローバルでの成長が加速する中、マーケティングとECの基盤強化を目的にCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を導入しました。海外展開も視野に、柔軟性と拡張性に優れ、海外実績も豊富なCDP「Treasure Data CDP」を選択。電通グループのシナジーを最大限に生かし、電通デジタルが伴走したCDP導入プロジェクトの全貌をご紹介します。

※本記事の一部情報・内容は、トレジャーデータが取材・公開した情報を参考にしています

  • グローバル展開や新サービス拡大を背景に、多様なチャネル・国・顧客層のデータ統合が急務となった
  • IT部門依存による施策運用のスピードや柔軟性の課題を解決するため、マーケティング部主導の顧客データ活用基盤が求められていた
  • ECと実店舗を横断した最適な顧客体験設計へのニーズが高まっていた

  • Treasure Data CDPを導入し、LINE、メールなどのマルチチャネル施策や細かな顧客セグメントのパーソナライズ配信を実施
  • 休眠ユーザー向けクーポン施策や、購入サイクルと行動データに基づくトリガー配信など効果的なCRM施策を展開
  • 日本国内で得られた施策モデルや仕組みを台湾、タイなどの海外拠点にも順次展開し、現地でも独自施策を実践できるグローバルCRM体制を構築

  • 休眠ユーザー復活施策でコンバージョン率が、従来比約80%増と大幅な施策効果を向上
  • 顧客データ抽出〜施策配信までのリードタイム短縮(IT部門依存から脱却、マーケティング部主導で1日以内に対応可能)
  • 海外現地のマーケティングチームも自走できる体制が整い、グローバルで統一されたCRM施策を実現

グローバル成長を支えるCRM基盤としてCDPを導入

――OWNDAYSの事業内容やビジネスモデルについてご紹介ください。

鳥居長英氏(オンデーズ):OWNDAYSは、13の国と地域で約600店舗を展開するアイウェアブランドです。商品の企画から販売まで一貫して行う「SPA型」ビジネスモデルを採用しており、常時1000種類以上のフレームと、年間約200種類の新作を提供しています。

メガネには、医療的な役割とファッションアイテムとしての側面があり、この業態を「半医半商」と表現しています。

株式会社オンデーズ マーケティング部 部長 鳥居長英氏

――今回、マーケティングのCRM領域でCDPを導入されました。背景を教えてください。

鳥居:OWNDAYSは元々、現会長の田中修治が企業再生のために引き継いだ経緯があり、国内有力エリアへの出店が難しく、早期から海外展開を進めてきました。その後、業績の拡大を受けて「日本国内・グローバルでナンバーワンブランドを目指す」方針を掲げ、マーケティングやEコマース分野への人材投資を強化しています。

マーケティングやEコマースを強化するには、顧客データを施策へシームレスに活用できるCRM体制が不可欠でした。

また、メガネはリピート率が高く、視力測定やカルテ情報の管理が求められます。顧客は、慣れた店舗で購入した方が利便性が高くなり、再来店が促進されやすいです。さらに、フィッティング技術やスタッフへの信頼も重視されるため、顧客データの活用が顧客満足度向上に直結します。これらが、CDP導入を決断した大きな理由です。

――CDP導入前には、どのような課題がありましたか?

鳥居:カルテ情報をはじめとする詳細な顧客データを保有していながら、活用できるのはIT部門に限られていました。プロモーションのたびにIT部門への分析やデータ抽出の依頼、プログラム作成など手間が多く、施策ごとに多くの時間と労力がかかっていました。

阿部滋輝氏(オンデーズ):以前は、購入後のクーポン配布やリマインドなど、シンプルなコミュニケーションのみでした。CDP導入により、マーケティング部門主導で多様なセグメント別にキャンペーンを展開できるようになり、スピードやパーソナライズ化が飛躍的に向上しました。

株式会社オンデーズ グローバルEC部 本部長 阿部滋輝氏

トレジャーデータの柔軟性と電通デジタルとのシナジーに期待

――今回はRFI後のコンペで、電通デジタルが提案したTreasure Data CDPを採用されました。決め手を教えてください。

鳥居:もともと広告宣伝に関して電通グループには継続的に支援いただいており、クリエイティブ開発や来店効果の計測など様々な場面で連携していました。Treasure Data CDPを選んだ理由は、使いやすさと拡張性、そして既に海外展開の実績があった点です。

