2021年12月14日

コラム

アドテック東京2021に、電通デジタルから4名が登壇

※所属は記事公開当時のものです。

2021年11月1、2日、アジア最大級のマーケティングカンファレンスである「ad:tech tokyo2021(以下、アドテック東京2021)」が、昨年同様、オンライン×オフラインのハイブリッド形式にて開催されました。

今年で13回目を迎えたアドテック東京2021には、合計68セッションに総勢230名超の現役トップマーケターが参加。電通デジタルからは4名が登壇しました。本稿では、その4つのセッションの内容を、電通デジタル社員を中心にしたダイジェストでお届けします。

マーケティング施策の統一指標を作るのは困難。本当に必要な分析をシンプルに把握すべき

Cookieレスやウォールドガーデンの影響により、従来の横断計測が難しくなる中、これからの統一指標はどのように定めるべきでしょうか?「マーケティング施策における統一指標に求められることは?」と題されたカンファレンスには、電通デジタル 副社長執行役員 杉浦友彦が登壇。株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 サイバーエージェントストラテジー局 R&D/マネージャー 奥澤洋基氏、ヤフー株式会社 全社マーケティング本部 コミュニケーションプランニング部 部長 武田明子氏とともに、現状の課題とその解決の方向性をディスカッションしました。モデレーターは、フェイスブックジャパン株式会社 マーケティングサイエンス ノースイーストアジア地域統括 中村淳一氏が務めました。

「統一指標における課題について、電通デジタルは現在どう捉え、どのような施策を実施しているか?」という質問に関して、杉浦は「あらゆるものが細分化する中で、横串を通して共通指標で計測することは難しくなっているし、その流れは不可逆であることは前提」とした上で、「今後もっとも重視するべきデータは、自社が所有する顧客IDで、直接お客様とつながって、その人たちの反応を把握しながら、CRM的にコミュニケーションを取りつつ、良い体験を提供することを目指すべき」とした上で、一方では「真の顧客理解のためには、お客様が回遊しているプラットフォーム上での行動把握が欠かせない。そこで、電通デジタルでは、主要なプラットフォームの中で安全にID軸のデータ計測や分析ができるData Clean Roomへの取り組みを強化している」と紹介しました。

杉浦友彦(電通デジタル)

杉浦友彦(電通デジタル)

Data Clean Roomの特徴は、複数のデータソースを統合した分析が可能であること。かつ、プライバシー保護とマーケティングニーズを両立するデータ基盤だということです。電通デジタルは、それぞれのプラットフォームをひとつの経済圏と見なし、それぞれの経済圏ごとに自社データやセカンドパーティデータ、購買データなどをData Clean Room上でセキュアに紐付けることで、各経済圏ごとに自社CDPの支店を作るというイメージで運用している、と説明しました。

また、「ユーザーの許諾済みIDベースでのデータ分析は、これまでのCookieベースの分析よりもさらにリッチな分析が可能になるメリットがある」と杉浦は言います。

「Data Clean Room内での分析は、ファネルの上部の広告接触から、下部の購買・決済データまでをカバーする。さらに、Data Clean Roomと自社CDPを接続することによって、CRMデータをリッチ化して高LTV顧客の解像度を高めたり、類似ユーザーに対して広告アプローチを展開できる」(杉浦)

それぞれの経済圏のデータを跨いだ分析はできないものの、「1つの経済圏の中で、広告接触から購買まで接続された分析が可能になることで、しっかりとデータ利用許諾が取れた経済圏のIDを軸に、いかにCRM的なアプローチで生活者と関係を築き、LTVを高めていくかという、本格デジタル時代における新しいマーケティングの世界を作る方向に注力している」と語りました。

最後にモデレーターから、「統一指標を作るのは難しそうという中で、これから広告主はどうすればいいのか?」との問いかけがありました。杉浦は、「効果測定は、最後はリソースがボトルネックになりがち。デジタルでできることはどんどん増えているが、PDCAの運用が可能でないと意味がない。本当にやるべきことから逆算して絶対に必要な分析は何か、ケースバイケースでKPIを立ててシンプルな運用に落とし込んでいくことが重要」と答え、カンファレンスを締めくくりました。

これからの広告業界で働く人材には、目の前の一人ひとりを尊重する姿勢が絶対に必要

「これからの広告業界で必要とされる人材とは?」をテーマに行われたカンファレンスには、電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門 部門長の安田裕美子が登壇。株式会社dof コミュニケーションデザイナー/代表 斎藤太郎氏、PARTYクリエイティブディレクター/ファウンダー 中村洋基氏とともに、職域が拡張し続けている広告業界において、今後どういった人材が必要だと感じているか、これまでの経験や電通デジタルの取り組みも踏まえて持論を展開しました。モデレーターは株式会社NewsPicks Studios Business Growth Team Senior Editor 川口あい氏。

