2021年09月09日

デジタルトランスフォーメーション

コラム

IoTを

※所属・役職はウェビナー開催当時のものです。

「今こそ求められる、"顧客中心のサービス企業"への変革 ビジネストランスフォーメーションに向けた実践知」と冠し、2021年6月21~25日に開催された電通デジタルの「BXウェビナーWEEK」。

6月24日の2回目は、IoTを活用した新規事業を創出したい方、生活密着型のサービス開発を検討されている方へ向けた「IoTを"Internet of LIFE"へ。生活密着型ビジネスづくり"3つの法則"」です。今回は開発しているAIペット型ロボット"Moflin(もふりん)"がCES 2021のBest of Innovation Awardを受賞するなど、IoT開発に豊富な知見を有するVanguard Industriesの代表取締役である山中聖彦氏を迎え、ビジネストランスフォーメーション部門 サービスイノベーション事業部のカンブリア ジョスランと勝谷さや香でお送りします。

生活密着型ビジネスづくりの"3つの法則"と「IoLスタジオ」が目指すこと

カンブリア ジョスランは冒頭、電通デジタルとVanguard Industriesが2021年6月に立ち上げたIoTに特化した新組織「IoL(Internet of Life)スタジオ」の設立経緯を紹介しました。

2021年6月― DD×Vanguard Industriesの共同組織「IoLスタジオ」

2021年6月― DD×Vanguard Industriesの共同組織「IoLスタジオ」

Internet of Lifeとは、生活密着型IoTのことです。カンブリアは日頃DX推進で各企業の支援をしながら、実際には利便性や効率を追求したIoTが多く、生活者が愛着を持てるIoTは極めて少ないと感じていました。生活者が愛せるIoTを作れば、それが企業と生活者の間により奥行きのある関係性を構築することができるのではないか。無機質なデジタル世界に温かい愛情を取り戻したいと、上記ミッションのコンセプトにたどり着きました。

「IoLスタジオ」を立ち上げた理由は、他にもあります。1つは生活者のライフスタイルが変化し、日常生活の中で求めるモノ・サービスの在り方も変わったから。2つ目は企業側もライフスタイルの多様化に対応するビジネスが求められ、深い生活インサイトを基にしたサービス開発が必要となったからです。

それでは生活者、企業の変化するニーズに応えるために、何故IoLは有効なのでしょうか?

今IoLに注目する理由

今IoLに注目する理由

1つはWebサービスには不可能なオリジナリティを生むことができるから。2つ目は、より生活に馴染むものが作れるから。3つ目は、過程の段階で深い生活インサイトを得ることができるからです。

しかしカンブリアは、IoTにはトレンドと課題があると指摘します。5Gの普及でIoT市場は大きく成長する見込みがある一方、2016年東京ゲームショウで披露された「卓球のラケットをIoT化したゲーム」やCES 2017のスマートホームロボットなど、IoTは話題になるものの普及しないプロジェクトがたくさんあるからです。IoTプロジェクトの60%は失敗する。このことは残念ながら、調査データでも裏付けされているのです。

出典:米Cisco社調査 https://newsroom.cisco.com/press-release-content?articleId=1847422

ここからは、なかでも成功している事例を紹介しましょう。

明かりを進化させたIoT

スマートフォンを通じて明かりを自由自在に調整することで、自分らしい暮らしを提供。最大50個のランプをコントロールできるブリッジとE26タイプのランプで生活シーンをカスタマイズできる。

歯磨きを進化させたIoT

利用者の口腔状態に合わせて磨き方をアドバイスするサービス。健康意識の高い人にワンランク上の歯磨き体験を提供。

日々の疲れやストレスを癒やすIoT Vanguard Industries AIペット型ロボット「Moflin(もふりん)」

動物の赤ちゃんのようなモフモフの毛に覆われ、可愛らしい動作と鳴き声で飼い主に癒しを与えてくれる。感情を持ったAIが搭載されているため、飼い主の接し方が個性となり、自分だけのペットのように愛着を感じられる。

カンブリアは、成功した事例には共通する3つの法則があると言います。

成功事例に共通している

成功事例に共通している"3つの法則"

1つ目は、日常生活の明確なペインポイントを解決していること。2つ目は、ユーザーの気持ちに寄り添っていること。3つ目は、ユーザーが飽きないように体験をアップデートしていることです。

「IoLスタジオ」が行うサービスクリエーションのプロセスとは

次に勝谷さや香が登壇。勝谷は、電通デジタルとVanguard IndustriesがどのようなプロセスでIoLサービスの創出を行うかについて、具体的に解説しました。まず「IoLスタジオ」のサービスクリエーションは下記の手法で行います。

モノ・サービス誕生までの3ステップ

  1. IoLのコンセプトリサーチ

  2. プロトタイピング・PoC(プルーフ・オブ・コンセプト)実証実験

  3. 本格システム開発・グロースハック

上記3ステップのうち、勝谷は電通デジタルに質問が多く寄せられる「コンセプトリサーチ」のフェーズに焦点を当てました。

コンセプトリサーチは下記のフレームワークでサービスデザインを行います。全部で4工程です。

①IoLのコンセプトリサーチ

①IoLのコンセプトリサーチ

まずは定めたターゲットの生活分析を行い、ライフジャーニーを描きます。この段階で注目するのは、日常で発生する生活者のペインポイントとその時の気持ち・感情です。次はコンセプト作りです。コンセプトを作る際は、生活のペインポイントをポジティブな気持ちに変えることを念頭にアイディエーションを行います。

