2020年10月22日

エクスペリエンス

コラム

CROの注力ポイント(1):データドリブンで課題は見つかる

※所属・役職は記事公開当時のものです。

デジタルからの収益増加は、今やどの企業にとっても必須課題です。CRO(Conversion Rate Optimization、コンバージョン率最適化)は、Webサイトのマネタイズや収益増加といった課題を解決するための、現在もっとも旬で有効な手法です。前回の「CROの全体像を理解しよう」の記事では、「CROとはどのような手法か?」について説明しました。

連載第2回となる今回は、電通デジタルのCROグループで行っている「データドリブンによるCRO」をわかりやすくお伝えします。CROのPDCAをどう回すかでお悩みの皆さまに向けて、データを用いた分析の考え方・進め方、改善のポイントなど、参考になるヒントをご紹介していきます。

CV(コンバージョン)改善のポイント

CROの目的は、CVR(コンバージョン率)を最適化することで、WebサイトのCV増加に寄与することです。CROで成果を出すためには、データドリブンで正しい手順に従って進めることがポイントとなります。

データドリブンとは、購買データ、顧客データ、マーケティングデータ、アクセスデータなどをもとに、データに基づいた判断・アクションをすることを指します。

データドリブンで実行すれば、経験や勘に頼ることなく問題や課題を見つけ出すことができるので、客観性を持った問題提起ができます。また、あらゆるデータを可視化することにより投資対効果の判断のもと、施策実行ができるため合理的な手段です。

電通デジタルでは、CROを以下の手順に従って進めます。

  1. KGIとKPIの設定

  2. 対象者(ターゲット)を明確にする

  3. Webサイトの健康診断(状態把握)

  4. ユーザー行動から主要導線を明確化し、課題特定へ

このような手順を踏むことで、課題をデータドリブンで可視化でき、どこにどのような対策をすべきなのかが明確になります。順番に説明していきます。

KGIとKPIの設定

KGIとはKey Goal Indicatorの略で、日本語では「重要目標達成指標」となります。通常、WebサイトのKGIは売り上げです。

KGIと連動したWebサイト上の指標がKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標」です。KPIは、KGIの目標を達成する上で、その達成度合いを計測するための定量的な指標です。通常は、CV数がWebサイトのKPIとなります。

▼業種ごとの主なCV例

業種 CV
B to B サイト 製品お問い合わせ、カタログ請求
ポータルサイト メルマガ請求、有料会員登録
採用サイト 採用お問い合わせ、採用エントリー
ECサイト 商品購入、会員登録

KPIは、さらにSUB KPI(中間KPI)に分解されます。SUB KPI(中間KPI)には、KPI(CV数)を増やすための各施策の目標値を設定します。CVRも、このSUB KPIの一つです。SEOや広告など、CV数を増やすための流入施策の目標値も、SUB KPIとして設定します。

KGIとKPIの関係性

対象者(ターゲット)を明確にする

データドリブンで分析し、仮説を立てるには、Webサイトに訪れるユーザーの心理を理解しておかなくてはなりません。そのためにまず、どんなユーザーが存在しているのか、どのタイミングでアクセスするのか、どうやってアクセスしているのかを把握し、ターゲットとなるユーザーを明確にします。

そうすることで、ユーザーインサイト(内なる本音)が考察できるようになり、UI(ユーザーインターフェース)上の課題を発見したり、UX(ユーザーエクスペリエンス)の阻害要因を追究したりすることが可能になります。

Webサイトの健康診断(状態把握)

CROに取りかかる前に大事なのは、Webサイトの状態の全体像を捉えること、「Webサイトの健康診断」です。

特定の箇所で起こっているように見える問題も、じつは他の箇所の問題と深く関係していることがあります。また、複数の原因に由来する問題もあります。そうした問題に適切に対処するには、問題と見える箇所だけでなく、あらかじめサイト全体の「健康診断」を行う必要があるのです。