まず、「現在の広告業界を一言で言うと?」の質問に対して、全員が「過渡期」と回答。安田は「これまでは、クライアントが良いモノを作り、それを広告で広めれば、ある程度売れ行きが見込めた時代だったが、今はそれだけでは売れなくなった。クライアントはサービス業への拡張を余儀なくされており、その変革をサポートするために、電通デジタルも取り組まなくてはならない領域が拡張している」と補足。そのためには、広告に加えて、コンサルティング、SIer、デザインファームが担ってきた領域もカバーする必要があると答えました。

安田裕美子(電通デジタル)

安田裕美子(電通デジタル)

現在の広告業界における課題のひとつである「Z世代やミレニアル世代に対して、どうアプローチしていけばいいのか?」という問いに対して、安田は、2021年8月に設立した新部署「デジタルネイティブルーム」を挙げ[1]、デジタルネイティブ世代に特化した事業開発・マーケティングを専門的に行っていると紹介。「情報や考え方において、世代格差は大きい。若い世代へ向けたアプローチは基本的に彼らに任せ、我々はメソッドやリソースをバックアップしていく」と話し、デジタルネイティブ世代への対応強化の意気込みを語りました。

最後に「これからの広告業界に必要なスキルとは?」の問いに対して、安田は、2021年7月に合併した電通アイソバーのスローガン「As One, with Respect.」を引き合いに出しつつ、「リスペクトする力」と断言。

「システムやデジタルの仕事は、多様な人が持つ多様なスキルの掛け合わせ。しかもそれらを緻密に噛み合わせないとゴールに至らない。背景が違う者同士がひとつのチームで動くには、互いに目の前の一人ひとりを尊重する姿勢が絶対に必要」(安田)

その上で、「デジタルが得意というよりも、試行錯誤しながら勉強していく。新しい技術に対しても自分に置き換えて考えることができる」ことも、変化に富んだ時代の広告業界を生き抜くために大事な資質だと答えました。

企業がAIを活用し富を産むポイントはクリエイティビティ

2日目午後に行われた「続・AIが企業に富をもたらすには」は、昨年行われた同名カンファレンス「AIが企業に富をもたらすには」の続編。今年はメンバーを変え、電通デジタル デジタルストラテジー事業部 グループマネージャーの有益伸一、株式会社シナモン代表取締役社長CEO 平野未来氏、損害保険ジャパン株式会社ビジネスデザイン戦略部課長 曽我祐樹氏、株式会社ZOZO NEXT取締役CAIO/株式会社ZOZO AI R&D推進本部本部長 野口竜司氏(モデレーター)が登壇。企業の成長戦略にコミットするAIへの期待と可能性について、熱いディスカッションを繰り広げました。

まずはウォーミングアップとして野口氏から「AIで生み出せる富とはどんなものですか?」という質問が投げかけられました。有益は「マーケティングとは『売れる仕組みを作る』こと。近年はその部分にAIがどんどん食い込んできており、価値を生み出すそうとしている。われわれが提供/支援するAIも『"売れる仕組みを作る"という"富"を作る』という点にフォーカスしていきたいと思って取り組んでいる」と答えました。

有益伸一(電通デジタル)

有益伸一(電通デジタル)

本題である「企業がAIを活用し富を産むポイントは?」の質問に有益は、「クリエイティビティ」と回答。

「このクリエイティビティは、発想力や想像力というニュアンス。デジタルマーケティング領域では、とにかく使ってみたいからという理由でAIなどの最新技術を導入したがるケースが少なからずある。しかし私は、エンドユーザーに対してどのような価値を提供するのかに主眼を置くのが、マーケターとしての王道だと思っている」(有益)

だからこそ、エンドユーザーに対して「何を届けるか」を明確にし、そのために「AIの技術をどう活用するか」を考えることが大事だと語り、その2つをうまく組み合わせるために必要なのがクリエイティビティであり、電通デジタルとしてもその点を非常に大事にしていると力強く語りました。

そのような意識のもと取り組んだ代表的な事例として、2020年に電通デジタル、ヤフー、PARTYの3社で取り組んだ「TEHAI」プロジェクトや、XAI(Explainable AI)への取り組みを紹介しました[2][3]。そして最後に、「最終的にAIが富を生み出すためには、それを使うマーケ―ター自身がAIを怖がらずに活用することが大事だ」と話し、共創意識を持って取り組んでほしいと呼びかけました。

