2019.12.24

史上初!アドビ & セールスフォース・ドットコム 一緒に一度に話を聞かせていただきました【完全版】

運営の効率化と利用者の満足度向上を目指す

2019年9月11日、電通ホール、および電通本社ビルにて「People Driven Marketing®実践セミナー2019」が開催されました。今秋からスタートしたPDM3.0のご紹介や、最新の事例紹介など、計20のセッション、セミナーが行われ、いずれも立ち見の出る盛況でした。中でも多くのお客様を集めたセッションの1つが、「史上初! アドビ & セールスフォース・ドットコム 一緒に一度に話を聞かせていただきました」です。本記事では、セッション内でご紹介しきれなかった部分を加筆補足していただいた、【完全版】としてお届けします。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

アドビ システムズ 株式会社
デジタルエクスペリエンス営業本部
プロダクトエバンジェリスト 兼 シニア ソリューション コンサルタント

安西 敬介

株式会社セールスフォース・ドットコム
執行役員 マーケティングクラウド本部 兼 戦略ソリューション担当

伊奈 憲一郎

執行役員
データ/テクノロジー部門長

中津 久美子

(左から)伊奈憲一郎氏、中津久美子、安西敬介氏

中津 : アドビさんとセールスフォース・ドットコムさんが、オンサイトで、並んで登壇されるというのは、初めてのような気がしまして、図々しくも「史上初」と謳わせていただきました。今回のセッションではぜひ、両社の世界観の違いを感じていただけたらと思っております。

私がお二人とお付き合いさせていただいて7~8年になりますが、これまでも、様々なプロジェクトでご一緒させていただいています。昨今では電通グループが提唱するPeople Driven Marketing®(以下、PDM)に、両社ともに多大なご協力をいただいており、一緒にソリューションを開発させていただいたりもしています。

2019年も、さまざまなことに取り組ませていただいていますので、ここで簡単にご紹介します。

※ デュアルファネル™のマーケティングとは、顧客一人ひとりに寄り添い、適切なコミュニケーションを行うため、認知から好意、興味・関心、意向、購買、その先の再購入、そしてロイヤルティーの育成・向上までの網羅するアプローチのこと(下図参照)。

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今回は、下記の2点に関して、それぞれお話を伺っていきます。

  1. デジタルマーケティングのために、どのようなソリューションをお持ちですか?
  2. デジタルマーケティングの注力ポイントと、これらの発展について

それではまず、伊奈さんから、よろしくお願いします。


提供可能なソリューション群 (セールスフォース・ドットコム)

伊奈 : ここでは、私たちがソリューションを提供しているお客様が抱える課題に関して、少しお話ししたいと思います。

お客様のお客様、すなわち消費者の方々が、お客様に対してどのような期待をされているか。それは、これからお話しする3点に集約されると、私たちは認識しています。

  1. 一貫したやり取り
    今は非常にマーケティングチャネルが増えていますが、そういった中でも、消費者の皆様は、一貫したやり取りをしてほしいという期待を持っています。
  2. 理解してほしい
    さらに、自分たちの興味関心、感情も含めて、理解してほしい。その上でコミュニケーションをしてほしいと願っています。
  3. 接点履歴に基づいたレコメンド
    消費者の皆様は、「あの日に店舗に行った」「コールセンターに電話した」「Webを見た」など、ご自身のこれまでの行動を鮮明に覚えています。そうした行動データに基づいて、いろんなレコメンデーションをしてほしいというニーズがあります。

こうした要望が、かつてないほど高まっています。すなわち、消費者の方々は「統合されたつながりを企業に期待している」というのが、私たちの認識です。

その希望にこたえるために、私たちが提供しているのが、「カスタマーサクセスプラットフォーム」です。

営業、店舗、コールセンター、デジタルマーケティング、コマース、IoTなど、あらゆる接点におけるアプリケーションサービスを提供しています。その接点データを一元的に統合し、そのデータを基に一貫したコミュニケーションを実現するのが、私たちの提供するプラットフォームのコンセプトです。

特に、BtoC事業者向けとして、unknownな消費者に対しては、私たちのDMPソリューションであるSalesforce Audience StudioによるAudience Targetを実施し、精度の高い報告を提供します。Salesforce Audience Studioは、さまざまな外部データと連携していますが、その中には電通グループのPeople Driven DMP®も含まれています。

