2021年08月03日

デジタルトランスフォーメーション

コラム

自社が向き合うべき

※所属は記事公開当時のものです。

社会的不満が多様化する現代において、"いかに社会的不満を解決し、社会を豊かにする顧客体験を創造できるか?"が、企業に強く求められる時代となりました。社会のDX/CX変革の波も加速する中、"その変革によって、自社がどんな社会課題を解決し、社会に対してどのような存在意義(パーパス)を発揮できるのか?"を考えることの重要性が高まりを見せています。

そうした流れを受け、Fu-man insight lab® は、企業が向き合うべきSocial Pain(社会的不満)を探査し、自社・生活者・社会の「三方良し」なDX/CX変革を実施するための情報ツール「Social Pain Compass」を公開しました。


※ 上記はサンプル画像のため、具体的な"Social Pain Keyword"を、伏せて掲載しております。

本連載(全4回)では、"Social Pain"探査テーマの4方位である、「暮らし」「人生」「社会」「地球/自然」から1方位ごとに、関連する"Social Pain"を取り上げる予定です。第1回である今回は、「暮らし」の方角にフォーカスを当て、「働」「食」「住」「遊」の4つの"Social Pain"探査テーマごとに、"Social Pain Keyword"をご紹介します。

テーマ「働」で注目の"Social Pain":キャリア迷子

「働」の"Social Pain探査テーマ"の中では、「広がる仕事観ギャップ」「就労弱者」「起業小国」「労働力不足」などが、特に目立った"Social Pain"として挙げられます。その中から、「キャリア迷子」を取り上げます。

Keyword No.178「キャリアコースの多様化プレッシャー」

テクノロジーの進化によりあらゆる環境の複雑さが増し、不確実性が高く将来の予測が困難なVUCA(ブーカ)時代。職務内容や報酬などが明確に規定された「ジョブ型雇用」をはじめ、1社で定年まで勤め上げる日本式の終身雇用(メンバーシップ雇用)とは異なる海外発の新しいワークスタイルを、生活者や企業ともに注目しています。


働き方改革の流れの中で、企業の"副業解禁"の機運も高まっています。そんな"キャリアスタイル変革"の真っ只中で、約6割のビジネスパーソンが「新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、キャリア観が変化」し、そのうち9割以上が「企業に依存せずに、自律的にキャリア形成する必要がある」と考えているとする調査結果も出てきました[1]

こうしたキャリアコースの多様化に伴って、キャリアアップ志向も高まりを見せる一方で、要求されるスキルと現在の自分の能力とのギャップに不安と焦りを抱え、プレッシャーを感じる人たちも散見され始めています。

現在、ジョブ型雇用導入に積極的な企業は15%にとどまり[2]、企業側も日本型人事との融合が課題既存雇用制度との衝突を懸念している段階です。今後の変化に対応できるよう、新しい形態の雇用・キャリアスタイルを恐れない意識を装備しておくことが必要となりそうです。

そんな中、難関資格への挑戦をサポートする「オンライン資格取得学習ツール」、転職前に企業理解や腕試しができる「社会人インターンシップ」、よりカジュアルな転職や多種多様な業界との人脈作りに活用できる「ビジネスマッチングアプリ」など、"Social Pain"「キャリア迷子」の解消を目的としたサービスが次々と立ち上がっています。

スキル向上、企業理解・自己理解のサポートや、転職や人脈作りのハードルを下げる仕組み作りを提供することによって、"変化"に委縮しない、"自分自身のためのスキル"を育む機会が多く持てる社会へと変わっていきつつあります。

テーマ「食」で注目の"Social Pain":食ダイバーシティへの理解の遅れ

「食」の"Social Pain"探査テーマで主な"Social Pain"として挙がったのは、「迫るジャパンフードクライシス」「飽食時代の栄養不足問題」「隠れご飯弱者」「食が生むヘルスリスク」などです。その中から、オリンピックに関連して関心が高まっている、ダイバーシティ社会における「食ダイバーシティへの理解の遅れ」を取り上げます。

Keyword No.186「多様化する食主義への対応の遅れ」

近年、ハラールやヴィーガンなど、宗教・信条に基づく食主義を持つ人の割合が増え[3]たことや、食物アレルギーや生活習慣病を持つ人の増加などにより、食に制限を持つ人が日本国内でも増えています。しかし、ハラールやヴィーガン認証マークの付いた商品は少なく、成分表示もわかりにくいため、各人の食主義に沿った食品選択は困難な状況にあります。


