2020年09月23日

エクスペリエンス

コラム

これからのEC戦略は、「オウンドEC」と「プラットフォームEC」の併用がスタンダードになる

※所属・役職は記事公開当時のものです。

新型コロナウイルスの感染拡大は、日本のEC市場にも大きな影響を及ぼしています。新型コロナウイルス禍を契機に、従来はあまりECを利用していなかった高齢者層や10代の若年層の利用率も伸長傾向にあり、ここに来てECがあらゆる世代の日常生活の一部となりつつあります。

「密集を避け外出を控える」「自宅で過ごす時間が増える」という新しい生活様式の普及が叫ばれる現在、あらゆる企業にとって、EC戦略の構築や見直しは急務です。

本稿では、電通デジタル デジタルコマース事業部でAmazon、楽天市場を中心としたプラットフォームECを担当する4名が、企業がこれから取り組むべきEC戦略について、その概要を説明します(全2回)。第1回は「これからのEC戦略は、『オウンドEC』と『プラットフォームEC』の併用がスタンダードになる」です。

オウンドECとプラットフォームECを併用すべき理由

ここ10年ほど、スマートフォン(以下、スマホ)の普及や宅配サービスの拡充などを背景にEC市場が急激に拡大しており、2010~2018年の8年間で市場規模は2倍以上に拡大しています。

2019年に経産省が発表した電子商取引に関する市場調査[1]によると、2018年度のBtoCにおける日本国内のEC市場規模は17兆9,845億円で、EC化率は6.22%、市場規模の対前年比は8.96%増とあり、今後も大きな伸びしろがあると見ることができます。

日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)

日本のBtoC-EC市場規模の推移(単位:億円)[1]

長らく、オウンド(自社)ECを運営する企業にとっては、Amazonや楽天市場に代表されるプラットフォームECは多くの場合「競合相手」とみなされる存在でした。しかし近年、その認識は大きく変わりつつあります。

これからは、オウンドECとプラットフォームEC、それぞれの役割を考慮しつつ両軸で展開していくことを視野に入れるべきです。さらに、プラットフォームECもAmazonだけ、楽天市場だけでなく、両方――さらにそれ以外のプラットフォームも――を可能な限り並行して同時に活用することが望ましいと考えられます。

オウンドECとプラットフォームEC両方に取り組む企業においては、現時点では、売り上げ規模の点でオウンドEC店舗とプラットフォームEC店舗の間に大きな差があるケースがあります。しかし、だからといって安易に「どちらか一方でいい」と判断することは危険です。リアルの店舗展開においても、自前の店舗出店、ショッピングモールへの出店、商品のみを小売りに卸す、などを戦略的に併用するケースがあるのと同様に、どちらか一方に頼るのではなく、それぞれの強みと役割を明確にしながら、オウンドEC、プラットフォームEC双方を育てていくことが重要です。

プラットフォームECでは、プラットフォームごとに特徴があります。各プラットフォームにて蓄積されたデータを分析し、最終的にオウンドECやその他マーケティングに活かしていくといったことも可能です。

ECモール登場から約20年で変わったこと

オウンドEC、プラットフォームECを問わず、ECに取り組む多くの企業が抱える問題点として、オンライン(EC)とオフライン(リアル店舗)を別物として分けて考えていることが挙げられます。

例えばオフラインは物流部や営業部が、オンラインは新設されたEC部や宣伝部、マーケティング部が担当するといったケースです。

オンライン/オフラインの主幹部署を分けること自体は必ずしも悪いことではありませんが、相互が分断され、連携が取れていないとすると経営上の大きなリスクとなりますし、実際その点を課題として自覚されているクライアント企業が多いことも事実です。

オンライン/オフラインが分断されているデメリット

スマホが普及して以降、生活者にとってECとは購入の場としてだけではなく、商品情報収集の場としても非常に重要な役割を担っています。

マクロミルの調査によると、プラットフォームECは、商品購入におけるさまざまなフェーズにおいて、その他の情報プラットフォーム(比較サイト、メーカーサイト、検索エンジン、キュレーションサイト、ブログ、SNSなど)と比較してより多く接触されていることが分かっています。

生活者の行動変化

生活者の行動変化

かつては、量販店で実物を確認し、購入はECで行う「ショールーミング」が取り沙汰されました。今ではその逆に、プラットフォームEC上で口コミやレビューをはじめ参考情報を収集、あらかじめ候補を絞り込み最終的に実店舗で現物を確認、納得してから購入するという「Web(ウェブ)ルーミング」を行うユーザーも一定数いることが明らかになっています。生活者は利便性を求めて行動しており、オンライン/オフラインの垣根は意識されなくなっています。当然のことながら、企業活動においてもそのトレンドに応じたマーケティング戦略が求められていると言えます。

