「地球丸ごとテーマパーク」をコンセプトとしたソニーのSound AR™サービス「Locatone(ロケトーン)」。日経トレンディの「2024年ヒット予測」にもランクインしているこの注目サービスをさらに広く展開するため、電通デジタルが伴走支援をしています。企業や自治体の課題解決に貢献するため「Locatone」が提供できる価値や、それを届けるための取り組みについて両社の担当者に聞きました。
※「Sound AR」および「Locatone」はソニーグループ株式会社またはその関連会社の商標です。
現実世界の風景やコミュニケーションを、もっと豊かに
――「Locatone(ロケトーン)」はどのようなサービスでしょうか?
ソニー・八木泉氏 :現実世界に仮想世界の音が混ざりあう、新感覚の音響体験であるSound ARを楽しめるサービスです。「Locatone」という名前のとおり、ロケーション(location)と音(tone)を活用して、町や地域など地球上のあらゆる場所をエンタメ化しようというコンセプトで、同名のスマートフォンのアプリをリリースしています。アプリ上でツアー形式のコンテンツにアクセスすると、マップ上にスポットが表示され、その場所を訪れると自動的に音が再生される仕組みです。
スマートフォンとヘッドホンだけで「音のAR」が楽しめるLocatoneは、2020年11月に正式ローンチされた。現実世界を散策しながら音で体験が拡張されることで、街の新たな魅力や楽しみ方が発見できる。公式サイトでは、YOASOBIの楽曲「大正浪漫」の物語と音楽が体験できる「YOASOBI SOUND WALK」や、「ラブライブ!サンシャイン!!」と博物館、美術館など作品の舞台になったゆかりの地が連携した「Saint Aqours Snow ~函館 街めぐり~」など過去に開催されたコンテンツも公開。アトラクション、地方創生、ファンコミュニケーションなど、幅広いジャンルのコンテンツがラインナップ。2021年度グッドデザイン賞、グッドフォーカス賞(新ビジネスデザイン)も受賞。
https://www.locatone.sony.net/
――ARというと映像のイメージが強いですが、「音のAR」はどう違うのでしょうか。
八木:映像だと、現実世界にバーチャルな視覚情報を重ねることになりますが、音は現実世界の見え方を阻害することなく、現実世界の風景、そこで行われるコミュニケーションを最大限に生かしつつ、新たな魅力や楽しみ方を発見することができます。
ふと耳に入ってくる懐メロで、昔の思い出や気持ちがよみがえることがありますが、音は普段眠っている記憶を呼び覚ましたり、感情に訴えかける役割もあると思います。実際のテーマパークでも、敷地に入ったらテーマ曲が流れてその世界観に入れるような仕掛けがなされています。「Locatone」が提供する音のARは、特別なデバイスや施工が不要なため、どこにでもシームレスな拡張体験により世界観をつくり出してテーマパーク化し、人の心を動かすことができます。
――スマートフォンを常時見なくても、世界観に入れるという点では、まさに拡張現実(AR)ですね。
八木:実はそこが「Locatone」プロジェクトの出発点にもなっています。私もそうですが、もともとソニーのワイヤレスイヤホン「LinkBuds」シリーズの前身でもある「Xperia Ear Duo」というヒアラブルデバイスの企画を手がけていたメンバーや、アニメの聖地巡礼サービス「舞台めぐり」を手掛けていたメンバーなどでチームが構成されています。
「Xperia Ear Duo」は、スマートフォンの画面を介したコミュニケーションが主流になっている現状に対する疑問から、現実世界の風景やコミュニケーションをもっと豊かにできるプロダクトやサービスをつくりたいという思いから始まったので、「Locatone」もその延長線上にあります。それぞれの街や施設には様々な魅力があります。その魅力を発掘し、お客様に届け、新しい出会いや発見を促すお手伝いができればと思っています。
――ソニーはウォークマンで新たな音楽体験を生み出してきた歴史もあります。いつでもどこでも音の体験をという点では通じる部分も感じられます。
八木:ウォークマンは、好きな音楽を持ち歩けるデバイスです。「Locatone」も、好きなテーマで街歩きを楽しめて新たな発見やコミュニケーションを促すサービスですので、DNAを受け継いでいると感じています。
――他の音声ARと比べて、「Locatone」ならではの特徴はどこにありますか?
八木:「Locatone」には、独自の360立体音響技術や身体の動きと連動して音を鳴らせるモーションサウンド技術など、ソニーのさまざまな技術が活用されており、単なる音声ガイドを超えた、インタラクティブな没入体験を提供できます。隠しスポットや条件分岐も設定できるので、現実世界を舞台にした謎解きやゲームのような体験もつくれます。
また、「Locatone」では、体験するためのスマホアプリだけでなく、クリエイターがコンテンツを制作するためのツール「Locatone Studio」や、利用者の行動を可視化できるツール「Locatone Analytics」もすべてそろっていることも大きな特徴です。
マーケティング戦略から商談の伴走まで、地道ながら実効性の高い支援を
――電通デジタルに依頼した理由は何でしょうか?どのような支援を期待されてのご依頼だったのかもお聞かせください。
八木: おかげさまで「Locatone」の体験はお客様からも好評なのですが、新規事業でリソースも限られていたため、営業や販促は外部のパートナーに委託していたこともあり、より広く展開しようとなったときに、市場分析からマーケティング戦略まで一貫して見直さなくてはならないと思い、弊社のBtoBビジネスを支援してくださっている電通デジタルに依頼しました。
――具体的に、電通デジタルはどんな支援をしたのでしょうか?
