2023.03.23

ECデータを活用してファンの体験価値を実現 人気球団が初めて直面した難局を救った3つのシナリオ

株式会社阪神タイガース

コロナ禍で観客減・グッズの売り上げ減という苦境に立たされる中、オンラインショップを強化した阪神タイガース。構想から実装までを伴走する電通デジタルと共に、どのようにデータを活用し、業績を改善したのか。そしてこれからのファンの体験価値向上に向けて、どのような施策を描いているのか。その取り組みを紹介する。

EC強化のためにEngagementを導入するも実装に苦戦

――阪神タイガースのオンラインショップ「T-SHOP」では、2022年度からSalesforce Marketing Cloud Engagement(以下、Engagement)を活用したEC強化の取り組みをされています。Engagement導入のきっかけや理由はどのようなものだったのでしょうか。

阪神タイガース・湯川知子氏(以下、湯川) T-SHOPは、会員登録制度のため顧客データ自体は集まっていたのですが、データの有効活用という点でのノウハウがないという課題がありました。また、20年から新型コロナウイルス感染症の影響で球場の入場制限があり、球場でのグッズの売り上げが落ちる中、オンラインショップでカバーする必要があったことから、既存会員のOne to Oneマーケティングを強化するため、Engagementの導入を決めました。

球団公式オンラインショップのT-SHOPでは、人気商品ランキングや新着商品だけでなく、マスコットのトラッキーや選手がグッズを紹介する動画コンテンツ「ToraTube」、OBを起用したライブコマースなど、充実した内容となっている
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――Engagement導入後、パートナーとして電通デジタルを選んだのはなぜですか。

湯川 顧客データを効果的に活用するには、適切なシナリオが必要です。コロナ禍が長引く中で、早急に売り上げを伸ばしたいという気持ちはありつつ、当時の私たちにはシナリオを作る経験値がなかったため、なかなか実装にこぎ着けられないという悩みがありました。そこで、実績のあるパートナーさんにお力添えをいただく必要があると感じ、数社から提案を受けた中で、提案力が突出していた電通デジタルさんにお願いすることになりました。

湯川 知子氏
株式会社阪神タイガース 事業本部 事業統括 営業部(メディアプロモーション担当)
入社以来、一貫して球団営業部に所属し、チケット販売やファンクラブなどのセクションを経験。2019年にEC担当となり、T-SHOPへのEngagement導入やデータを活用した顧客体験価値向上に携わる。23年から現職となり、顧客データを活用したマーケティング、また、球団メディア(HP・SNS)での情報発信業務に従事。

――電通デジタルとしては、どのような観点で提案したのでしょうか。

電通デジタル・西田健太朗(以下、西田) 球場での観戦ができなくなったことで売り上げが落ち込んだという課題にも向き合いつつ、私たちとしてはもう一点、タイガースファンの視点も重視しました。球場に行き、好きな球団を応援して盛り上がるという顧客体験を奪われたファンの気持ちは非常に重要な要素です。これまでも施策自体はいろいろと取り組まれていましたが、これらを点ではなく線や面に広げ、顧客体験にしっかりつなげていくという意識でシナリオを考えました。

電通デジタル・小林冴基(以下、小林) 主に構想部分を西田、実装部分を私が担当しましたが、実現まで一気通貫でできるのは電通デジタルの強みだと思っています。また、阪神タイガースさんとのコミュニケーションも重視した上で、ご提案に対してフィードバックを頂き、ブラッシュアップしながら方針を固めていきました。

湯川 いろいろな要望も出させていただいたのですが、丁寧に反映していただきましたし、目先のことだけでなく長期的なビジョンも明確にしてもらえたことで、私たちとしても先を見通せるようになりました。球場でもリアルのグッズショップでも販売が止まるというのは、球団としても初めての難局だったので、救いの手を差し伸べていただいたという思いです。

3つのシナリオ策定で効果的なデータ活用が可能に

――具体的にはどのようなシナリオを提案されましたか。

西田 これまでの施策の分析を量と質の両面から行い、抽出された課題を解決するためのシナリオを探りました。また、保有されているデータも見せていただき、どんな施策なら実現可能性が高いかという視点でも検討しました。その結果、量を担保しつつ、質を高めて効果を最大化する施策として15程度のシナリオをご提案し、阪神タイガースさんとの協議を経て、優先度の高い3つを実施することになりました。

小林 1つ目は、全会員に向けた新着商品の訴求シナリオ、2つ目は、コアファンに向けてコンテンツや商品を訴求するシナリオ、そして3つ目は、会員それぞれの“推し”の選手に関連した商品を訴求するシナリオです。とくに3つ目については、やはりプロ野球の球団は選手あってのものなので、最も重視したシナリオです。

22年のシーズンに実装された3つのシナリオは、ライトユーザーも含む会員全体向け、コアファン向け、“推し”選手を応援するファン向けと、ターゲットを分けることで多くのファンへのリーチを狙った。23年のシーズンは、チケットや実店舗のデータも活用する予定だ
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湯川 T-SHOPでは、応援している選手についての会員アンケートを毎年実施していますが、集計するところまでで終わってしまっていました。今回のご提案で、これまで蓄積していたデータが活用できるようになったという点が大きな改善になったと思います。

