2021年02月02日

データ/テクノロジー

コラム

1stパーティデータを最大限に活かすデータ基盤の作り方

※所属・役職は取材当時のものです。

3rdパーティクッキーの利用規制が広がる中、多くの企業で1stパーティデータ活用を見据えた取り組みが活発になりつつあります。1stパーティデータの活用には、データベース、データウェアハウス、DMP、CDPといったデータ基盤の整備が必要です。

データを最大限に活かすデータ基盤を作るには何が必要なのか?2020年10月7日~9日に開催された「People Driven Marketing® 実践ウェビナー2020」の登壇者で、さまざまなクライアント企業のデジタル戦略立案やデータ基盤整備に携わってきたふたりに、取り組みを進める上での大事なポイントについて伺いました。

1stパーティデータはまだまだ活用の余地がある

――企業が所有する1stパーティデータは、おふたりの実感では、どの程度活用されていると感じますか?

坂本施策設計の際の基礎分析、仮説検証や効果検証のための集計分析という使い方であれば、大半の企業はデータ活用していると言えるかと思います。しかし、顧客データ、アクセスログデータ、購買データ等を統合化し、AIや機械学習といった、高度な最新テクノロジーをフル活用するとなると、そこまでできている企業はまだ少ないと思います。

福島私も同じような実感です。メールアドレスをキーにして広告配信を行う施策は、今やほとんどの企業で手法として用いられていますので、顧客データの収集・蓄積はできていることになります。しかしそこから一歩踏み込んで、メールアドレスを自社データと媒体データとアクセスログデータのマッチングキーに利用している例はまだまだ少ないと感じます。連結してあれば上述の機械学習の学習元とさせることも、One to Oneマーケティングのセグメンテーション最適化にも活用できますが、多くの場合すぐにデジタル施策に使える状態になっていないように見受けられます。

――企業が1stパーティデータの活用を進めるためには、誰が、どう推進していくのが最適なのでしょうか?

坂本やはり、まずは、CMO(Chief Marketing Officer)を始めとするマーケティングサイドの意思決定レイヤーの方が音頭を取ることが重要だと思います。情報システム(以下、情シス)系の部署がリードするケースも多いですが、データ活用起点での構想策定をするには、情シス関連の担当者だけですべてを行うのは難しい。CMO、もしくはCDO(Chief Digital Officer/Chief Data Officer)が旗を振り、その実行部隊としてデータを使って戦略的にプランニングすることを専門とする組織の下で推進すべきだと思います。

福島実際のプロジェクト進行においても、データの集まる場所は人も集まるので、意思決定者の方のご協力は必要不可欠になります。ただわれわれのような外部の人間から自社データがどう収益に貢献できるのかをどんなにお伝えしても説得力に欠けてしまうこともあります。

本当の第一歩は、その企業でモノを売る前線にいるマーケターの方が上層の方へ声を上げて協力を仰ぐことだと思います。彼らの実体験に基づく意見がデータ活用施策の発想の起点になるので、まずは彼らが声を上げないことには始まらないと思います。

現場の意見を集約していくと、実際にシステムを作っていく情シスとマーケターとで意見の相違からプロジェクトが停滞することがあります。両者のミッションが違うためで、その温度差を埋める役割としても、CMO、CDOの存在が重要と言えます。

簡単ではないですが、組織の中で人とデータを統括する立場の方と前線の方がタッグを組んで、まずは自力でスモールスタートで成功事例を積み重ねながら進めていき、システムとして実現できるものであることを情シスの方にも納得いただき、企業内で本導入・運用へ向けて、連携して推進していけるかが重要と感じます。

坂本浩士(電通デジタル)

「何のためにやるのか」を認識する

――1stパーティデータを効果的に活用するためには「データ基盤」の整備が必要ですが、具体的には、どうすればいいのでしょうか?

福島データ基盤の開発実装の流れについては、「Google×PDM®で広がる『データテクノロジー×クリエーティビティ』の可能性」でもお話ししましたが、「収集」「統合」「分析」「活用」の4つのフェーズに分けられます。

もっとも大事なのが「活用」フェーズです。私が安価で手軽に始めやすいGoogle製品群の担当であり、スモールスタートかつスピード重視のお話が多いこともありますが、これまでのプロジェクトを振り返ると、データ基盤の構築には、はじめから明確に目的に合わせてデータ整備するパターンと、とりあえず全データを統合してから何ができるか考えるという2パターンの傾向があるようです。

自社ビジネスにおいてデータを使いたい理由があって弊社に開発のご依頼をいただくのが本来かと思いますが、まずは自社にどんなデータがあるかを知ってから目的・施策を考えるケースも多くあるのが実情です。ただ、後者の場合であっても、最終的には、統合したデータで何をするのか、構築完了までにはKPIを整理して目的を明確に定めることになります。

坂本本格的にデータ基盤を整備するには、上記4つのフェーズの前に「構想策定」というフェーズも必要です。まずは、現在どのようなデータを保有しているのかだけでなく、マーケティングや営業も含めて、クライアントのビジネスゴールが何か、どんな課題を抱えているのかを把握します。そこからゴール達成、課題解決のために必要となる要求事項を整理し、それをデータの活用によってどのように実現するかを、戦略に落とし込むのです。

それを成し遂げるために何が必要なのかを検討する中で初めて、CDP(Customer Data Platform)、DMP(Data Management Platform)などのツールを検討します。つまり、ツール導入ありきではなく、「そもそも何のためにやるのか」というところを、きちんとマネジメントして考えていくことが、一番重要です。