阿部:現在、主なコミュニケーションチャネルはLINEですが、今後はメールやアプリなど多様なチャネルも活用予定です。Treasure Data CDPはこうしたマルチチャネルへの柔軟な対応力があり、魅力的でした。また、店舗での顧客データ活用や、事前に予約情報を店舗スタッフに共有するというアイデアも、Treasure Data CDPの既存事例が参考になりました。

舩津浩介(電通デジタル):我々としては、OWNDAYS様のご要望に合うよう、課題解決のためのロードマップを提案しました。当初は3〜4カ国同時展開をご希望でしたが、まず日本でリリースし、順次海外へと拡大する現実的な計画に変更しています。また、システム導入だけでなく、業務運営のサポートまで提案できた点が差別化のポイントでした。

鳥居:OWNDAYSの今後の成長戦略において、こうした幅広い知見やリソースを活用したシナジーを生み出していただけることに期待しています。また、トレジャーデータの協業先として、決定後の交渉や対応がスピーディーだったこと、海外展開時に現地法人からのサポート体制がしっかりしていることも、大きな安心感につながりました。

施策の優先順位を明確化、早い意思決定でスピーディーに進行

――実際のCDP導入では、どのようなご苦労がありましたか。

齊藤亘平(電通デジタル):今回は舩津がプロジェクトマネージャーおよびTreasure Data CDPの設定を担当し、私はCDP導入関連の実作業を主に担当しました。初期段階ではOWNDAYSの皆様が数多くの施策アイデアを持たれていたので、ワークショップですべての案を整理し、優先順位付けや展開タイミングを一緒に検討しました。

旗手梨香子氏(オンデーズ):プロジェクト立ち上げ時は整理すべき要素が多く、判断に迷いましたが、電通デジタルとのディスカッションを重ねる中で、施策の分類と優先順位がクリアになり、着実に進められる体制が整いました。

株式会社オンデーズ マーケティング部 CRM担当 旗手梨香子氏

データ連携やセグメント設計など、施策以外の基盤整備まで幅広くサポートしていただけたのも助かりました。

舩津:LINEの標準配信ツールではOWNDAYS様の要望に応えられないことがわかり、急遽専用のプログラム開発が必要になりました。トレジャーデータのエンジニアとも連携し、課題を乗り越えることができました。

電通デジタル データ&エンゲージメント部門 エンゲージメントソリューション事業部 舩津浩介

旗手:一部の施策で、専門的なコードをTreasure Data CDPに貼り付けて送信する方法に切り替えました。非エンジニアの私でも実践できるよう丁寧な手順書や1on1のレクチャーがあり、問題なく自走できています。 

鳥居:施策推進では、デジタル広告チームやLINEヤフーと三者連携で協議し、最適な解決策を導きました。幅広い領域での知見を一体的に活用できる貴重な経験でした。

舩津:電通デジタルでは、デジタル広告配信のお手伝いをさせていただいているのですが、各媒体のアカウントデータを電通グループ全体で管理しているため、デジタル広告のカスタマーマッチ連携の設定も非常にスムーズに進めることができました。これも、グループとしてのシナジーを発揮できた点だと思います。広告代理店が間に入っている場合ですと、通常であれば1カ月以上かかる作業を、1週間ほどで完了することができました。 

海外導入は、電通グループ各社と連携し多言語で対応

――海外へのCDP導入は、どのように進みましたか。

齊藤:日本で導入した後、台湾・タイにもロールアウトを進めました。「母国語での対応」希望があったので、電通グループの海外関連会社であるアイソバー・台湾やMerkle・タイと連携し、英語と現地語の両方で支援しました。その結果、短期間でのリリースが実現できました。

電通デジタル データ&エンゲージメント部門 エンゲージメントソリューション事業部 齊藤亘平

鳥居:開発だけでなく施策設計まで幅広くサポートいただけて、とても助かりました。実際に海外のマーケティングチームとも直接情報共有でき、ベストプラクティスを展開できたと感じています。

阿部:日本で作ったベースをもとに海外展開を進めていますが、国ごとにやりたいことや発信チャネルは異なります。たとえばタイではLINEに加えてWhatsAppも活用しています。今後はTreasure Data CDPで分析しつつ、各国のチームが独自の判断で施策を進められる体制にしていきたいです。

