2021年06月08日

デジタルトランスフォーメーション

コラム

マーケティングDXによる顧客体験リノベーション

※所属・役職は記事公開当時のものです。

withコロナ期の現在、激しい変化の中で新たなビジネス課題への挑戦に迫られています。そのような時期である2021年6月1日~4日に「Salesforce Live: Japan」がオンラインで開催されました。6月1日には、電通デジタル CRMソリューション事業部の内木洪介が登壇。顧客行動や企業側に求められるニーズが変化・多様化する中、どのような"顧客体験リノベーション"が必要かについて、ユースケースを含めて具体的に解説しました。

DXとは「お客さまにもっと喜んでもらうための仕組みづくり」

内木はまず、各企業で加速するDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進状況、その拡大する市場規模について紹介。さらに「今後、DXをどのように捉えるとよいのか」について解説しました。

DXの推進状況

電通デジタルで行った調査によると、2020年度の段階で74%の企業がDX領域に着手。その割合は増加傾向にあります。また、昨年からのコロナ禍によって、50%の企業がDXの取り組みを加速させたと回答していました。

DXの市場規模

富士キメラ総研の調査「2020デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」によると、DX領域への投資金額をベースにした市場規模は2019年度が約8,000億円だったものに対して、2030年度には約3兆円まで成長する見込みで、その規模は2019年度比で3.8倍になります。

こうした勢いのあるDXですが、その形態、領域は多岐に渡ります。たとえば、RPA(ロボティクプロセスオートメーション)でのオペレーションの自動化・効率化もDX、サブスクリプションモデルを利用したビジネスモデルの抜本的な改革もDXです。そのため、DXと聞いて連想されるイメージも、人によってさまざまなのではないでしょうか。

経済産業省のDX推進ガイドラインに書かれているDXの定義のポイントは、「データとデジタル技術を活用して、競争上の優位性を確立すること」。つまり、「DXとは他社と比べて優位性を確立すること」で、その手段として「データベース、デジタル技術を活用する」と定義されています。

内木は、こうした企業戦略視点での定義とともに、さらにお客さまの視点に寄り添ってシンプルにDXの定義を考えると、それは「お客さまにもっと喜んでもらうための仕組みづくり」であり、またDXの目的そのものでもあると強調しました。

そもそもDXとは?
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DXに取り組む際、「それは本当にお客さまに喜んでもらえることなのか」という視点を重要な判断基準にすることで、結果として自社の優位性が担保され、収益性の改善につながると考えています。

withコロナの今だからこそ取り組みたい「顧客体験のリノベーション」

続いて内木は、コロナ禍での環境や行動の変化に伴い、データを活用した顧客理解、顧客接点のデジタル化による新しい顧客体験の創出といった「マーケティングDX」が加速していることを紹介。さらに、withコロナの先のNew Normal(ニューノーマル)に向けた「顧客体験のリノベーション」の重要性について語りました。

加速するマーケティングDX

昨年来のコロナ禍でECの利用機会が増加するなど、お客さまのデジタルシフトが進んでいます。また、感染対策の必要性からお客さまと企業のディスタンスも広がりました。お客さまとの対面機会が激減したことで、今まで以上にデータを使ってお客さま理解を深めなければならなくなったのです。

ただし、「ここで強調したいのは、こうしたデジタル化のトレンドは、コロナ以前からあったものが、結果としてコロナ禍で加速したということだ」と内木は語ります。だからこそ、「各企業でのスピーディーな変革」が求められ、今までにも既に着手していたマーケティングDXを加速させる状況が生まれています。

withコロナ期はリノベ―トを行う絶好のタイミング

コロナ禍を振り返ると、2020年1月、2月のコロナ困惑初期には一過性の非常事態という認識が一般的でした。しかし、4月以降から少しずつ「withコロナ」という表現が用いられるようになり、コロナを前提に、この状況といかに共存していくか、順応していくかといった視点が重要になりました。