また、knownな消費者に対しては、マーケティングプラットフォームであるSalesforce Marketing Cloudを活用して、クロスチャネルコミュニケーションを実施します。こちらは、Google アナリティクス360 とネイティブ連携しており、さまざまな接点履歴を一元的に統合、分析できるようになっています。これによって、コールセンターでも、過去のデジタルコミュニケーションを含めて一貫したコミュニケーションが実現されるようになっています。

伊奈憲一郎 氏(セールスフォース・ドットコム)

提供可能なソリューション群(アドビ)

中津 : ありがとうございました。では、次は、安西さん。アドビさんのソリューション紹介をお願いします。

安西 : 私たちは、大きく分けて3つのクラウドソリューションを持っています。1つ目は、Photoshop、IllustratorなどのクリエイティブプラットフォームAdobe Creative Cloud。2つ目は、PDFを核としたドキュメント管理ソリューションAdobe Document Cloud。3つ目がAdobe Experience Cloud。 これは、オンオフ含めたさまざまなデジタルコンタクトポイントとバックエンドデータをつないで、最高の顧客体験を提供するための統合型マーケティングクラウドソリューション です。

今回、私たちのソリューションを紹介するにあたって、3つのポイントに絞ってお話しします。

  1. 顧客体験
    アドビでは、「最高の顧客体験は最高のコンテンツから始まる」と考えています。企業と顧客の間にはコンテンツがあり、両者はそれを介してコミュニケーションを行っています。つまり、最高の顧客体験を提供するためには、良質のコンテンツが絶対に必要です。だからこそ、コンテンツを制作、管理、提供、最適化、と一貫して回すことができるツール群を持っているのは、大きなポイントだと思っています。
  2. デジタルコンタクトポイント
    本当に今、いろんなコンタクトポイントが増えてきています。PC、モバイルアプリ、メール、サイネージ、ソーシャル、広告。最近だと、スマートスピーカーやIoTなど、これらすべてを統合して計測し、最適化する必要があります。現状あるものはもちろん、新しいものについても常に対応していくプラットフォームを目指しています。
  3. ワークフロー
    ワークフローは、アドビが昔から重要視しているキーワードです。クリエイターやマーケターが最短でアクションし、それによって提供する顧客体験を最適化するためのワークフローを実現するために、さまざまな機能強化を実現しています。その1つが、人工知能(AI)とマシンラーニング(機械学習)を統合したAdobe Senseiであり、ID統合による製品間の連携にも、積極的に取り組んでいます。

さて、Adobe Experience Cloudですが、ごく簡単に全容をご紹介しますと、広告(Adobe Advertising Cloud)、データ(Adobe Analytics Cloud)、コミュニケーション(Adobe Marketing Cloud)、コマース(Adobe Commerce Cloud)と、大きく4つのクラウド群に分かれており、それぞれのクラウドの下には、さまざまなソリューションがぶら下がるという構成になっています。これらすべてをAdobe Experience Platformという統合プラットフォームとして、提供しています。

Adobe Experience Cloudの製品群は、広告配信、データ管理、MA、コミュニケーション、サイト管理、パーソナライズ、コマースなど、一連のフローとして持っており、必要に応じて連携して使っていただきます。組み合わせることで、掛け算的にバリューが出ます。

安西敬介氏(アドビ)

今後注力すること、どのような発展をしていくか?(アドビ)

中津 : 次の質問は「デジタルマーケティングの注力ポイントと、これからの発展」ということで、今度は安西さんから、お願いします。

安西 : 私たちは、企業のデジタルへの投資は、現在、3つ目の大きな波が来ていると考えています。

1つ目の波は、ERP(統合基幹業務システム)など、バックオフィスへの投資。2つ目の波は、CRM(顧客管理システム)とかSFA(営業支援システム)などのフロントオフィスへの投資。まさにセールスフォース・ドットコムさんが強い部分ですよね。そして今、3つ目の波として、「顧客体験」に、投資する流れが来ています。