多様な食スタイルに対応できないことは、観光客を減らすなど、ビジネスチャンスを失うことにも繋がるため、飲食店やメーカーのより一層の対応が求められています。


また、災害時に避難所で提供される非常食は、保存性能や確保可能性が優先されがちで、ハラールやヴィーガン、さらにはアレルギー保持者や特定疾病患者など、マイノリティへ配慮したものはほとんどありません。世界と比較しても多様化する食主義への対応は遅れており、特に、災害大国の日本だからこそ、非常食についても早急に安全な選択肢の提供を行うことが課題になっています。


食品メーカーや飲食店が「ヴィーガン・ベジタリアン対応の商品開発」に取り組むほか、食べられないものを登録・共有することで食品表示の読み解きや飲食店と連携できるサービス、店頭の商品を判定できるアプリなど、情報提供の面でも"Social Pain"「食ダイバーシティへの理解の遅れ」解消に向けて支援が進みつつあります。

消費者に向けてはマークやアイコン、画像認証を用いて含有食材が一目でわかるように情報を伝達し、飲食店に向けてはデジタル技術を用いて簡単に食主義への対応ができるようにサポートしていくことなどによって、食に制限を持つ人への理解が深まり、誰もがどこでも安心して食選択ができる社会が実現されてほしいと思います。

テーマ「住」で注目の"Social Pain":在宅ワーカートラブル

「住」のテーマで出てきた"Social Pain"には、「住まいの安全基地化プレッシャー」「イエナカ"働・学"スペース不足」「リフレッシュメント消失」などがあります。その中から、コロナ禍においてテレワークが普及したことで見えてきた、"Social Pain"「在宅ワーカートラブル」を取り上げます。

Keyword No.207「職住一致ストレス」

テレワークの普及によって通勤ストレスなどから解放される一方で、リモートワークを行う人の84.3%がこれまでとは違った新たな悩みを抱えているという調査があるように[4]、自宅が職場となることで新たなストレスが生じています。


テレワークの不満第1位は「オンオフの切り替えがしづらい」[5]。自宅を仕事場にすることでリラックスできる場もなくなっていることが伺えます。「仕事専用のスペースがない」など仕事環境に関する不満も上位にあることから、これまでにない新たな職場ストレスが発生していることがわかります。


また、在宅勤務による孤独感から休職に至るケースも発生しています。特に、ニューノーマル社会に対応してテレワークを継続する企業にとっては、こうした"Social Pain"への対応は待ったなしです。

こうした"Social Pain"への対策として、気分転換や運動不足解消のために、オンラインでエクササイズコンテンツの提供や心理的ケアを行うサービスが台頭し始めており、新たな福利厚生として導入する企業が増えています。また、自宅と職場を分離でき、社員が整った環境で集中して働けるように、ワーケーションやシェアオフィスを導入する動きも広まっています。

IoT/スマート家電を駆使し、自宅内でストレスを解消する支援が必要です。そのためには、toCにとどまらない、将来的にはtoBも視野に置いたオンラインコミュニケーションによって、心身の健康維持に伴走する仕組み作りが求められていくはずです。さらには、余剰資源の有効活用を切り口に、より多くの人が気軽にワーケーションを利用することができる仕組み作りに取り組むことで、気分転換から暮らし方の変更まで、フレキシブルな職住環境を享受できる社会へなっていきそうです。

テーマ「遊」で注目の"Social Pain":子ども時代の経験消失

「遊」のテーマでは、「住遊び弱者」「デジタル世代の新・遊びリスク」「低下する次世代文化力」「ニューノーマルエンタメ課題」などが、"Social Pain"として挙がっています。その中から"Social Pain"「子ども時代の経験消失」を取り上げます。

Keyword No.218「"遊び経験値" の家庭格差」

「教育格差」という言葉が叫ばれて久しいですが、昨今、教育熱心な家庭や貧困家庭において「子どもの遊び経験」が少ないといった家庭格差が生じ、問題として露呈し始めています。


OECDによると日本の子どもたちはテクニカルな意味での学力レベルはトップクラスですが、大志や自己肯定感などの非認知能力が弱いと評価されています[6][7]。非認知能力は、自分で物事を生み出し、考えることが求められるVUCA時代に求められる課題解決力です。その力を育むために重要なのが、子ども時代の「遊び経験値」なのです。