内木は、withコロナ期の現在を、「この先のbeyondコロナ期におけるニューノーマルな社会へと向かう模索期間」だとし、「順応していくための投資をする絶好のタイミングにある」と言います。価値観が多様化する中で、新しいコミュニケーションないしはプロダクトを通じて「これまでの常識、慣習の枠を越えた顧客体験をリノベートしていく」、その必要性を語りました。

withコロナ社会の、New Normalに向けて
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これまでの顧客体験の変遷を辿ると、従来は、マスプロダクト/サービスを提供するにあたり、顧客体験を支えるコミュニケーションの中心はテレビCMをはじめとしたマスコミュニケーションでした。しかし、提供するマスプロダクト/サービスは変わらなくても、一人ひとりのお客さまが商品にたどり着くまでのストーリー、ニーズはそれぞれ異なっています。そこに即してお客さま一人ひとりに寄り添った1to1コミュニケーションを提供していくことで、顧客体験はより進歩してきました。

内木は、「そう遠くない将来に、マスではなくパーソナライズドプロダクト/サービスが普及していくでしょうが、今重要なのは、お客さま一人ひとりの状態、ニーズを捉え、1to1コミュニケーションを通じて、顧客体験をいかにリノベーションしていけるかだ」と言及しました。

顧客体験リノベーションでNew Customer Engagementを確立

では具体的に、マーケティングDXによる顧客体験リノベーションをどのように行っていけばよいのでしょうか?

多様化するデジタル接点、複雑化するデータ統合といった状況下での課題としては、一貫したコミュニケーションができていない、仕組みそのものが整っていないといったことが考えられます。しかし内木は、こうした仕組みの構築自体を課題として目的化するのではなく、「結果として機会損失が発生していないか」といった視点、「DXの仕組みによって何が実現できるのか」に目を向けるべきだと強調します。

「お客さまにもっと喜んでもらえるような仕組みになっているのか」、その点を意識したツールの導入、仕組みの構築を進めていくことが重要になると考えています。そのうえで内木が顧客体験リノベーションの考え方として提案したのが、「New Customer Engagement」の確立であり、それは、「すべてのお客さまとあらゆる接点でつながり、一人ひとりに寄り添った顧客体験の創出をしながら、関係を深くしていくハブ構想」です。

これは、一人のお客さまを起点にしてデータを統合し、柔軟にデータを集めていくことで、さらに理解を深めながら、個々に寄り添ったコミュニケーションを提供していく構想になります。いまや当たり前の考え方とも言えますが、内木の提案でこれまでと違った観点は、「マーケティング部署で使う潜在顧客情報」だけでなく、「コンタクトセンターでの応対履歴情報」、「営業部署などがもつ見込み/既存顧客情報」もつなげていく点です。

真の306°顧客理解を実現する仕組み
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「こうした真の360°顧客理解を実現する仕組みを作り、シームレスに各チャネルでコミュニケーションにつなげていくという考え方の統合がキーになる」と、内木は実現する際のポイントを語りました。

たとえば、ある企業の商品やサービスに対する問い合わせをする際に、事前にメールでやりとりした情報を再度電話でも説明し直さないといけない、場合によっては部署を跨いでたらい回しにされて嫌な気持ちなることは少なからずあるのではないでしょうか。企業側にとっては部署や管轄が違うので「仕方のないこと」であっても、お客さまには関係のないことです。

主なマーケティングDXユースケース

次に内木は、「New Customer Engagement」によって、具体的にどのようなことが実現できるのか、4つのケースを取り上げて解説しました。

主なマーケティングDXユースケース
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ケース1 データ活用基盤強化 統合顧客DB構築/活用

内木が1つ目のケースとしてあげたのは、お客さまに関するデータを統合して、そのデータを活用しながら、1to1 コミュニケーションにつなげていく「データ活用基盤強化」の例でした。

たとえばSalesforce Customer 360 AudienceのようなCDP(顧客データプラットフォーム)ツールを活用することで、お客さまに関するデータを統合、管理することができます。この統合顧客データベースのデータをもとにお客さまに見込度を推し量るアンケートメールを出し、そのアンケートの回答内容やこれまでの情報を加味したうえで見込度合いを判定。その見込度によって、アクションを出し分けます。見込度が高いお客さまには、営業と連携してオンライン商談を勧め、見込度がそれほど高くないお客さまには、興味喚起を促すメールを出すなど、お客さまの今の検討状況、状態に対応したシームレスなコミュニケーションが実現できます。

また、メールが届かないお客さまに対しては、LINEでコミュニケーションをしていくことも考えられます。こうした複数チャネルを組み合せてお客さまの状態や嗜好に応じたコミュニケーションを行うことを「シナリオコミュニケーション」と呼びますが、Salesforce Marketing Cloudをうまく活用すれば、ここであげた例も自動化しながら施策を回すことが可能になります。

