2021年04月13日

コラム

組織のパフォーマンスを最大化する「新しいワークスタイル」に取り組む電通デジタルの挑戦

※所属・役職は記事公開当時のものです

激変する時代の中で、ワークスタイルの進化は多くの会社が抱える課題です。さらに昨年からのコロナ禍によって、よりいっそうのスピード感で取り組むべき必須課題となりました。

電通デジタルは2019年から「ワークスタイル開発プロジェクト」を発足。コロナ感染が拡大する前に2回のリモートワーク実験を行うなど、いち早く取り組みを行ってきました。今回は、電通デジタルが進める新しいワークスタイルへの挑戦を、取締役副社長執行役員の後藤好孝と、プロジェクトを推進する総務部部長 飯野将志に聞きました。

生産性、創造力と想像力を上げるためのワークスタイルに進化させたい

――新しいワークスタイルの開発に取り組む際に、考えられていたことは何でしょうか?

後藤「デジタル時代の事業成長パートナー」を使命とする我々が追求すべきものは、生産性を上げていくことと、創造力(Creativity)と想像力(Imagination)の両方を上げていくことです。そのために、どこでどう働くのが良いのか、新しい働き方への挑戦をどのように進めていけば良いのかを考えています。

さまざまなビジネス書に書かれているように、グローバルでみると日本の生産性はまだまだ低く、たとえばドイツ人は日本人よりも30~40日多く休んでいても高い利益を出しています。当社としても生産性を上げるべく取り組む必要があると考えています。

さらに、今年7月1日には当社と電通アイソバーが合併し、新生「電通デジタル」になります。社員数は現在の1,500名から2,000名となり、さらに大きくなります。よりいっそう生産性を上げ、グループシナジーを武器に電通グループをリードできる存在になりたいと考えています。

メディアでの高評価につながった、スピーディな取り組み

後藤生産性を上げるための働き方の見直しを2018年から進め、2020年2月にコロナ感染が拡大する前には、リモートワークの実証実験も2回ほど行っていました。その結果、ほかの会社に比べると可及的速やかにリモートワークに移行ができ、業務にもそれほど支障をきたさずにすみました。

総務部をはじめ、情報システム部などの各セクションがデジタルマーケティング企業ならではのスピード感をもって対応してくれたおかげで、東洋経済オンラインの記事"「コロナ禍で評価を上げた会社」 ランキング"で10位[1]、ダイヤモンドオンラインの記事"コロナ下で社員からの評価が上がった企業ランキング2020"で20位[2]になれたのだと思います。働き方に関しても早くから"攻め"の姿勢で取り組んできたことが高評価につながったと思うと、嬉しいですね。

後藤好孝(電通デジタル)

後藤好孝(電通デジタル)

あるべき姿を実現するための「Performance Based Working」

――新しいワークスタイルとしてかかげられている「Performance Based Working(以下、PBW)」の考え方を教えてください。

飯野当社は、「組織パフォーマンスを最大化し、最短距離で目的を達成する働き方」を目指すことと決め、その働き方を「Performance Based Working」と名付けました。当社の目的は、クライアントの事業成長パートナーとして、クライアントの課題を解決し、その事業を成長に導くことであり、それを最もスピーディに達成するために、組織のパフォーマンスを最大化していこうというわけです。

そしてパフォーマンス最大化のために、「やるべき事は何で、いつやるのが一番良いのか、誰が、もしくは誰とやるのが一番良くて、どこでやるのが良いか」を考えて働き方を選択していこうというのが、PBWの考え方です。

全社一律で毎日出社だとか毎日リモートワークだと決めるのではなく、パフォーマンスが最大化するのであれば、各組織の判断で取り入れてもらうことに決めました。働き方を選択するのはそれぞれの組織です。

PBWとは?

小さく試してブラッシュアップを繰り返す「ワークスタイル開発プロジェクト」の活動

――昨年まで実施していたワークスタイル開発プロジェクトの活動を教えてください。

飯野2019年2月に「ワークスタイル開発プロジェクト(以下、プロジェクト)」をスタートし、部門長以上の経営層にヒアリングして、電通デジタルが目指す働き方を定めるところから始まり、2019年7月には1回目のリモートワークPOC(Proof of Concept:概念実証)を行いました。

プロジェクト名に「開発」とあるように、小さく試しながらエラーも出してブラッシュアップし、レベルアップしていくという、技術開発のようなPDCAをまわす方法をとることにしました。「リモートワークPOC」も、一定のリスクを飲み込みながら開発をしていく、そういう進め方をしましょうと、POCという表現を使っています。

リモートワークPOCは2回行いましたが、第一弾は国が推進している「テレワーク・デイズ」の期間(2019年7月22日~9月6日)に実施。社員のオフィス利用6割にチャレンジした上での、メリットやリスクの確認を確認しました。人数に関しては、初めての取り組みでしたので管理職層の31名での実施となりました。

第二弾では若手社員まで対象を広げ、エラーを出さないのではなく、むしろ出た方がいい、何が起こるかやってみようと、2020年1月14日から2月28日に181名で行いました。その時は、まさかコロナの拡大が迫っているとは思ってもいませんでしたが......。

飯野将志(電通デジタル)

飯野将志(電通デジタル)

全社員の声に耳を傾け、わかったことを活かしていく

飯野プロジェクトでは、2020年5月から6月にかけて3回、全社員へのアンケートを実施し、社員の状況や今後の課題がみえてきました。特に、部門を超えたコミュニケーション、ナレッジへのアクセシビリティなどに課題があること、オフィスは目的に合わせて選べるように進化することが必要だということがわかりました。

