2021.02.09

成果を出し続けるクライアントとエージェンシー 関係構築の秘訣とは?

最適なコミュニケーション、スピード、チャレンジによって信頼の獲得へ

電通デジタルのアカウントプランニング部門では、多くのクライアント企業から依頼を受け、メディアやファネルを一気通貫したメディアプランニングや統合デジタルマーケティング戦略の立案と実行を請け負っています。

一般的に「エージェンシー」の役割とされるこの領域で成果を出し続けるためには、最新の戦略・戦術に通じていることはもちろん、クライアント企業との良好な関係構築が必須です。

「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020 登壇者に聞く(全4回)」の第4回となる本稿では、統合デジタルマーケティング部門とアカウントプランニング部門の3名に、クライアント企業との向き合い方、関係構築のポイントについて、話を伺いました。

※所属・役職は記事執筆当時(2020年12月)のものです。

株式会社電通デジタル
統合デジタルマーケティング部門
チーフデータストラテジスト

藤田 佳吾

株式会社電通デジタル
アカウントプランニング部門
シニアプランナー

光畑 創司

株式会社電通デジタル
アカウントプランニング部門
シニアプランナー

宮村 綾香

緊密なコミュニケーションで目的達成まで丁寧に寄り添う

――クライアント企業とコミュニケーションをとるにあたって、どのようなことを心がけていますか?

宮村 私が担当しているクライアント企業では、毎月社長同席の定例会を開催しています。事業成長目標からブレイクダウンした年間KGIが目標未達なら、未達要因を因数分解して、改善すべき指標を特定し、施策の優先順位を策定します。改善指標と施策優先順位について密に共有することで、クライアント企業との齟齬が出ないように心がけています。

藤田 時として、KPIを因数分解しても、どこに問題があるのかが特定できないこともあります。そこからがわれわれの力の見せどころです。仮説設定力、すなわちこういうことが原因なんじゃないかという仮説の方向性を示して、まずはそこをよくするためにこういう施策でやってみませんかという提案をします。

私が所属する統合デジタルマーケティング部門では、全体最適の視点を持つことを重要視しています。デジタル広告とWebサイト、オンラインとオフラインなど、複数の接点の施策を統合的に見たときに、きちんと事業成長、KGIにつながっているのかどうか。それらの行動データを統合的に分析して、施策に落とし込んでいくとなると、クライアント企業からいろいろなデータを開示してもらわなければいけません。

その承認を担当者の方が社内で得ていくというのは、なかなか骨の折れる作業です。先方の社内事情も丁寧にヒアリングして、どうすれば承認が下りやすいのか一緒に考えますし、資料の作成もお手伝いしています。

宮村 マーケティング・デジタル担当者からは施策合意をいただけても、そこから先、上司に説明しなくてはならないとか、他部署の予算が必要な場合は、担当者の方と緊密にコミュニケーションをとりながら、一緒に説得材料を考えるケースは多いですね。

宮村綾香(電通デジタル)

スピーディな打ち返しにはクライアント企業のビジネス理解が必要

――クライアント企業からのリクエストにスピーディに対応することは大事ですか?

光畑 そうですね、そこはかなり大事です。先方の社長、マーケ担当者から「新たな施策を今週中なるべく早く」と言われるのは、けっこうよくある話です。われわれの場合、そこに応えるため社内の専門部署とシームレスに連携し、迅速にクライアント企業の要望に応じた提案を行える体制を整えています。

私が担当しているクライアント企業は、成功したメソッドをベースに複数の事業を展開していますが、どの市場もレッドオーシャン化してしまっているんですね。

長いあいだ、他社ともデジタル施策で激しくしのぎを削り合っているがゆえに、提案のスピード感が求められる状況だったのですが、最近は電通デジタル発信の施策を競合他社が参考にするような状況に変わりつつあります。なぜそれができているのか、その要因を考えてみると、攻めと守りの2つあります。