データ活用基盤強化
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ケース2 オンライン商談/在宅コンタクトセンター 非対面接客強化

ケース2は、オンライン商談、在宅コンタクトセンターといった仕組みをうまく活用することで、営業活動をスムーズに行うことができる例です。たとえば、先ほどの例のように見込度の高いお客さまにオンラインでアポイントを打診し、隙間時間にオンライン商談を行うこともできます。

さらに、お客さまの属性情報、これまでの施策結果、サイト内での行動履歴をSalesforce Service Cloudに入れ、どこに興味があるのか、どういったコンテンツを閲覧してきたかといった情報を連携すれば、お客さまの関心に合わせた最適プランを練ったうえでオンライン商談に臨めます。

非対面接客強化
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ケース3 販売チャネル強化 ECサイト/D2Cの拡充

ECサイト、D2Cプラットフォームの拡充をすることで、新たな販売チャネルによる新たな顧客体験の提供も可能となります。Salesforce Commerce CloudというECプラットフォームをうまく活用することで、こうした新しい仕組みを構築することも可能です。また、Salesforce Marketing CloudのInteraction Studioというオプション機能を活用することで、サイト内でのWeb接客も行えます。

たとえば、あるECサイトにお客さまが訪れた際、これまでのサイト内行動履歴や会員情報を活用した「あなたにおススメの特集」というポップアップを出し、その人の関心事に応じた導線やコンテンツを提供することによって、あたかもその人だけのサイトのような体験を提供できるようになります。

販売チャネル強化
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ケース4 PDCAスピード強化  MIでの経営/マーケティング指標の可視化

内木が4つ目として取り上げたのは、顧客体験という文脈からはそれますが、PDCAサイクルの高速化を実現する例です。

デジタル接点が増えることで、いろいろなマーケティング指標が増え、それらをレポーティングして管理することは煩雑化しがちです。そこで、SalesforceのMarketing Intelligence toolであるDatorama、もしくはBIツールであるTableau(タブロー)を活用することで、経営判断やマーケティング施策評価に必要なデータを一元管理することが可能になります。そして、ダッシュボードで可視化を行うことで、「レポーティングのための時間を抑え、経営判断、コミュニケーションのPDCAを早めることができる」と語りました。

PDCAスピード強化
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ここまでに取り上げたようなケースを実現するNew Customer Engagementソリューションは、いくつかのSalesforceのプロダクトを組み合わせて構成することができます。お客さまに、一連の購買ファネルの中でパネルにおいて一貫してスムーズな顧客体験を提供していくうえで、こうした複数のクラウドソリューションを組み合わせることが今、非常に重要なポイントになっています。

DX推進における3つのポイントとDentsu DX Ground

内木は、DXの推進において3つのポイントがあると言います。

  1. 経営層を巻き込んだ戦略立案とコミットメント

  2. 戦略を実現するための一貫性をもったIT基盤構築

  3. IT基盤の活用/運用/定着、それを推進していく人材の育成

なかでも2つ目の仕組みの構築は、「複数のクラウドソリューションを組み合わせたマルチクラウド化」「既存システムとの複雑なインテグレーション」といった課題とともに、年々、大規模化・複雑化している傾向にあります。それに伴い、専門人材の量的・質的な不足も顕在化してきました。

そこで内木は、これらの課題、DX推進ポイントをふまえた支援を可能とする専門組織「Dentsu DX Ground(電通DXグラウンド)」を紹介しました。これは、クラウドインテグレーションに必要なビジョン構築や新ビジネス/サービスモデルの立案に強みを持つ電通デジタル、先端テクノロジーを活用した多様なITソリューションを提供しているISID、ユーザーエクスペリエンスのデザイン、つまりCX領域に強い電通アイソバーの3社による、電通グループの横断組織。戦略立案のコミットメント、DX推進人材の育成サポートはもちろん、一番の強みは「一連の仕組みの構築体制」を持ち合わせている点にあります。

Dentsu DX Ground とは?
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最後に内木は、「Dentsu DX Groundという組織を通して、本当にお客さまに喜んでいただくための仕組みづくりを支援していきたい」と力説し、セミナーを締めくくりました。

(本記事は、2021年6月1日に開催されたオンラインセミナー「Salesforce Live: Japan」で発表された内容を再構成したものです。)