どういう働き方があり得るかを導き出すために行った「部門長ワークショップ」は、オンラインツールを使ってのワークショップでしたが、部門で起きている課題などがいろいろ出てきて、さまざまな気づきにつながりました。

こうしたPOCやアンケート結果、部門長ワークショップなどからわかったことを活かし、「リスク」「マネジメント」「ナレッジ」「プレイス」といった4つの柱に分けて施策を実施しています。

――4つの柱と実施施策について教えてください。

リスク

飯野4つの柱は、4つの視点ともいえます。

4つの柱

飯野働き方が変わった時にリスクが増大してはいけないので、発生頻度と影響度でリスクを整理して「リスクマップ」を作成し、対応方針を明確化しました。発生頻度も多く、影響度も高い「情報セキュリティ」「勤怠管理」「メンタルヘルス」に関しては、VPNの拡充や保健師の体制強化など、重点的に取り組みを進めています。

といっても、情報セキュリティ対策の前提になるのは、社員一人ひとりの意識です。OSの最新化や会話内容の漏洩防止などを含めて、情報セキュリティ研修をウェビナーで行っていますが、社内啓発施策の強化も検討中です。

マネジメント

飯野また、「働き方は組織ごとに異なる」と決めましたので、判断をするマネージャーが本当に大変になりますから、マネジメントへのサポート体制はしっかりやっていく必要があると思っています。

そこで、マネージャー向けのワークショップの開催、データベースの構築、ガイドブックの作成などを実施しました。うまくいっているマネージャーに取材をし、リモートワーク下における組織運営のガイドラインも作りました。ガイドラインといっても、目標設計や業務の進捗管理方法、オフィスに出社してのメンバーフォローの仕方といったTIPSを記したもので、義務ではありません。

ナレッジ

飯野私は「リモートワーク時代のTPO」[3]という言葉をよく引用するのですが、TはTrust、PはPurpose、OはOpennessです。最後にOpennessとあるように、情報はなるべくオープンに共有していくことが、リモートワークをうまく行う秘訣ですから、ナレッジの共有は重要だと考えて取り組みました。

各部門にどういうナレッジがあるのかを把握するため、各部門からナレッジ担当を出してもらい、社内のナレッジを一覧表にまとめていきました。ナレッジ担当者に入ってもらったことで、他部門のナレッジを自部門に持ち帰ってもらったりといった横展開も可能になり、プロジェクト全体にとっても良い変化をもたらしました。

ナレッジの共有で課題なのは、知りたいナレッジを知りたいときに見つけられることです。そこで、各組織のナレッジ共有施策を一覧化した「ナレッジMAP」を整備しています。

プレイス

飯野4つ目の柱は「プレイス」ですが、当社は年内に汐留オフィスをリニューアルします。オフィスコンセプトは「REAL empowers us. ~リアルな世界が私たちを強くする~」。強いチームワークを実現するオフィス設計に取り組んでいます。

後藤「REAL empowers us.」という言葉は、新しいオフィスに求めるものを、うまく言葉にしていると思います。

たとえば、今の我々は打ち合わせも部会もオンラインミーティングでできることがわかっています。バーチャルでコミュニケーションを取ることができるようになったと同時に、リアルの価値というのも実感することになりました。

デジタルとアナログ、バーチャルとリアル、両輪でこれからの世界は成り立っていくと考えたとき、希少になってくるのはリアルです。その希少なリアルを、仕事のどこに振り分けて、何を得るのかが大事だと思います。

汐留オフィスをリニューアルするにあたって、リアルの希少さ、貴重さを生産性の向上やクリエーティブ、イマジネーションにどのように繋げていくか。すぐに答えは出ないと思いますが、時代の変革の中で、引き続き考えて挑戦して一つひとつ答えを出していきたいですね。

オフィスコンセプト

パフォーマンスを高めるための挑戦は続いている

――オフィスに来て仕事することも、自宅などでリモートワークをすることも選べるということですが、会社として優先してほしい場所はありますか?

飯野我々は、「出社日を決めない」と決めました。リモートワークはパフォーマンスを高めるための選択肢の1つです。パフォーマンスを高めるには、毎日出社した方が良いという場合は毎日来てもかまいません。いつどこで働くことが良いのか、引き続き選択肢を増やすことにチャレンジしていきたいと思っています。

後藤変化が激しい時代です。コロナ禍によってグローバル化が一気に加速し、同時に時間と場所にとらわれない働き方が可能になりました。それらが、企業に対して組織やカルチャーの変革をせまっています。我々がどう変わって、何を得られるのか、その答えを出していかなくてはいけないと理解しています。まだ答えは出ていませんが、挑戦中です。

飯野、後藤(電通デジタル)

脚注

出典

1. ^ 「コロナ禍で評価を上げた会社」ランキング「コロナ禍で社員の満足度が大きく改善した企業」50社 東洋経済オンライン(2020年10月9日)2021年4月8日閲覧
3. ^ コロナ下で社員からの評価が上がった企業ランキング2020【全30位・完全版】ダイヤモンドオンライン「親子で考えるダイヤモンド就活ラボ」(2021年1月5日)2021年4月8日閲覧
3. ^ マーサージャパン株式会社のコラム リモートワーク時代のTPO(2019年8月20日)2021年4月8日閲覧