攻めに関しては、「Who(誰に対して)」を中心に、競合他社が考えつかない切り口でクライアント企業と協力しながら、スピーディに先手を打っていくこと。

守りについては、競合の動向をモニタリングしながら、クライアント企業と弊社のチーム内で情報をシェアして、新たな施策を発見した場合には「なぜその施策をやっているのか?」仮説立てを行ったうえで有効な対策を提案し、施策実行のGOをもらうこと。この2つはすごく大事だと思っています。

特に「Who(誰に対して)」施策を打つか、そこをPeople Driven DMPの持つ独自データソースを用いて可視化したうえ、有効な理論を構築し実行できるのが電通デジタルの強みです。そこは競合には真似できないところではないでしょうか。

藤田 スピードの大前提は、クライアント企業のビジネス理解と課題の構造化。そういう下地が整ってないとなかなかスピーディな打ち返しは難しいですね。

たとえば私は普段、「ありたき姿はこうですよね。ただし、こういう課題があります。そのギャップを埋めるソリューションはこれです」というように、ゴールから逆算して提案しています。

ゴールから逆算した提案ができていれば、クライアント企業とは目的意識が共有できているので、意思疎通がスピーディに行えます。もし、施策を運用していく過程で目的を見失いそうになったときでも、すぐに軌道修正できるメリットもあります。

宮村 そうですね。私の担当するクライアント企業でも、スピード感は大事かなと思っています。スピーディに新しい提案をしていかないとただの運用オペレーションになってしまう。そうならないように、個人的には、今すぐ施策にならなくても、最新の情報は全部提供するように心がけています。

光畑創司(電通デジタル)

どのようにして新たなチャレンジへの理解を得るか?

――新たな施策への挑戦は、ツール導入費がかかったり、効率が悪化したりするリスクがあります。どのようにしてクライアント企業の理解を求めていますか?

宮村 新しい施策を実行するときには、はじめにものすごく細かいシミュレーションを行いますね。本当に新規施策を導入することで、広告の費用対効果改善、ひいてはクライアント事業計画達成につながるのか。投資する価値があるのか。そこでOKがもらえれば投資するし、いまいちだなという話になれば他の施策を模索します。

光畑 私の場合、先方が「リスクをとらないと生き残れない」という感覚なので、それをわれわれもシェアをして、周りを巻き込みながら日々積極的に施策を仕掛けています。

直近では、行動心理学をベースとしたマーケティングの専門コンサルタント企業と組んだ施策を提案したり、機械学習プラットフォームを活用した制作を提案したところ、クライアント企業にもかなり前向きに検討していただいているんですよ。

そもそもマーケユニットリーダーの方がデータマーケティングに精通されているので、先進的な施策をすぐに理解していただける環境にあります。そこを捉えた提案を作るというところはすごく重要です。

藤田 チャレンジという意味で言いますと、足元の運用ではしっかりと手堅く成果を出すことも大切です。とはいえ、同じことを繰り返していても先細りになるので、電通デジタルがご一緒することで、緩やかにでも右肩上がりの成長を継続できるようにしたい。そのためには、「こういったチャレンジに中長期的に取り組んでいく必要がありますよね」といった合意形成をしておくというやり方になります。

一方で、担当者の方がチャレンジに積極的でない場合、理由を伺うと、デジタルマーケティングに苦手意識を持ってらっしゃることも多々あるんですね。

そういう場合は、デジタルに対する苦手意識を払拭していただけるように、デジタルマーケティングの勉強会などを開催したりもします。電通デジタルと一緒にお仕事をしていただくことでデジタルが得意になって、担当者の方も一緒に成長できるという環境を作っていくのも大事なことだと思います。

藤田佳吾(電通デジタル)

信頼を大きくするには、期待を超える成果を出すしかない

――クライアント企業からの信頼を得るために必要なことは何でしょうか?