「顧客体験」を実現するためのポイントは2つあります。1つは、オンオフを含めたカスタマージャーニーの設計、もう1つが、パーソナライズです。そのためには、非認知から認知まで含めて、データをきちんと統合して、管理していく必要があり、データガバナンスの重要性も増しています。このポイントをまとめて、私たちは、顧客体験管理、すなわちカスタマーエクスペリエンスマネジメント(Customer Experience Management)、CXMと称しています。CXMという概念は新しい言葉ではありませんが、「顧客体験」というキーワードで展開していくにあたって、アドビとして再定義しています。

今後、新たに次世代CXMとして求められるのは、私たちが「4R」と呼んでいる4つのポイント――適切な人(Right Person)に、適切なコンテンツ(Right Contents)を、適切なチャネル(Right Channel)、適切なタイミング(Right Timing)で提供すること、を実現するデータマネジメントです。なお、先ほどご紹介した、Adobe Experience Platformは、次世代CXMとして実現すべきことを、統合的に管理できるプラットフォームとして、リリースしています。

また、オフラインでのパーソナライズの実現も今後の発展ポイントです。

「Adobe Symposium 2019」で公開した動画(http://video.tv.adobe.com/v/28323)では、MicrosoftさんのFace API(顔認識ソフトウェア)を搭載したサイネージを活用して、リアルタイムにデータを計測、そこからパーソナライズをしてコンテンツ配信といった流れを、ご紹介しています。また、商品に添付したQRコードやRDIDから、商品に関するデータやオンラインレビュー、メールでそれらの情報を受け取るといった仕組みも実現しています。こうした、オンオフを問わない顧客体験を作っていくのが、これからのアドビの進むべき姿だと思っています。

CXMをさらに深化させていくためには、さらに企業内のデータなども統合していく必要があります。これを実現するのは1社だけでは難しいということで、2018年にOpen Data Initiative(ODI)というアライアンスを、MicrosoftさんとSAPさんとで立ち上げました。共通のデータモデルを作り、力を合わせてリアルタイムで顧客の全体像を把握しようという試みです。この3社だけではなく、いろんな会社さんに入っていただきながら、取り組む予定でいます。

中津 : ありがとうございます。せっかくなので伊奈さんに伺いたいのですが、ODIのニュースを聞いたとき、どう思いましたか?

伊奈 : これはセールスフォース・ドットコムへの包囲網じゃないか、という報道もありました。ただ、個人的には、私たちと同じ路線にアドビさんも来るんだなと、好意的に感じましたね。


今後注力すること、どのような発展をしていくか?(セールスフォース・ドットコム)

中津 : それでは、セールスフォース・ドットコムの今後の注力ポイントをご紹介ください。

伊奈 : 最近のデジタルマーケティングの潮流から、私たちが重視しているトレンドを3点、ご紹介します。

  1. CRM連携
    オムニチャネルや、O2O(Online to Offline)に関する議論は、長い間ずっとされていて、いまだに実現しえない課題のようなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。ただ、実際は、Salesforceを導入することで、もうすでに、CRM連携による顧客コンタクトポイントの最適化を実現されているお客様がどんどん出てきているということは、改めて強調しておきたいポイントです。Salesforceでは、「統合された顧客エンゲージメント」「いかに"個"とコミュニケーションできるか?」「いかに多種多様な"接点"をカバーできるか?」にポイントを置いて、アプリケーション間連携、データ連携が自動的になされるようになっており、パーソナライズなアクションを実現しています。
  2. リアルタイム/ジャーニーオーケストレーション
    皆様のご認識どおり、消費者の皆様の購買行動はどんどん早くなっています。だからこそ、複数のコンタクトポイントに広がっている消費者の方々の行動をリアルタイムに捉えて、あらかじめマーケターの皆さんが設計したルールに基づいて、最適なチャネルでご案内をしていく、というプラットフォーム作りが必要になってきます。こういったことを実現したい、というお問い合わせはとても多いのです。ただ、実際にどのようにユースケースとして作っていけばいいかわからない、というケースも多い。ですので、私たちとお客様が一緒にディスカッションをさせていただきながら、問題点を洗い出し、カスタマージャーニーを作っていきます。
  3. オーディエンスインサイト
    購買行動がどんどん消費者中心になっている今、マーケターはより深く消費者様のインサイトを掴むことが重要になっています。私たちは今まで、CRM領域で展開してきましたが、現在はアド領域にもソリューションを広げています。そこで、CRM領域とアド領域のデータを連携させて、より深いインサイトを得るための取り組みを進めています。
    CRM領域に関しては、カスタマージャーニーを設計して、One to Oneのコミュニケーションシナリオを作り、オウンドのチャネル中心でコミュニケーションをしていきます。
    アド領域においては、1stパーティデータを活かしながら、電通グループのPeople Driven DMP®のデータと掛け合わせることで、例えば、ライフイベントの変化を察知して、その消費者に対して精度の高い広告を配信したり、1stパーティのチャネルでご案内していく、といった取り組みを進めています。
    外部データとの連携ということで、昨今、cookieに関するセキュリティの議論も非常に盛んになっていますが、オプトインを実施する仕組み作りは積極的に行っています。消費者の皆様との信頼関係を維持しながら、データを正しく活用して、さらには消費者の皆様にとってよりためになるようなコミュニケーションを実現していくのが、私たちの取り組みです。