サイトを網羅的に分析し、現状のサイト状況や、トレンド、遷移行動を特定します。分析の信頼性を担保するためには、できるだけ対象となるデータの数が多い方が望ましいので、少なくとも1ヵ月、できれば過去1年間のデータをもとに、ユーザー行動を捉え、サイトを俯瞰して状態を確認します。

ユーザー行動から主要導線を明確化し課題特定へ

ある程度ユーザー行動が明確になったら、主要導線を選定します。主要導線とは、Webサイトに来訪するユーザーの多くが利用する、主要なページ遷移経路を指します。主要導線を選定する理由は主に2つあります。

  1. ユーザーが多いので、KPIの改善に大きく影響する

  2. コンテキスト(文脈)からユーザーストーリーを推察しやすい

もし主要導線に大きな問題があってCVRが低く抑えられている場合、CVのもっとも大きな阻害要因となっている可能性があります。逆に言えば、ここを改善し、CVRを最適化できれば、CV数を大きく増加させることができます。

主要導線を選定したら、それぞれの導線をデータドリブンで可視化します。着目するポイントは、各ページから次のページへの遷移率です。

下図の例では、3つの主要導線の「ページ別訪問数」「CV貢献度」「CVR」「遷移率」を示しています。

主要導線をデータドリブンによって可視化

①「TOP」→「●●製品一覧ページ」→「●●製品詳細ページ」→「エントリーフォーム」

②「TOP」→「▲▲製品一覧ページ」→「▲▲製品詳細ページ」→「エントリーフォーム」

③「TOP」→「▲▲製品一覧ページ」→「▲▲特設ページ」→「エントリーフォーム」

という3つの主要導線のうち、②の「▲▲製品詳細ページ」→「エントリーフォーム」の遷移率が8.62%、③の「▲▲製品一覧ページ」→「▲▲特設ページ」の遷移率が3.33%とかなり低く、ここにCRO上の課題があることがわかります。

主要導線は、Webサイトの業種業態によって多種多様であり、サイトごとにユニークです。この主要導線を起点に、課題を見つけ出していきます。

分析を行ううえで重要なポイント

医者はいきなり治療をすることはありません。患者に対して診察、検査を行い、何の病気か、原因は何かを突き止めてから、適切な治療を開始します。

CROも同じです。Webサイトのどこにどのような問題があり、CV数やCVRが増えないのかを分析するところから始めます。分析の目的と重要なポイントは、以下の3つです。

  1. 原因や課題(主要因)を特定すること

  2. 分析だけでなく、改善策を考え、実行に移すこと

  3. 成果の有無に関わらず、データドリブンで検証すること

順に説明していきます。

1. 原因や課題(主要因)を特定すること

原因の特定は、担当者の主観や経験、勘に頼るのではなく、データを用いて客観的に行う必要があります。主観や経験、勘での施策実行は、ある程度は有効です。しかし、個々人のスキルや経験に依存するため、長期的・継続的に改善を進めるには不適切です。客観的に仮説、実行、検証を繰り返し、ナレッジを蓄積するには、データドリブンが不可欠です。

2. 分析だけではなく、改善策を考え、実行に移すこと

もちろん分析をしただけで満足してしまってはいけません。分析した結果をもとにしてCV数を増加させるには、改善策を考え、実行に移すことが必須です。当たり前のことじゃないかと思われるかもしれませんが、分析ばかりしてなかなか改善に着手しない例は、じつはかなり多く見られます。

デジタルでは、さまざまなデータを大量に取得できるようになり、ユーザーの行動がかなり可視化できるようになっています。一方で、分析をしようと思えばいくらでも細かく分析できるため、分析自体がおもしろくなってしまうと、終わりがありません。

原因や課題が見えたら、いったん分析を切り上げる。分析したら、改善策を考え、実行する。この3つは必ずセットで実行してください。

3. 成果の有無に関わらず、データドリブンで検証すること

改善策実行後は、最低2週間、最長でも1ヵ月、具体的に期間を区切って、データドリブンで成果を検証します。

2週間以下、たとえば1日単位や1週間単位だと、週間のトレンドにより誤差・偏りが発生してしまいます。週間トレンドの影響を平均化するためにも2週間以上から1ヵ月での成果検証が望ましいです。稀に、1ヵ月以上の検証も持続するケースがありますが、

