2021.05.11

本気の人材育成!「XPカレッジ」とはどのような取り組みか?

デジタル時代のマーケティング研修プログラムについて、運営メンバーと受講者に聞いた

人こそが、会社にとってもっとも大事な資産である――そのような信念に基づき、電通デジタル エクスペリエンス(XP)部門では、教育/研修施策の一環として、部門メンバー向け研修プログラム「XPカレッジ」を開催しています。

XPカレッジの講座は、クライアントに向き合う上での基礎となる課題解決アプローチから、戦略設計、調査、企画、制作、分析からクライアント視点、キャリアマネジメントまでを対象として幅広く展開。これまでの約67講座で、のべ約2,300名が参加しました。

XPカレッジ設立の背景や目的、内容、成果などについて、運営を担当する2名と、受講者の2名に話を聞きました。

※所属・役職は記事公開当時のものです

株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門
ビジネスディベロップメント事業部

山能貴輝

株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門
ビジネスディベロップメント事業部

小野沢権悟

株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門
グロースコンサルティング事業部

板野千咲

株式会社電通デジタル
エクスペリエンス部門
オウンドメディアプランニング事業部

波多野光

XP部門の人材育成を目的として、2019年に開始

――XPカレッジを立ち上げた目的と経緯を教えてください。

小野沢 XPカレッジは、エクスペリエンス部門(以下、XP部門)に所属するメンバーを対象にした成長支援/人材育成プログラムで、2019年から実施しています。XP部門は2018年10月に、複数の異なる専門領域を担当する3つの部門を合併して誕生した部門で、合併当初から200名ほどの大所帯でした。

異なる文化や背景、専門領域を持つ部門が1つになることで、部門として担う守備範囲が広くなるため、まずはメンバー全員の知識のベースアップが求められました。XPカレッジは、そうした課題解決のために生まれたプログラムです。

山能 発足当初のXP部門では、「ストレッチ」という概念を掲げていました。ストレッチとは、「現状の実力より難易度の高い目標や主務としている領域外にチャレンジすることで、自己成長をしていこう」というスローガンです。ストレッチを体現できる人材こそが、部門として求められている人材であり、そうした人材の育成が急務でした。

XPカレッジは、そうした課題解決の手段であり、部門全体に成長意欲を高く持ち続ける意識を作り上げるための象徴的な取り組みでもありました。

小野沢権悟(左)、山能貴輝(右)

――XPカレッジの運営はどの部署が担当しているのでしょうか?

XP部門ビジネスディベロプメント事業部(以下、BD事業部)が担っています。BD事業部の目的は、XP部門で働くメンバーの成長をサポートすることで、部門の売り上げアップに貢献すること。ひいてはそれが、プロとしての専門性を磨き、クライアントへの提案力を上げ事業成果を上げていくという好循環になると考えています。リード、教育・研修、PR、アカウントの4領域でさまざまなサポートメニューを展開しており、教育・研修に関する取り組みの一つとして、XPカレッジを運営しています。

――カリキュラムはどんな内容なのでしょうか?

山能 開講当初のカリキュラムは、キャリアコンサルティング有資格者と、事業会社のマーケティング担当経験者が厳選して策定した素案をベースに、部門メンバーに「どういった講座を受けてみたいか?」アンケートをとり、希望の多かった内容を中心に組み立てました。

以下は、2019-2020年に実施されたカリキュラムの概要です。クライアントに向き合う上での基礎となる課題解決アプローチから、戦略設計、調査、企画、制作、分析からクライアント視点、キャリアマネジメントまで、クライアントサービスを提供する上で本当に必要なデジタル時代のマーケティングを幅広く網羅したカリキュラムとなっています。

  • 基本(課題発見ワークショップ)
  • 広告(デジタル広告の基礎)
  • リサーチ/分析(ユーザビリティ調査など)
  • プランニング/思考法(カスタマージャーニー、ペルソナ策定など)
  • クリエーティブ/制作(クリエーティブアプローチ論など)
  • Webサイト/アプリ(ECプラットフォーム、ヘッドレスコマースなど)
  • プロジェクトマネジメント
  • キャリア(VUCA時代のキャリアマネジメントなど)

小野沢 講師は、ベンダー企業の方にご登壇いただくこともありますが、基本的には、XP部門に所属する社員が担当します。それによって、講師自身の振り返りにもなると同時に、他部門からの相談機会創出にもつながっています。

――XP部門メンバーの知識・能力ベースアップ以外には、どのような目的がありますか?