3大プラットフォームが考えるSNSの今とこれから

2日目の最後に行われたカンファレンス「New Normalのコンテンツに求められること~発信者の気持ち」には、電通デジタル エクスペリエンス部門 ソーシャルメディア事業部 チーフクリエーティブプランナーの江草香苗がモデレーターとして登壇。フェイスブックジャパン株式会社からマーケティングサイエンスリードの倉迫有沙氏、Twitter Japan株式会社からマーケティングインサイト&アナリティクス シニアマネージャー JPKRリードの志賀玲子氏、TikTok For Business JapanからBrand Strategy Director, Global Business Marketing-Japanの廣谷亮氏を迎えて、3大プラットフォームが考える、SNSの今とこれからについて意見が交わされました。

江草はまず、それぞれのプラットフォームのスローガンを紹介しました。

  • Instagram「好きと欲しいをつくる」

  • Twitter「What's happening?(今日も何かが起きている?)」

  • TikTok「Inspire creativity and bring joy(創造性を刺激し、喜びをもたらす)」

各プラットフォームとも、こうした根本思想に則ってサービスを展開しているはずで、それを踏まえて進めていきたいと語り、カンファレンスが始まりました。

最初の質問は「3大プラットフォームのそれぞれの特性と今」。事前アンケートで3名のパネリストにあらかじめ回答してもらった「ユーザー像のイメージ」「盛り上がる話題」「影響力のあるユーザー」が紹介されました。それぞれ一般化されているイメージはあるものの、それとは別に、プラットフォーマー自身による解釈、イメージが紹介され、興味深い回答が続きました。

江草香苗(電通デジタル)

江草香苗(電通デジタル)

次に江草は、「コロナの影響で起こったトピックとは?」と質問。志賀氏はコロナ禍で生活者の暮らしが大きく変わったトピックのひとつに料理を挙げ、Twitter上でもそれに関する投稿が増えた実例を示しました。倉迫氏はコロナによって行動制限されたことで、DX化の流れにSNSも関わるようになってきたと話し、InstagramのVRが来店体験を提供し、売り上げにも貢献した事例を挙げました。廣谷氏は、生活者の生活様式が変わり、新しい情報を求めるマインドに変化したと話し、TikTokのおすすめ視聴の特色を解説。そのマインドの変化が「TikTok売れ」という事象を引き起こしたとして、話題になった事例を紹介しました。

3つめの質問は、「企業はSNSをどうマーケティングに活用すればいいのか?」。倉迫氏は、データドリブンで生活者のインサイトをしっかり理解することが大事と語り、志賀氏もデータの重要性を強調。ツイート量だけではなく、どんなセンチメント(感情)や言葉とともに語られているかを重視することが大事だとの見方を示しました。また、積極的に発信する人だけでなく、いいねやリツイートなどのエンゲージメントをする人など、裾野までデータ分析対象にすることで、本質的な実態を掴むことができるとも話しました。廣谷氏は、「おすすめ視聴」により今まで動かしにくかったブランドの潜在顧客を取り込んでほしいと語りました。

最後に、「New Normal『これから』のソーシャルメディア社会とマーケティング」と題して2つの質問を出しました。ひとつは「今後、SNSはさらに盛り上がっていくと思いますか?」。これに関しては、三者で微妙に認識の差が出ました。現在認識されている定義からは変容し、プラットフォームごとに独自の特性に特化/発展していくのではないかという意見がありました。もうひとつは「5年後、ソーシャルメディアと企業の関係はどうなる?」。それぞれのプラットフォームが考える未来像を聞いたうえで江草は、「ソーシャルメディアはさらに進化して、SNSの括りやプラットフォームの壁を超え、体験と購買とエンゲージメントが一体化した新たな存在になるのではないか」と総括し、SNSの概念がどう変化していくか、この先が楽しみだとして、カンファレンスを締めくくりました。

脚注

出典

1. ^ "「デジタルネイティブルーム」を新設". 電通デジタル.(2021年8月25日)2021年12月8日閲覧。
2. ^ "AI画像処理を用いたソーシャルプロジェクト 「TEHAI」が「2021年度グッドデザイン賞」を受賞". 電通デジタル.(2021年10月20日)2021年12月8日閲覧。
3. ^ "営業活動のアプローチ成功率を大幅改善". 電通デジタル.(2020年12月4日)2021年12月8日閲覧。