  • 長期化しても影響がないと判断できる場合

  • 統計的有意差に必要なサンプル数の確保

など、CROの経験者の監修のもと、実施をオススメいたします。

思いどおりに成果が上がれば、改善ポイントをナレッジにして、他の箇所の問題・課題にも応用できないか検討すると良いでしょう。

逆に成果が上がらなければ、なぜ失敗してしまったのか、その要因をナレッジとして共有することで、その後に同じような失敗が発生するのを防げます。失敗施策の蓄積も重要な資産となります。

CROではどのようなデータを活用しているのか?

CROグループのデータドリブンで使っているデータは、GoogleアナリティクスやAdobeアナリティクスで取得できるアクセスログだけではありません。

クライアント企業が持っている基幹データ、顧客データ、会員データ、広告データ、購買データに加え、ユーザーの行動ログ、ページ内アクションのログと言われるマーケティングデータなど、複数のデータを適切に使い分けて、Webサイトにおける課題を見つけ出します。

複数のデータから課題を見つけ出す=データドリブン

上記各種データを分析し、CV最適化のための問題や課題を見つけ出し、さらには施策の効果を検証するために、CROグループでは以下のようなツールを使っています。

行動可視化ツール

Webサイト上でのユーザーの行動の順序や流れを具体的に見ることができるツールです。株式会社ビービットのユーザグラムは、「特定の顧客を絞って見る」「顧客行動の流れを見る」ことに特化しているため、問題・課題の発見や、効果検証がしやすいのが特徴です。

アクセス解析ツール

PV(ページビュー)数、訪問者数、滞在時間、訪問回数、訪問頻度、Webサイト内の移動経路、サイト内検索キーワード、参照元サイトなど、ユーザー像を知るための基本的なデータを取得できます。Google アナリティクスやAdobe Analyticsなど、クライアント企業が導入しているツールを使います。

ヒートマップ解析ツール

ユーザーのタッチ、視線の集中度、スクロール到達率が、Webページ上に重ねて色別で表示され、PC、スマートフォン、タブレットでユーザーがどのような操作や行動をしているかを可視化できます。電通デジタルCROグループではPtengine(ピーティーエンジン)を主に使っていますが、ビューザブル、ユーザーインサイト、Clicktale(クリックテール)、SiTest(サイテスト)など、クライアント企業導入のツールを用いてカスタマイズすることも多いです。

ヒートマップ解析ツール概要

まず、ユーザーがサイトをどのように回遊しているか、ユーザグラムでモーメント(顧客行動の最小単位)を特定・把握し、類型化します。次に、アクセス解析ツールの全量データにあてはめて、課題の影響範囲と、改善施策の効果を推定します。

さらにヒートマップでページ面を分析し、主要導線における遷移行動上の課題をあぶりだします。このように「導線」と「面」の両軸からアプローチすることにより、課題抽出の精度を高めています。

電通デジタルのCRO事前分析サービス紹介

CROを実施するにあたり、まずはWebサイトの状態把握を行いたいというお客さまのために、電通デジタルでは「オウンドサイト診断」というプランを設けています。

[オウンドサイト診断]1/3:サポートケイパビリティ

[オウンドサイト診断]2/3:各種ツールを用いたサイト分析

[オウンドサイト診断]3/3:改善のためのPDCAサイクル

「オウンドサイト診断」は、ライトに現在の状況を可視化するプランです。Webサイトを徹底的にデータドリブンし、改善を実行することでCVは確実に増加します。状況を把握した上で、具体的な改善策を実施したいという場合は、その先のCRO、CV改善、LPO(ランディングページ最適化)などを承ります。より詳しく知りたい場合は、お気軽にお問い合わせください。

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