小野沢 一つは、XP部門員のクライアントへの対応力を伸ばし、クロスセルを増やしていくという目的があります。たとえば、普段はオウンドメディア案件で対応しているクライアントから、突然ソーシャルメディア活用やCRMに関する相談をされたりしても、最低限のラインできちんと打ち返しできれば、クロスセルやアップセルの可能性は高まるはずです。

クライアントの課題解決のために最適なソリューションを提案するにあたって、ツール選定の際の最終的な決め手になるのは、提案する担当者の知識に裏打ちされた信頼や熱意であることも少なくありません。クライアントに「ぜひこの人と仕事をしたい、サービスを提供してほしい」と思ってもらえる人材を育成していくのも、XPカレッジの目的の一つです。

実際、営業企画の経験があまりない中途入社の若手社員が全講座を受けたことで、フロント営業として、クライアント企業の課題抽出から電通デジタル各部門のソリューションを活かした提案までを担当できるようになっています。

当初は社内の会議室に講師と参加者を集めたセミナー形式で開催していましたが、コロナ禍を機に、オンライン会議ツールを活用したウェビナー形式の運営に移行しました。その際に配信対象を全社員に拡大しています。それに伴って、XP部門にとっては部門間連携を創出する場としての側面も生まれてきました。

電通デジタルは対応領域が広いため、XPカレッジを通じてXP部門のケイパビリティを他部署へも知ってもらうことで、社内における新たなソリューション創出の一助になればいい、と考えています。


若手社員が感じたXPカレッジの意義

――受講者の立場から見たXPカレッジの意義についてお聞きします。まずおふたりの経歴と現在の仕事について簡単に教えてください。

板野 2019年4月に新卒で電通デジタルに入社し、XP部門のグロースコンサルティング事業部CROグループに配属されました。

CROグループのミッションは、クライアント企業のWebサイトのCRO(コンバージョン最適化)をお手伝いすること。さまざまな分析ツールを活用しながら課題を特定し、解決策の提案から施策の実施までを一気通貫で行います。

波多野 私は、2020年4月に新卒で電通デジタルに入社して、XP部門オウンドメディアプランニング事業部オウンドメディアプランニング第2グループに配属されました。

オウンドメディアプランニング第2グループは、Webサイトの制作やリニューアル、コンテンツマーケティングなどを担当しています。私は現在、先輩方のアシスタントを務めつつ、金融系企業のオウンドメディアの運用に携わっています。

板野千咲(左)、波多野光(右)

――おふたりとも、入社前はデジタルマーケティングに関する知識はほとんどなかったそうですが、入社後に苦労した点は?

板野 正直なところ、何がわからないのかがわからない状況が、けっこう長く続きました。入社してしばらくは、自分が直接案件を担当することはなく、先輩方がクライアントに対して提案している内容を見聞きすることでしか知見が広がっていきません。業務が身になっている実感が得られにくく、自分がその領域についてどの程度理解しているのかわからないのが辛かったです。

波多野 そろそろ入社して1年になりますが、入社直後から完全なリモートワークになったため、長らく先輩方に直接お会いできませんでした。また、デジタルマーケティングの知識は、新入社員研修でも受講しましたが、全体的な概要の話にはなってしまうため、どうやって実践知識を付けていけば良いかというところに苦労していました。

――これまでにXPカレッジではどのような講座を受講しましたか?

板野 1年目は、時間を作っていろいろな講座に参加しました。「カスタマージャーニー」「MAシナリオプランニング」、North Star Metric[注1]のような考え方のフレームワークを学ぶ講座などが印象に残っています。

波多野 私はほとんどの講座を受講しています。一番印象に残っているのは、いろいろな部門や事業部の先輩方がキャリアについてお話しする「VUCA[注2]時代のキャリアマネジメント」という講座です。リモートだけで業務をしていると、なかなか触れられることのない話題でもあるので、これからどうキャリアを積んでいくべきかという話はもちろん、先輩たちが若手だったときの話も聞けて、すごく参考になりました。

――XPカレッジで得た知識は、実際にどんな形で業務に役に立ちましたか?

板野 実際にMAツールを使ったり、カスタマージャーニーを作ったりという実務経験はまだないのですが、それに関する知識はあるので、クライアントからお話をいただいても、適切に対話できるようになりました。

また、フレームワーク的な考え方を教わったことで、本質をつかむことの重要さが理解できたのは大きかったです。資料の作り方や、提案を考える際の手順などに、非常に大きな影響を受けたと実感しています。

波多野 XPカレッジ受講後は、毎回必ずレビューをまとめてグループの先輩たちに共有しています。リモートワークでは文章でコミュニケーションとることが多いのですが、そのための文章力がついたかなと思っています。


部門員の成長実感が3年連続で増加

――XPカレッジを受講した社員からは、どのような評価や感想がありましたか?