そしてユーザー体験の必然性などを軸に、たくさん出たアイデアから徐々に絞り込んだ後は、選別したアイデアのユーザー体験をアップデートするためのシナリオを考えていきます。最後にビジネスモデルを検討し、収益のシミュレーションを行うのです。

次に勝谷は、「コンセプトリサーチ」段階でのアウトプット例には2つあると語ります。

1つは「オフライン×オンラインを融合したユーザー体験」。一般的に物理的なデバイスと、アプリやWebサイトといったデバイスに連動するデジタル体験の掛け合わせになることが多いでしょう。デバイスはモノとしてのオリジナリティを出し、ユーザーに寄り添うことで、デバイス自体がユーザーの自己表現の1つとなります。またアプリやWebサイトといったデジタル体験では、ユーザー体験の継続的なアップデートや、ユーザー分析によるパーソナライズ化が行われるでしょう。これらが組み合わさると、他と差別化できる生活密着型のユーザー体験となります。

2つ目は「IoTに特化したビジネスモデル」です。IoTサービスを提供する際、アプリやWebサービスに比べ、検討すべき要素が多岐に渡ります。また製造、流通、小売といったビジネス体制も複雑化します。よって独自の「IoTのビジネスモデルの設計」や「実現する技術構成やサービス体制の設計」が必要になり、同時に「収益シミュレーション」も行うのです。

収益シミュレーションにおいては、サブスクリプションサービスを検討する企業が多いでしょう。しかしこれからのサブスクリプションサービスで成功するには、単なる定額制を超えたサービス設計が必要です。電通デジタルでは、パーソナライズ型のサブスクリプションを「サブスクリプション3.0」と位置付けています。

  • サブスクリプション1.0〈一律型〉

    モノやサービスの定額制利用やまとめ買い。生活者の嗜好は反映されず。
    例)消費財の定期購買 飲食店のサブスクリプションサービス

  • サブスクリプション2.0〈セグメント型〉

    利用ケースに合わせ、3つのパッケージプラン(エントリープラン、標準プラン、上位プラン)があり、製品やコンテンツのアップデートがある。
    例)ニュースメディア BtoB、BtoCのクラウド系サービス

  • サブスクリプション3.0〈パーソナライズ型〉

    ユーザーの利用状況に合わせてサービスがパーソナライズされ、アップグレードまたはダウングレードされる双方向型、提案型のサービス。提供サービスがデジタルサービス、IoTであること、或いはオンラインで利用状況データを取得する仕組みが必要。
    例)IoTハード×ソフトサービス コンサルティングサービス

上記の流れでコンセプトリサーチを行った後は、プロトタイピングとPoC実証実験のフェーズに入っていきます。

② プロトタイピング・PoC

② プロトタイピング・PoC

上記のプロトタイプの部分に「Moflin(もふりん)」が載っているように、デバイスはもちろんのこと、アプリやwebサイトなどのオンライン体験のプロトタイプも開発します。PoCではユーザーに実際に使っていただく際に、非公開で実証実験を行うことも可能です。ユーザー使用期間後は、インタビューなどの定性分析と利用データなどの定量分析を行い、コンセプトのブラッシュアップを行います。コンセプトやビジネスモデルのブラッシュアップが完了した後、いよいよ本格的なサービス提供に必要なシステム開発に入っていくのです。

IoTとデータビジネスの関係性

大手のクライアントにIoLを提案する際に「データビジネスに貢献できるか」と聞かれることが多いです。IoLをコンセプトとしたサービス提供のメリットは「深い生活インサイトを取得できること」。カンブリアは、取得できるインサイトの具体例は主に下記のものと答えます。

生体情報 心拍 血圧 呼吸 血中酸素 体温 DNA
フィットネス 歩数 活量 歩く速度
カメラ 周辺環境 人物 ARマーカー 表情 ジェスチャー
位置情報 入店などの正確な位置情報

IoTにまつわるデータ取得の特徴は、何らかのセンサーを使うことで奥行きのある深いデータが取れることです。例えば生体情報取得のセンサーを使った場合、心拍や血圧、呼吸などの情報が取れることで、ユーザーの深い健康状態を把握することができます。どのセンサーを利用するかで取得データが変わりますが、データの幅が広いため、Webサービスよりも奥行きのある内容が取得できると思います。

これらIoTから取得するデータの活用方法としては、自社の1stパーティデータの中にある「ユーザーのオフライン生活のデータソース」として扱うことが多いでしょう。IoTデータを他のデータと組み合わせて分析したり、可視化したりするのです。

例えば生体情報を取得するセンサーを使った場合、どのようなデータ活用があるのでしょうか。

生体情報を生活インサイトした場合のデータ活用

  1. 健康管理のデジタルサービスの開発(例:アプリ提供)

  2. 健康食品のレコメンド販売(例:ECサイト売上げアップ)

  3. デジタル広告のセグメンテーション(SNS広告のCTR〈クリック・スルー・レイト〉改善)

カンブリアは上記3つのようなデータ活用が考えられると言います。実際には、個々の企業が抱えるニーズとビジネス課題に合わせて出口を工夫する形で進めていくと締め、ウェビナーを終了しました。

【執筆 横山由希路】

配布資料抜粋版ダウンロード

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