2019.11.25

カスタマー目線を貫いた「小さな成功」が、 やがて組織全体を変えていく

“実践論”としてのカスタマーサクセス。『Success4』開催記念対談 Vol.3

最近、耳にする機会が増えた「カスタマーサクセス」という言葉。これは単なるブームではなく、世の中が変化する中で生まれた、新しいコンセプト。
なぜなら、デジタル時代にはあらゆる業種のサービスが「売って終わり」ではなく、「いかに使い続けてもらうか」を重視するように変わっていくからです。

けれども、実際に事業に取り入れる難しさを感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、カスタマーサクセスを推進する識者の皆さまにお話を伺い、そのヒントをシリーズで探ります。

第3回の本コラムでは、サービスプロセスデザイン事業部長 魚住高志が、「一筋縄にはいかない変革の中での、実践推進のしかた」について、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 セールスマーケティング事業部 エグゼクティブマネジャー 泉忠治氏にお聞きします。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

サービスプロセスデザイン事業部
事業部長

魚住 高志

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
セールスマーケティング事業部
エグゼクティブマネジャー

泉 忠治

カスタマーサクセスの実践が難しい理由

魚住高志(以下、魚住): 今、日本でカスタマーサクセスの実践にハードルを感じている企業は少なくありません。そこで今回は、実践推進のヒントを探っていけたらと思っています。

泉 忠治(以下、泉) : はい。カスタマーサクセスの浸透に向けて、顧客サービスはその質を高め続けることが重要になり、そのため業務・ITは、リアルとデジタルとを横断した取り組みが必要になります。

一方で企業の現状は、部署・機能別の活動が中心。横連携も難しいし、どこから変えていけばよいかわからない、という悩みの声を多く聞きます。

魚住 : さらに新しいことをやろうにも、既存事業の売上の毀損がないことを証明するのが難しく、進まないという声も。

: ありますね。でもそれでしたら、弊社のお客さまの事例が役立つかも知れません。

同じような悩みを持ちながらも、実際に成果を証明し、変革を進めていらっしゃる企業さまです。

住 : ぜひ詳しく教えてください。


未来を切り拓いたのは、タスクフォース型プロジェクト

: そのお客さまは顧客サービスの改善が、満足度と事業収益に貢献することを証明するべく、実証実験を行いました。ポイントは、「とある領域に限定し、小さく活動を始めたこと」でした。

魚住 : それはどういうものでしょう?

: カスタマーサクセスは、ユーザーを成功に導くためにあらゆるコンタクトポイントで一貫した体験を設計する必要があるので、組織全体で連携が必要という話を、本コラムの第2回で田島さんがされていましたよね。

ただ、通常はどの企業も、マーケティング部、営業部、サポート部、商品開発部など、機能カットで別々に活動をしています。全部署が連携すると効率悪化は否めないので、どうしても自部署に閉じた活動になりがちです。

魚住 : そして組織全体を一気に動かすのは、難しい。

: そうなんです。そして、一気に動かすことには、やはりリスクが伴います。だから、変わる必要は感じても、なかなか動けない。その気持ちはとても理解できます。 そこで我々は、その企業の各部署のリーダー格の方に参加いただき、領域を限定し、緊急性の高い特定の課題に取り組むタスクフォース型で、プロジェクトを立上げました。

魚住 : 確かに、いきなり全社でというのは難しくても、領域を限定して始めることはできそうです。

: まず始めは、ユーザーがどうすれば自社サービスで満足に至るのかの仮説を立てました。いわゆるカスタマージャーニーの設計です。その上で、そのジャーニーを成立させるための要件を同時に定め、顧客サービス・業務・ITのあり方を一気に実際の現場で試行していきました。

魚住 : トータルでのトライアルとなると、大変だったのではありませんか?

: はい、正直、最初は弊社もお客さまも暗中模索の状態でした。当初想定していたユーザーの反応と全く異なったり、設定した業務も変更が必要になったり。

ただ、リアルタイムでユーザーデータを常に取得できていたので、それを元に、どうサービスを変えるか、そのためのオペレーションはどうするかなど、ほぼ日次で話し合い、改善し続けていくことで、徐々に成果が見え始めました。

魚住高志(電通デジタル)

実践と失敗を繰り返しながら、精度を上げていく

魚住 : 素晴らしい。日に日に改善していくのは面白いですね。どんな成果があったんですか?

: そのお客さまの商材の場合、一度ご契約するとなかなかユーザー接点がなくなります。その間にもユーザーの生活に変化はあるのですが、接点がないのできちんと把握や対応ができず、徐々に信頼感や存在感がなくなってしまう状況でした。

そこで、ユーザーの生活で変わったことや心配ごとがないかを把握して、適切なサポートができるよう、デジタルとリアルを組み合わせて、後日のお声掛けをするようにしました。
すると、ユーザーから「契約した後も、私のことを気遣ってくれていると思うと、とても安心できます」と、喜びの声が届くまでになったんです。

魚住 : それは嬉しいですね!

: 正直、ホッとしました(笑)。その企業さまが変革を実行するかどうかを決める実験だったので、責任は重大でした。けれど、これはいけると確信しましたね。

魚住 : どれくらいの期間、実証実験を行っていたのですか?

: 約半年くらいです。

最終的に、指針としていた数値は改善され、取り組みの事業貢献を証明するに至りました。

魚住 : いろいろと大変なことも多かったと思いますが、成功のポイントは何だったのでしょう?

: 計画を立てることに重きを置かず、とにかく実践と失敗を繰り返す中で、当初の計画の精度をスピーディーに高めていったことでしょうか。

魚住 : なるほど。クイックに実践を行い、PDCAを回していった。

: もちろん、事前の計画が不要とは思っていません。

ただ、ユーザーのニーズが多岐に渡り、あらかじめすべてを予測することは難しい。そんな状況下では、計画に重きを置くよりも、実際にユーザーと接触する中でニーズを汲みとり、対応力を高めることのほうが有効であり、効果が出やすいと考えました。

魚住 : 変化が激しく、すぐにアップデートが求められる今の世の中に合ってますね。

泉忠治氏(パーソルプロセス&テクノロジー)

「小さな成功」から始まる企業変革

: その企業さまはその後、証明した成果をもって、領域限定だった取り組みを、全社的な取り組みへと今、発展させていっています。

もちろん取り組みの規模が大きくなるため、組織、業務、システムの準備も、トライアルより綿密に行う必要がありますが、すでにどういうアプローチが成果が出るのかは証明されているので、それを横展開する形で変革を推進できています。

魚住 : 組織の納得感と調整が必要になる変革推進においては、非常に有効なアプローチですね。

: はい、そう思います。

今、変革の必要を感じているが、どう着手してよいかわからないとお悩みの企業さまには、いきなり全部を変えるのではなく、まずは小さな成功で取り組みの意義を証明し、それをもとに、全社的な取り組みへと変えていくアプローチが、一つ有効なのではないかと考えます。

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