小野沢 開講してから毎年年末、部門員を対象に「成長実感アンケート」をとっていて、毎年以下の3点を尋ねています。

  • 1年で自分が成長したと実感したかどうか(成長実感)
  • 挑戦することがあったかどうか(挑戦実感)
  • 今後自身の専門領域を深掘りしていきたいか/周辺領域へ拡張していきたいのか(成長意欲)

「成長実感」に関しては、「強い実感がある」「実感はある」という回答が年々増えていて、XPカレッジがXP部門メンバーの成長に貢献できているという手ごたえを感じています。

Zoom

――経営層からの評価はいかがですか?

山能 過去3年で67講座を開催し、受講者はのべ2,300名を超えました。そういった点が評価されて、2020年上期のWAVE AWARD(社内表彰制度)[注3]のKAIZEN WAVEを受賞しました。

全社の事業推進・教育支援組織と連動し、社としての教育プラットフォームとしても活用していこうという話も出ており、今後の展開への期待も大きいと受け止めています。


さらなる成長の場として、講義をもっと充実させていきたい

――XPカレッジの運営担当者として、今後の抱負をお聞かせください。

山能 XPカレッジの講座をすべて理解することで、デジタルマーケターとして総合的な知識を有する人材になれるはずと自負しています。デジタルマーケティングに携わる社員の専門領域の拡張や、さらなる成長のための手助けになりたいと考えています。

小野沢 カリキュラムに関して再構築を進め、XPカレッジ全体の質の向上に努めていきます。デジタルマーケティングは日進月歩であり、新人はもちろん、ベテランでもその速さについていくのは大変なことです。XPカレッジは本当に必要な講義を厳選して届けることで、そうした不安感を払拭し、前向きに業務に取り組む気持ちを育む場でもありたいと思っています。

――現在大学生で就職活動されている方へ向けても、一言ずつお願いします。

板野 デジタルマーケティングはベテランでも日々勉強が必要と聞きますが、新入社員の場合、ベースとなる知識の勉強と、新しい知識のキャッチアップの、両方が必要です。ただ、ベースの知識に関しては、XPカレッジを活用することで効率的にインプットできます。

今、就職活動をしている人の中には、デジタルマーケティングの知識がないからという理由でエントリーをためらっている人もいるかもしれませんが、その点に関して、入社後のサポートは手厚いので安心してください。

波多野 私は入社してすぐに在宅勤務となってしまいましたが、リモートでも理解度が深まるようにさまざまな工夫がされていたため、リモートワーク前提となりつつある社会で働くための不安が解消されました。

これから入社される方も、私のように最初からほぼリモート勤務になる可能性が高いですが、それに関しては、心配しなくて大丈夫だよと伝えたいです。

小野沢 ここ数年、チームの構築においては「心理的安全性」[注4]というキーワードが継続的に注目されています。チームの中でリスクの高い行動をとったり、ミスをしたとしても、チームメンバーから非難されたり馬鹿にされたりする恐れを感じずに、安心して発言したり行動したりできる状態のことです。

心理的安全性が保証されていることは、チームのパフォーマンスを高める重要な要因です。XPカレッジの運営を通してわれわれが目指しているのも、まさしくそういう状態の実現であるということは、社内にはもちろん、これから新卒入社や経験者採用で電通デジタルに入社するであろう皆さんにも、ぜひお伝えしたいと思っています。


脚注

注釈

1. ^  別名、北極星指標。ビジネスやプロダクトを正しい方向にグロース(成長)させるために設定し、関連するすべての部署、すべてのメンバーが参照すべき、ただ1つの指標のこと。この指標を改善すれば、顧客の数を増やし、収益を上げ、プロダクトを持続的にグロースさせることができるようになる。詳しくは「グロースハックに欠かせない指標North Star Metricとは?」参照。

2. ^ VUCA(ブーカ)とは、 Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、 Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字をとった造語。これらの要因により、今日のビジネス環境が、極めて変化が激しく、予測困難な状況に直面している、という時代認識を表す言葉として使われている。

3. ^ WAVE AWARDは、電通デジタルの「ミッション・ビジョン・バリュー」を体現したプロジェクトに対し贈られる賞。表彰頻度は年に2回(上半期:1~6月、下半期:7月~12月)。KAIZEN WAVEはその中の部門賞の一つで、全体オペレーション効率化、基盤づくり、仕組化したPJに贈られる賞。

4. ^ 心理的安全性は、ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン(Amy Edmondson)教授によって提唱された概念。Googleの調査で「チームの効果性に影響するもっとも重要な因子」として挙げられたことにより、注目を集めた。詳しくは「『効果的なチームとは何か』を知る」参照。

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