2021年02月16日

エクスペリエンス

コラム

CROの注力ポイント(3):課題の特定には「導線の分析」と「面の分析」の両方が必要

※所属・役職は記事公開当時のものです。

CRO(Conversion Rate Optimization:コンバージョン率最適化)の基礎知識を解説する連載の第4回となる今回は、データから課題を発見するアプローチである「導線の分析」「面の分析」をご紹介します。この2つの分析を用いて、電通デジタル CROグループがどのようにWebサイトの問題を発見し、解決につなげているのかを解説します。

顧客体験を捉えることがCV最大化のトリガー

一般的に耳にするCROの事例では、特定のページ(面)の分析から課題を発見し、改善していくケースを耳にしますが、CVR(コンバージョン率)を最大化するという観点では不十分です。なぜなら、ユーザーは特定ページだけを見て、CV(コンバージョン)するかしないかを判断するわけではないからです。

もちろん、「導線は1ページ1ページの積み重ねである」という意味では、間違いではありません。しかし、ユーザー目線で考えてみると、あくまでその1ページは、目的を達成するための通過点でしかなく、その地点データだけで判断しては見誤ってしまう可能性が高いのです。

ユーザーの行動は導線で捉えなければ、行動のコンテキスト(文脈)が理解できません。コンテキストがわからなければ、取り組むべき課題の判断を誤ってしまいます。

間違った課題に対して、どれだけPDCAを行っても抜本的な改善には至りません。しかもリソース(時間と費用)を無駄に消費してしまうことにもなりかねません。

カフェテリアの顧客目線でコンテキストを考えてみる

例を挙げます。とあるカフェテリアの売り上げを増やそうと考えて、課題は何なのかを検討したところ、「メニューが課題ではないか」という仮説に至りました。

そこでまず、メニューの改善点を3つに切り分けました。1つ目が「デザイン性の改善」、2つ目が「機能性の改善」、3つ目が「価格の改善」です。それぞれの改善ポイントを少しずつ改善するPDCAを実行していけば、最終的に理想的なメニューになるのではないか。そのように考えたわけです。

図1:売り上げを増加させるための改善ツリー

これだけ聞くと、とてもまっとうな改善案に思えますが、ユーザーの行動ベースで考えてみるとどうでしょうか。

ユーザーは、カフェテリアを見つけます。外観を見て、入るかどうかしばらく考え、店の扉を開け、足を踏み入れます。その後、入店した際に、スタッフにアテンドされ、座席に案内されます。その後、おしぼりとメニューを渡され、何を注文するか、購買内容を検討します。

このコンテキストから考えると、売り上げが上がらない原因がメニューであるとは言い切れません。メニューのほかにも、店の外観、スタッフの接客、座席の座り心地、店内の雰囲気、メニュー、飲食物の味、値段など、さまざまな要因が考えられます。仮にメニューが課題だったとしても、そこまでにお客さまがどのような期待をもったかによって、メニューで提示すべき飲食物の最適な見せ方が変わってくるでしょう。

仮に課題は面(メニュー)だったとしても、どのように改善すべきなのかは、メニューだけを見ていてもわかりません。ユーザーはコンテキストに沿って動いており、体験の導線を踏まえて改善策を考えることが重要になってくるのです。

カフェテリアの売り上げを増加させたいという場合であれば、下図のように、ユーザーの行動を「導線で捉える分析」と、課題の深掘りを行う「面の分析」を交互に行うことで、売り上げの阻害ポイントであるボトルネックを特定することができます。

図2:ジャーニーから考える:ユーザーは点ではなく線で動いている

「導線の分析」と「面の分析」の役割とは

導線の分析では、サイトへの流入からCV(あるいは離脱)まで、全ユーザーの行動を分析し、共通の行動をとったユーザーごとにグループ分けします。そうすることで、ユーザー行動を類型化することができ、コンテキストを読み解いてユーザー心理を推察できるようになります。かなりの数のグループができますが、ユーザー数の多いグループから優先的に分析の対象とします。

一方、面の分析ではまず、グループごとの導線で離脱が多い面(ページ)を特定します。その上で、ユーザーのコンテキストに照らして、対象ページでユーザーが何を望んでいるか、その達成を阻害しているのは何なのか、さまざまな視点から読み解くことで、課題を絞り込み、改善方法を検討します。

一番のボトルネックとなっている面の離脱率が改善されると、今度はその次に離脱の多い面が改善対象となります。このようにして、導線の分析と面の分析を相互補完して改善を繰り返すことで、徐々に全体のCVRを高めていきます。

図3:導線と面の役割

アクセスログはユーザーの声です。一部の声だけに耳を傾けていては、その真意を理解することはできません。全量データからコンテキストを読み解くことによってはじめて、CVR最適化を確実に実行できるようになるのです。

導線の分析から顧客行動を可視化する方法

導線の分析を行うためには、主に2つの方法があります。

  1. アクセス解析ツール(Googleアナリティクス/Adobeアナリティクスなど)を活用

  2. 行動可視化ツールを活用

本稿では1.について説明します。電通デジタルのCROグループでは、ユーザーの行動を可視化するために「KPIマップ」と呼ばれる分析手法を活用し、遷移行動を数値で一覧・可視化できるようにします。

図4:KPIマップでのファネルイメージ

アクセス解析データを落とし込んだこのKPIマップにより、ページ単位の数値データは、サイト内行動を可視化できる統合的なデータに変わります。全ユーザーの行動割合からチャネル別の行動傾向まで、さまざまな導線をデータで可視化することで、グループごとのユーザーのコンテキストが特定しやすくなります。

面の分析から顧客行動を可視化する

面の分析を行うためにも、主に2つの方法があります。

  1. アクセス解析ツール(Googleアナリティクス/Adobeアナリティクスなど)を活用

  2. ヒートマップツールを活用

ここでは2.について説明します。ヒートマップとは、ページ内の行動データから、マウスカーソルの動きやクリック(タップ)、スクロールなどの数値を、色の濃淡により可視化するツールです。ページ内のアクションを詳細に分析できます。一般的にCXやUXの向上などに活用されるツールですが、電通デジタルCROグループでは、このツールを使ってページ内の行動から課題を推察します。

図5:ヒートマップでの読み解きイメージ

「導線の分析」と「面の分析」からボトルネックをあぶり出す

「導線の分析」と「面の分析」を繰り返し行うことで、すばやく課題を特定し、ボトルネックを解消することができます。「面(ページ)の分析」だけを行うよりも、Webサイトの本質的な課題を容易に見つけることができ、CVRの改善/最大化にも多大な効果を上げられるようになります。

最後に少しだけ補足しておくと、今回ご紹介したのは、電通デジタルCROグループが用いている、数ある分析手法の中の2つです。効果的で汎用性の高い手法ではありますが、つねに「導線の分析」と「面の分析」を行っているわけではありません。企業の業種、Webサイトの製品/サービスの種類、対象ユーザー、目的、課題、ニーズに応じて、最適な分析手法を選択しています。

CVRを最大化させるためには、ユーザーを理解することが一番の近道です。ユーザーと向き合い、ユーザーの声を聞き、ユーザーの期待に応える。こうした改善行動をPDCAし続けることが、CVRの最大化、ひいては事業成長につながります。CROに関してお困りのことがあれば、電通デジタルCROグループにお気軽にご相談ください。