中津 : ありがとうございました。安西さん、セールスフォース・ドットコムさんのお話を伺って、どうお感じですか?

安西 : どちらが先に言い始めた世界観なんだろうなぁと思いながら、聞いていました。

伊奈 : そうですね、はい。

(左から)伊奈憲一郎氏、中津久美子、安西敬介氏

電通グループへのご期待と今後の展開について

中津 : どちらも一歩も引かないという感じですが、最後に、図々しいお願いではあるのですが、2社様から電通グループへのご期待と、今後の展開を、ひとことずつ頂戴したいと思います。

伊奈 : CRM連携の事例には電通デジタルと一緒に取り組んだものも多くあり、戦略策定からシナリオプランニング、システム構築、活用支援まで、End to Endの提案力と実行力を発揮していただき、プロジェクトを完遂できたことに感謝しています。今後は、PDMを活用した顧客に対する深いオーディエンスインサイトという分野で協働できることを心より期待しております。

我々も、電通デジタルも、消費者を中心とした顧客体験を大切にするという共通意識を持っています。"人"を基点としたPDMと、顧客を中心に捉えたカスタマーサクセスプラットフォームは共感する部分が多く、最適なパートナーシップであると考えています。両社の強固なパートナーシップにより、3rdパーティデータを活用した顧客のより深いインサイトの提供、それを踏まえたカスタマーエンゲージメントの提供をクロスチャネルマーケティングで推進し、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションをご支援していきたいと思います。

安西 : 私たちは、Adobe Audience Manager Audience Marketplaceというデータマーケットプレイスを持っていますが、そういったところに、電通グループも加わっていただけたのは、強みになってくるかなと思います。

また、電通デジタルには、Microsoft AzureとAdobe Experience Cloudを連携するソリューションを作っていただきましたが、包囲的にカスタマージャーニーをよくするという点でとても期待値が高いので、ぜひ、今後もお付き合いいただけたらと思います。

これからのデジタルコミュニケーションそしてCXMを実現していくにあたり、そこには必ずデータがあり、そして設計や運用が存在します。People Driven DMP®との連携に加えて、多角的な連携を行い、両社で施策として展開していくことでエコシステムを拡張していきます。データから運用までワンストップに実現できるからこそ、より多様化するエクスペリエンスの提供に不可欠なパートナーとして、これからも電通デジタルと一緒にこの分野を盛り上げていければと思います。

中津 : 安西さん、伊奈さん、ありがとうございました。

この両社とPeople Driven DMP®のデータ連携により、顧客企業のみなさまには、自社が保有するデータ(1stパーティデータ)に加えてPeople Driven DMP®が保有するデータ(3rdパーティデータ)、さらにはマーケットプレイスに参画する特定企業のデータ(2ndパーティデータ)との連携が可能になり、顧客の一層の可視化や潜在顧客のさらなる発掘、広告配信の効率化などが実現できるようになります。またCRMにおいても、顧客インサイトに基づく最適なモーメントを捉えた施策の実行と、それに伴う顧客の定着化や優良化が可能になります。

なお、今日ご紹介したソリューションについては、すべて電通グループで提供可能となっておりますので、デュアルファネル™ソリューションでの運用も含めて、どうぞお問い合わせください。

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