藤田 信頼は一朝一夕には得られません。かといって、長い付き合いをダラダラ続けるだけでもダメ。両社の事業成果を出すためにどういう関係性がベターなのか、腹を割って話さないといけないんですが、そういう話ができるようになるには、日頃の丁寧な対応やコツコツと実績を出し続けることが必要かなとは思います。

短期的なKPIだけではなく、KGIを見据えてクライアント企業と議論するのは、基本スタンスとして重要です。クライアント企業の事業が拡大すれば、われわれの評価が上がって、ご発注いただく金額も増える可能性が高まる。つまりWin-Winの関係性になれます。

短期的には、電通デジタルの利益と相反することをやらなくてはいけないことがあるかもしれない。そのときは、弊社のマネージャーの理解を得たうえで、中長期的視点で両社にとってプラスになることを冷静に判断してやっていきます。

光畑 私たちは年間で非常に大きな広告費用をお預かりしています。事業成長パートナーとしてクライアント企業の期待を超える成果をしっかり還元していく。これしか信頼を大きくする方法はないというのが、私の中での結論です。

他のファクターでは、クライアント企業の担当者が悩んでいるときに、その悩みにしっかり寄り添うことは、信頼を得るうえで大きいことかなと思っています。

あるとき、担当者の方から急ぎ相談したいことがあるという連絡がありました。私はすぐに先方の本社まで行って、膝を突き合わせながら話し合いました。われわれのスコープ外の相談も含まれていたのですが、広告施策の方は何とか提案して、無事ご満足いただけたんですね。そこで言われたのが「相談して良かったです」という一言。泥臭い営業的な動きもお客さまにとっては助けとなることがあるのだなと思って、コロナ禍の現在はオンライン上になりましたが意識的に動くようにしています。

ただ、その一方で、思考停止してクライアント企業の考えをそのまま受け止めるだけではいけません。クライアント企業の事業目線に立って、「それは貴社のためになりません」とか、「どこからどこまでは貴社内で決めるべき話です」ということをきちんとフランクに言い合える関係を作るということが本質ではないでしょうか。もちろん、担当として期待に応えるべくベストを尽くすのですが、期待値のコントロールを行い、実現可能な着地点に誘導するのがポイントです。

宮村 光畑さんのおっしゃったとおり、信頼関係が成り立つのは実績があるからです。泥臭い運用や新規提案をやってきて、継続的に成果を出せてきたからこその信頼。なので、まずは実績貯金を積むしかありません。地道に実績を上げつつも、クライアント企業の担当者が何か突発的に困ったときに、「この人頼りになるな」という回答を用意できるかというところは大事だと思っています。


成果を出し続ける事業成長パートナーであるために

――最後に、クライアント企業と理想的な関係を構築するために心がけていることをお聞かせください。

宮村 繰り返しになりますが、クライアント企業の事業成長に貢献する成果を出し続けること。そして情報の出し惜しみをしないことですね。最新情報をできるだけ細かく、正しく、早く伝えることは心がけています。

光畑 私の場合は、どうすればクライアント企業の事業の市場全体を活性化して、スケールしていけるか。そういう視点で提案するように気をつけています。

市場を育てていくのも、マーケティングに携わる者として非常に重要な役割です。既存の広告戦略の勝ちパターンにすがるのではなく、「新しいスタンダードを一緒に作っていきましょう」というアプローチをしています。その姿勢にクライアント企業も呼応してくれているからこそ、スピード感を持って先進的な施策を実行できていると感じています。

藤田 クライアント企業の事業への貢献が大前提としてありますが、そのうえで、せっかくのご縁でお仕事をご一緒することになった担当者の方の社内評価が上がっていくのはとても嬉しいことです。

成果という数字を作り出すのは結局のところ人なので、「この人と一緒に成果を出したい!」と思い思われの関係性を構築するのが理想です。もちろん現実にはそう簡単にはいかないケースもありますが、私のマインドとしてはいつもそうありたいと思っています。

その他には、いろいろな課題に対して、打ち手の引き出しをたくさん持っておくことですね。そのために電通と電通デジタルの武器には何があるか、どんな商材のどんな課題に効くのかというところは、日々アンテナを張っています。

そのうえで、メディアコミュニケーション領域だけではなく、ソリューション領域についてもアンテナを向けるようにしていますし、当然、競合他社の武器についても知っておくことが大事だと思っています。

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