——3つのシナリオを進める上で苦労された点はどこですか。

小林 1つ目の新着商品と2つ目のコアファン向けのシナリオに比べて、3つ目の各選手の関連商品については苦労しました。というのも、先ほど湯川さんから話のあったアンケートは、好きな選手が複数回答ですし、毎年同じ質問項目ではなかったので、各会員がどの選手のファンなのかを特定するのが難しかったためです。また、数年前のデータだと、すでに退団している選手がいたり、背番号が変わっていたりといった変化もあるので、施策に活用するデータを入念に整備しました。

西田 健太朗
株式会社電通デジタル テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CRMイノベーション事業部 第1グループ
コミュニケーションプランニング領域を中心に、データテクノロジーを活用したシナリオ設計やデジタルマーケティング戦略の策定などのコンサルティングを行う。レジャー、保険、製造業、不動産など、多様な業界におけるコミュニケーション設計支援を担当。

小林 冴基
株式会社電通デジタル テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CRMインテグレーション事業部 第1グループ
前職で培ったBtoBマーケティングやCRM・MAの運用実績を生かし、CRMでの活用を見越したMA実装や運用支援に従事。顧客目線を重視し、クライアントのマーケティング施策の成果最大化をサポートしている。

西田 Engagementの処理ステップでいうと、3つ目のシナリオは他の2つに比べて倍以上の工程が必要でしたね。時間がかかった分、実装できたのは22年のシーズン終盤でした。ただ、これはOne to Oneマーケティングの難しさではありつつ、ファンの多い阪神タイガースさんならではのやりがいのある部分ではありました。

湯川 選手の人気ランキングまでは把握していましたが、電通デジタルさんにデータを活用できる形にしていただいたおかげで、どの選手のどんな商品が足りていないか、これからどのような商品に力を入れていくべきかといった気づきも得ることができ、感謝しています。

——効果や反響はいかがでしたか。

湯川 効果については、従来の施策に比べて300%ほど良くなったものもあります。オンラインショップなので、お客様の声が直接聞けるわけではありませんが、明確に数字に表れていますし、メルマガの配信停止もほとんどないため、ファンの皆様には受け入れられているという確信があります。シーズン開幕前後は商品が動く時期なので、今後にも期待しています。

チケットや実店舗のデータも活用して体験価値向上へ

——昨シーズンの3つのシナリオに続いて、今後の新たなシナリオなど、展望をお聞かせください。

湯川 実はデータ活用という点で進展があり、以前はEC領域内だけのデータ活用しかできなかったのが、ようやく球団内のすべての顧客データを連携することができました。チケット購入や観戦、リアル店舗での購買行動など、ファンの皆様との多くのタッチポイントがデータとして活用できるようになったので、これからも電通デジタルさんにお力添えを頂きながら、阪神タイガースファンの皆様の体験価値をもっと向上できる施策を展開していければと考えています。

西田 EC内でのデータ以外も連携できるようになったことで、チケットデータや実店舗での購入データを活用したシナリオを考えています。現代は余暇時間の使い方が多様化しているので、リアルの体験とひもづけることは重要だと思います。球場での入場制限がなくなったからこそ、球場に来て応援するという体験とECサイトでの体験を融合させて、余暇時間での阪神タイガースさんの魅力を最大化できるような施策を作りたいと考えています。

小林 もっと長期な目線だと、各会員様のニーズに合わせたコンテンツ設定や、対象者のリスト化などの自動化にも取り組みたいですね。また、阪神ファンにもっと好きになっていただくと同時に、初めて観戦した方をどうファンにしていくかも重要なので、潜在層にどうアプローチするかを今後は検討できればと思います。

——今回の事例も踏まえ、保有するデータを施策に生かしたい企業に向けて、電通デジタルができることを教えてください。

小林 電通デジタルは、これまで多様なお客様に対して、構想から実装まで一気通貫で数多くのご提案をしてきたので、今回の阪神タイガースさんのような特殊なケースでも対応できました。そういった部分は大きな強みだと思いますが、課題解決の正解は1つではないからこそ、しっかりとコミュニケーションを取りながら、クライアント様にとっての正解を見つけるお手伝いができればと考えています。

西田 ツールを導入したもののデータがうまく活用できず、出口としての施策が描けないというご相談は少なくありません。私たちは、ビジネスとシステムの懸け橋となれる体制を組んでおり、これまでも多くの企業様がやりたいことを実現してきたという自負があります。また、小林から話のあった一気通貫に加え、電通グループとして、クリエイティブや広告の面でもお役に立てます。こうした強みを生かしてクライアント様の課題解決に貢献したいと考えています。

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株式会社電通デジタル
テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CRMイノベーション事業部 第1グループ

西田 健太朗

株式会社電通デジタル
テクノロジートランスフォーメーション第1部門 CRMインテグレーション事業部 第1グループ

小林 冴基

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