生活者の行動変化

加えて、ECの領域においてはユーザーの行動に鑑みてオフラインとオンラインを統合して捉える概念が、O2O(Online to Offline)、オムニチャネルを経て、OMO(Online Merges with Offline)という捉え方に進化してきています。

OMOとは「オンラインとオフラインの融合」と位置付けられることが多いですが、もう少し踏み込んだ見方をすると、「現在はオフラインと位置付けられている領域も、やがてデジタル化していく。その結果、すべてがオンラインに包含されていく。」と理解した方が本質的であると言えます。

プラットフォームECの評価や検索結果の上位表示は、オフラインでのプロモーションや小売店での棚割り確保にも大きく影響しますし、また逆に、店頭での評判がプラットフォームEC内での検索強化につながり、相互に影響を及ぼします。
このことは、企業のマーケティングにおいて、ECが実売以上の意味と影響力を持つことにもつながります。

EC事業の再構築はプラットフォームECの対応強化から

プラットフォームECには、3つの注目すべき特徴があります。

  • ①すべての購買ファネルに応じた施策を内包している

  • ②マス広告のプランニングとの相性が良い

  • ③「データ」「集客力」「棚(売場)」という3つの価値を持っている

以下、順に説明します。

①すべての購買ファネルに応じた施策を内包している

通常、一定の金額以上のモノやサービスを売る際には、「認知・興味」「情報収集」「比較検討」「意思決定」という段階を踏んで、最後に購入に至ります。

購買ファネルにおいて、それぞれのフェーズごとに最適なアプローチを仕掛けていくのはマーケティングの定石ですが、プラットフォームECはこのファネルごとに行われるべき施策をすべて内包している点が、大きな価値の一つとなっています。プラットフォームECには必ず存在する、レビュー、ランキング、動画による商品紹介、商品詳細などはすべて、お客さまの意思決定に寄与する一方、購買ファネルに応じた施策でもあるのです。

ECプラットフォームはすべてのファネルに応じた施策を兼ね備えている

②マス広告のプランニングとの相性が良い

ネットにつながってさえいれば「いつでもどこでも購入できる」という物理的制約の少なさは、マス広告との相性の良さにつながります。
従来マス広告は、直接的に買い場とつながっておらず「購買と遠い」とみなされることがありました。「マスプランニングの役割は"認知"や"ブランディング"である」と言われがちな理由もそこにあります。これがプラットフォームECの普及によって大きく変わりつつあります。マス広告がきっかけとなって検索をします。そして、プラットフォームEC内で情報収集して、気に入ったらその場で購買まで完了することができます。プラットフォームECの受け皿があることにより、マス広告の費用対効果の向上が期待できるという点で、両者は非常に相性がいいと言えます。

電通デジタルは、株式会社電通との相互連携により、マス広告とEC施策を一気通貫で連携させた統合的なマーケティングを、プランニングだけでなく実施~運用フェーズまでやりきることができる強みがあります。

③「データ」「集客力」「棚(売場)」という3つの価値を持っている

メーカーやブランドにとって、プラットフォームECには「データ」「集客力」「棚(売場)」という3つの価値があります。

ECプラットフォームの優位性③ 3つの側面

プラットフォームECは、会員データ、閲覧データ、検索データ、購買データなど多角的かつ、膨大なデータを保有しています。また直接的な購買データ以外にも、ライフスタイルや金融データなど、他サービスに紐づくデータを保有しており、これらのファクトデータを複合的に活用した施策が可能となります。

次に集客力ですが、プラットフォームECには、他のデジタルプラットフォームに匹敵する大規模なトラフィックがあります。しかも、プラットフォームEC内のトラフィックは他のデジタルプラットフォーム内のトラフィックと比較して、購買意向や目的が明確なケースが多く、マーケティングの観点から非常に魅力的であると言えます。

最後に棚(売場)。プラットフォームECの棚(売場)はリアル店舗のような物理的制限がなく、事実上「無限」に広げられます。これにより、レコメンドやクロスセルといった、それぞれの商品特性を活かした販促支援がやりやすいという特性があります。生活者の購買に近い場で、仕入れによる商品戦略からプロモーションまで、実売に効果のある施策の実施が可能です。

中国では2003年、SARSを機にあらゆる業態がオンライン転換して今に至っていると言われます。新型コロナウイルス禍が収束しない現在の日本も、今後、同様の大転換を遂げる可能性があり、特にEC領域における競争は激化すると考えられます。

そのためにも、今後のOMOを見据えたEC戦略の策定(見直し)への取り組みは不可欠です。とりわけプラットフォームECを活用し、今から運用知見をためていくことは、これからの時代のECを含めた事業戦略の構築/再構築において重要な一歩となります。

脚注

出典

1. ^ "電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました". 経済産業省.(2019年5月16日)2020年6月13日閲覧。