電通デジタル・清水:まず、潜在ニーズがどこにあるのか明らかにしたいというご要望がありました。通常は市場調査を行いますが、世の中にないサービスについてのニーズを調べても、信頼性の高いデータはなかなか集められません。とりわけ「Locatone」のような革新的なサービスは、何ができるのか、どんな効果が期待できるのか、イメージしにくいのが一般的です。
そこで、まずは「Locatone」がどのような市場で受け入れられるかを調査するために、インサイドセールスで検証を行いました。地道な電話営業で、どんな課題を持つ企業や自治体とフィットするのか、逆にギャップがあるのかを洗い出していきました。
電通デジタル・江島:手当たり次第に電話をかけても非効率ですし、時間もかかります。仮説をいくつか立ててディスカッションをし、今までアプローチしていないところに重心をかけて、反応の良いところに絞り込んでいきました。
企業や自治体に「Locatone」がどんなメリットをもたらすかが伝わらないと、導入には踏み切れません。抱えている課題によって、営業の仕方や提案の内容も変わってきますので、どんなターゲットにどんな訴求をするかをご一緒に検討しています。導入メリットを効率的に伝えられるホワイトペーパーの作成やメディアでの発信なども進めているところです。
――支援にあたって電通デジタルが工夫している点を教えてください。
清水:とにかく、スピーディかつ包括的なご支援ができるように心がけています。変化の激しい時代の中で、ARやメタバースといった最先端の技術に対するニーズは短期間のうちに大きく変わります。スピーディーにニーズを見極め、仮説を立ててアプローチを行い、「勝ち筋」をどんどん作っていかなくてはなりません。
そのため、1つの方法だけにこだわることなく、その時点で最適な打ち手を出し続けています。受注までのコミュニケーションに伴走するなどの営業支援もそうです。これまでにないサービスだからこそ、電通デジタルのケイパビリティをフルに活用してご支援していくことが重要だと考えています。
――こうした電通デジタルの支援をどう評価していますか?
八木:市場を広く俯瞰できることや、やはりクロージングの成功率をどう上げるかが重要ですので、どういった提案が響いて、何がダメだったのかというフィードバックが得られるのは助かります。
江島:工夫という点では、電通グループのネットワークも活用しています。グループ内で「Locatone」の取り組みを伝えることで、顧客の課題とリンクさせようという動きも出てきます。そうやって成功事例を増やしていくことで、「音のAR」がもたらす価値を広めていけると考えています。
八木:そういったムーブメントの創出も、電通デジタルに大きく期待しているところです。日経トレンディの「2024年ヒット予測」にランクインしましたが、それを現実のものとするために、ぜひ引き続きお力添えをいただきたいと思っています。
社会インフラ機能や教育コンテンツとしての可能性も
――電通デジタルとしては「Locatone」をどう見ていますか?
清水:「 Locatone」のいくつかのツアーを体験しましたが、それぞれ全く異なる体験が得られたことに驚きました。ロケーションに合わせた音を設定するというとシンプルに思えますが、生み出せる体験のバリエーションは非常に豊かで、1つのツールでそれだけのことが表現できるARアプリはほかにないのではないかと思います。あと、回遊施策として、一切の看板や標識がなくても目的の地点へ誘導させることができるのはかなりの強みだと感じます。
江島:その地点で解説のナレーションが聞こえてくるといったベーシックな観光ガイドだけでなく、幅広いコンテンツができているのも面白いですね。スタンプラリーのような設計もできますし、物語の追体験も可能です。謎解きや宝探し、ロジック分岐でマルチエンディングを用意したゲーム性の高いコンテンツもできるなど、思った以上に自由度が高いですね。
――キャラクターなどIPとのコラボレーションだけでなく、アイデア次第で自由に世界観を構築できるということでしょうか?
八木:もちろん、弊社でコンサルティングから企画制作まで行うことも多いのですが、お客様が自ら制作ツールを使ってコンテンツをつくることもできます。後者の場合、私たちが全く想定していなかったコンテンツも生まれています。
たとえば、街中で方言を集めていき、最後に方言を用いたラップが流れてくるコンテンツなど、特にIPを活用しなくても、隠れた魅力はどの土地にもあると改めて実感しています。
江島:その土地の魅力を、初めて訪れた人がすぐわかるかといえば、難しいと思うんです。でも「Locatone」を利用すれば、その価値を多くの人に伝えることができます。そういったストーリーテリングも、「Locatone」を通じてできるのではないかと思っています。
清水:商業施設でも観光スポットでもそうですが、ユーザーはそこを訪れるだけでなく、そこで何を体験できるかを重視しています。そうした顧客体験を向上させるのに「Locatone」は最適だと思いますので、そういうニーズを持つ企業や自治体とのマッチングを増やしていきたいですね。
――「Locatone」の今後の展望をお聞かせください。
八木:想定外のコンテンツが生まれていると申し上げましたが、想像以上にさまざまなニーズに対応できそうという感触があります。
たとえば、社会インフラとしての機能をもたせることができると考えています。インバウンド対応でさまざまな言語を出し分けたり、防災のシミュレーションをしたりといったコンテンツへのニーズも高いです。また、公園を歩きながら語学が学べるといった教育コンテンツもあります。こうしたコンテンツを集めて広く展開することで、暮らしをもっと豊かで楽しいものにしていきたいですね。
清水:初めての場所を訪れて、いきなり話しかけても誰もが優しく対応してくれるとは限りません。その点、「Locatone」の音によるナビゲーションは、豊かなコミュニケーションを後押しすると思います。特に若年層はコストだけではなく、タイムパフォーマンス(その時間の満足度がいかに高いか)も判断基準にしているため、「Locatone」を通じて新しい顧客体験の提供ができればと思っています。そのために、引き続き尽力していきます。
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