遊び経験の不足は「遊び負債」とも言われ、自発性を削ぐ形で育てることで大きく積み上がります。多量の「遊び負債」は、喜びを見出す感性を損ない、自発性や柔軟性、記憶力などの脳や体の機能、生産性、悲しみを乗り越える力など、人格形成の広範に影響をきたすとされており、特に幼児教育の現場で注目される課題のひとつです。


特に海外では、成績偏重な人材採用基準を見直す動きもみられ始めていることから、非認知機能を向上させる子ども時代の遊び経験値の重要性が議論され始めています。

そんな中、自宅でひとりで過ごすことの多い子どもたちに向けて、放課後にさまざまな遊びや体験の機会を提供する取り組みや、遊び経験によって空間認識能力を高めるシステムを構造的に盛り込んだ保育園などが、"Social Pain"解消に向けたサービスを展開しています。また、遊びと学びを融合したコンテンツや遊び経験を提供するサービスが出現し始めており、こうした「エデュテインメント」と呼ばれる、遊びながら学びを得ることを目的とした、新しいエンターテインメント領域にも注目する必要があります。

趣味や教養の機会を安価に子どもたちに提供したり、つい遊んでしまう"遊びのアフォーダンス"を子どもたちの公共の場に導入することで、家庭の所得や教育方針を問わず、子どもたちが"遊ぶ権利"を行使できる社会の実現に近づけるでしょう。

自社・生活者・社会の「三方良し」なDX/CX変革を起こしていく

生活者、そして社会に真に望まれる変革を起こすためには、「その変革によって、自社がどんな社会課題を解決し、社会に対してどのような存在意義(パーパス)を発揮できるのか?」を考えることこそが重要だとFu-man insight lab® は考え、企業が、自社・生活者・社会の「三方良し」なDX/CX変革を起こしていくための支援をさらに強化していきます。

今回は4つの"Social Pain Keyword"について簡単に紹介しましたが、それ以外の"Social Pain Keyword"も含めて編集された情報ツール"Social Pain Keyword Book"では、"Social Pain Keyword"ごとに「ペインの概況」と「ペイン解消に向けた動き」について、"Social Pain"の実態を詳細にまとめています。さらに、15個の探査テーマごとに"社会的不満"のカテゴリーを分類・整理した【1】Social Pain Category Mapシート、各カテゴリーに含まれる社会的不満キーワードを示す【2】Social Pain Keyword Mapシート、そして各キーワードに関連するワードの総ツイート数をランキング化した【3】Social Pain Rankingシートもあります。これらの情報シートを用いることで、スピード感を持って企業の業種やターゲット層と関連性の高い社会的不満の探索を支援いたします。

「Social Pain Compass」を活用したサービスの詳細情報はこちら

「Social Pain Compass」の紹介資料DLお申し込み

「Social Pain Compass」の紹介資料です。
ダウンロードご希望の方は、こちらからご登録ください。

「Social Pain Compass」に関する、より詳細な情報については下記までお問い合わせください。
お問い合わせ先:social_pain_compass@group.dentsu.co.jp

"ヒューマンの不満"に迫る、Fu-man insight lab®とは?

「人々(ヒューマン)の不満に迫れば、新しい価値の種が見えてくる。」をスローガンに、昨今の急激な生活変化に伴い噴出した人々の不満の探索から、新たなCX戦略の構築を支援するコンサルチームです。
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脚注

出典

1. ^ 新型コロナウイルス感染症拡大をきっかけに、約6割がキャリア観に変化 うち9割以上が「企業に依存しないキャリア形成が必要」と回答https://www.bizreach.co.jp/pressroom/pressrelease/2020/0430.html
2. ^ 【ワークスHI調査レポート】「ジョブ型」に関する大手119法人意識調査 76.5%が職務や役割の定義を実施/検討、日本型人事との融合が課題|株式会社Works Human Intelligenceのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000049399.html
3. ^ 第2回日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査 by Vegewel https://vegewel.com/ja/style/vegetarianstatistics2
4. ^ リモートワーク「悩みがある」は8割 - その内容は? | マイナビニュース https://news.mynavi.jp/article/20200709-1129214/
5. ^ 「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査発表!~テレワーク継続時には、48%が間取り変更を希望し、24%が住み替えを希望している結果に~|リクルート住まいカンパニー https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruit-sumai/press/2020/05/4824.html
6. ^ 学力レベルについて OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018)https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf (P12)
7. ^ 非認知能力の低さについて https://www.oecd.org/pisa/publications/PISA2018_CN_JPN_Japanese.pdf(P.1)