店舗やECの顧客・購買データ等を全てTreasure Data CDPで統合し、各国のマーケティング施策のセグメントや分析で利用できるようにデータを加工
Zoom

舩津:現地のマーケティングチームにはシナリオプランニングなど幅広く支援を行いました。今後の現地施策にも役立ててもらえればと思っています。

マーケティング部主導で施策を実施、自走フェーズへ移行

――国内では、休眠ユーザー復活施策を実施されたそうですね。

旗手:最終購入が2年・3年前のお客様に対し、「そろそろメガネの買い替え時期では?」というメッセージと共に、おすすめ商品・クーポンをご案内しました。その結果、通常のクーポン施策に対し、休眠顧客配信のCVRは1.8倍という成果が出ました。購入サイクルに応じた施策の有効性が確認できたのは大きな成果でした。

また、Treasure Data CDPの活用で顧客データの特定・把握が容易になり、LINE配信も「スポット配信(キャンペーン告知等)」と「トリガー配信(購入後フォロー等)」に分類し運用しています。従来はIT部門へ依頼してから配信まで1週間かかっていた業務も、現在は私ひとりで1日以内に実行できています。

舩津:OWNDAYS様はすでに自走フェーズへ順調に移行されました。他のクライアントでは定着まで時間がかかるケースも多い中、スムーズに切り替えたのは印象的です。

顧客データ活用とAIで広がるOWNDAYSの未来

――今後の展望について、お聞かせください。

阿部:新たな商品・サービスに加え、データや広告と連携した効果的なプロモーション、バーチャル試着データの活用で、より最適な提案・接客を目指しています。ECと実店舗の顧客特性の違いも可視化できており、今後はオンラインから店舗への送客も強化していきたいです。

鳥居:今後注力したいことが主に3つあります。1つ目はグローバルなマーケティング標準化。日本の施策を各国に展開し、各国の成功例も相互に活かしてCRM全体の底上げを図りたいです。

2つ目は顧客体験の進化。CDPによって、1000種類以上のフレームの中からお客様の嗜好に合わせて最適な提案ができるなど、さらにパーソナライズされたブランド体験を実現したいと考えています。

3つ目は顧客データのビジネス活用拡大。新商品の反応やエリアごとの分布をもとに、数量計画や出店戦略にもデータを積極的に活かし、新たなビジネスチャンスを創出していきます。

旗手:これからはマイクロセグメントや行動データに基づくLINE配信も強化し、よりパーソナライズされたコミュニケーションでエンゲージメント向上を目指したいですね。

――トレジャーデータが持つ生成AI機能の活用も進んでいくと思います。AI活用に関してはどのようなイメージがありますか?

阿部:AIの活用には大きな期待を寄せています。AIが従来の分析視点では見えていなかった新しいセグメントを自動で抽出したり、開封率の高そうなメッセージを自動生成できたりすれば、施策の質や効果を大きく高められます。従来になかった気づきや施策が生まれることで、さらなるパーソナライズやスピーディな施策実行が実現できると感じています。

鳥居:AIは業務効率化だけでなく、時に人間が偏ってしまうビジネス視点や思い込みに対して、客観的な視点から指摘・サポートしてくれる「セーフティーネット」としての役割にも期待しています。将来はAIによる需要予測や新商品反応のシミュレーション、出店戦略など経営判断への活用にも可能性を感じています。

齊藤:先日OWNDAYS様と開催したワークショップでも、AIを活用した新しいマーケティング施策のアイデアが複数の部門から多く挙がってきました。全社的にデータドリブン思考が定着し、AIが今後さらに重要な役割を果たすと実感しています。

舩津:CDPとAIの組み合わせは、今後の高度なパーソナライズや新しいマーケティング価値の創出に不可欠です。プロジェクトがうまく進んだのも、「なぜデータやAIを使うのか」という目的意識がOWNDAYS様の組織内にしっかり根付いていたからだと感じています。今後もAIを活用した新しい顧客体験や、ビジネスの成長をご一緒に実現できるようサポートしていきたいと思います。

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データ&エンゲージメント部門 エンゲージメントソリューション事業部

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データ&エンゲージメント部門 エンゲージメントソリューション事業部

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