福島無形商材であるビジネスコンサルティングは予算化できない企業も多いのですが、本来はビジネス要件を整理してから開発着手するのが手戻りも少なく済みます。ご予算と導入スケジュールの兼ね合いにもよりますが、坂本さん率いるデジタルストラテジー事業部のメインドメインにもなりますが、われわれデータ/テクノロジー2部門にはそのスキームがあるので、ご検討いただけるとありがたいですね。

坂本そうですね。データだけでなく、業務内容や、ビジネスとしてどういった打ち手を出してきたのか、どんなコミュニケーションをしてきたのか、というところまで、全部洗い出していきます。その上で、この先どうなりたいのか、どうしていくべきだと考えられるのかを、クライアントと一緒に考えていきます。

もうひとつ解決すべき問題は、マーケティング関連部署と情シス関連部署の間にある温度差をどう埋めるかです。その対立は、双方のKPIがまったく違うところに起因します。

マーケティングサイドは、とにかく成果を上げていかなくてはいけないので、チャレンジングなことをしたい。言うなれば、アジャイル的に進めたい。対して、情シスサイドは、リスクヘッジしながら、いかに事故なくシステムを保守・運用していくかという点にフォーカスします。当然、柔軟な対応は難しい。

それぞれが持つ根本的な思想や、事業へのアプローチ、そしてKPIも含めて真逆の立ち位置であることを考慮せずに、強引に同じプロジェクトメンバーにしたところで、コンクリフトが起きるのは当然です。お互いの言い分を聞きながら、落としどころを調整していくのも、われわれの非常に大切なミッションです。

福島弊社の関わり方は、「ほんやくコ●ニャク」だなとよく思います(笑)。

坂本そうですね(笑)。全社的な顧客体験価値を最大化する共通指標としてのKPIを考え、双方に理解・納得してもらってプロジェクトを円滑に進められるように尽力するというところが特に、われわれの領域の強みだと思います。

福島ゆかり(電通デジタル)

データ基盤構築の成功と失敗を分けるもの

――データを活用したマーケティング事業を実施する上で、その成功/失敗を分けるポイントは、何だとお考えですか?

坂本ひとつは、意思決定者の方がコミットして目的を掲げ、その体制を組めるかどうかだと思います。

もうひとつは先ほどお話ししたように、ツール導入という手段を目的化しないこと。課題やビジネスゴールに対して、どうアプローチするのか考えて導入することがとても重要です。そうすれば必ず、データを使ったマーケティング施策は高度化できます。

ツールは「入れて終わり」ではなく、運用や業務に根ざす「定着化」まで行って初めて、導入したと言えます。そのツールを使った業務フローや、定着させるためのインナーブランディング的なコミュニケーションも、開発と並行して行わなくてはいけません。ある意味、オンボーディングに近いと言えるかもしれません。

福島ひとつは、プロジェクト成功のために「ヒト」「モノ」「カネ」「技術」のいずれも必要ですが、特に重要になるのは『ヒト』だと考えます。ふたつめは、どんなに規模が小さくてもいいので、「データで〇〇をしたいから」という目的を掲げることです。

先ほどと重複しますが、データ基盤は全社を巻き込む取り組みになりますので、全体を統括できる意思決定者がプロジェクトに関わってくれるかどうかは大きなカギです。そのカギを回す役割は、データを使ってビジネスをしたいという現場のマーケターが起点になってきます。マーケターは、トップレイヤーに動いていただくために膨大なナレッジと想像力が必要になります。イメージを実現するためには、あまたの選択肢の中から、マーケティングにもツールにも習熟し、ビジネスドメインの知識を持って構想を組み立てる必要があります。それには、外部からコンサルやプロジェクトマネージャーなどをアサインすることもプロジェクトの円滑な推進に必要になります。

この他、データ基盤構築プロジェクトにおいては、データサイエンティストや最新のテクノロジーに精通したエンジニアなど、さまざまな専門性の高いプレイヤーをどれだけ揃えられるかも大事になりますが、まだまだ市場でも希少な人材になりますので自社にとって誰が必要かを目的に合わせて検討する必要があります。

電通デジタルができること

――クライアントのデータ基盤整備において、電通デジタルがお手伝いできることは、何でしょうか?

福島クライアント企業が持っているさまざまなデータを活用できる形に整備すること。その効果的な活用法を一緒に考えること。さらに、実際のシステム構築、運用、戦略策定、戦略の実行まで、電通デジタルにはさまざまなスキームが揃っています。製品の知見を深めるために、多くのベンダーとパートナーとなって情報交換や勉強会も行っています。ベンダーの方とも共同でお客さまのプロジェクトに参画することもあり、チームの組み方を柔軟に行えるのも弊社ならではだと思っています。全方位に対応できる人材を有し、一気通貫のコンサルティングが可能なのが、電通デジタルの強みであり、お手伝いできるところだと思います。

坂本私が所属するデジタルストラテジー事業部のドメインは、構想策定や戦略フェーズが中心であり、いわゆるコンサルティングを主としています。しかし、競合他社との大きな違いは、コンサルだけに留まらない、強い実効性があるということです。定着化まで責任を持ってコミットすることができる。それが、広告領域からCRMまで、フルファネルでクライアントの課題に寄り添う、電通デジタルの強みだと思います。

間口が広い分、幅広い業界の知識/知見が各事業部に集積しており、問題のない範囲でナレッジシェアも行われています。それによって、標準的に提供できるサービスクオリティも日々向上しているというサイクルを生み出しています。その点も、クライアントの皆さまにご期待いただきたい部分です。