2019.07.25

AIが切り開くマーケティングの未来

AWA 2019セッションレポート第二弾

#AI

2人は交互にプレゼンテーションを行い、最先端のAIテクノロジーがどのような形でマーケティングに関わっているのか、そしてどのようにマーケティングの形を変えようとしているのか、その現状を紹介しました。後半には、中野氏によって、実際にDataRobotを使用したモデル作成のデモンストレーションも行われました。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

電通デジタル
チーフコンサルタント

有益 伸一

DataRobot
データサイエンティスト

中野 高文

AIの民主化を阻むもの

まず本題として有益が取り上げたのが、「ビジネスの現場ではAIの需要は増える一方であるにもかかわらず、AIの民主化は遅れている」という課題でした。
ビジネスの現場でAIを活用するには、データサイエンティストの存在が不可欠です。データサイエンティストとは、IT、数学・統計学、そしてビジネスドメインの3つに通暁していなければならない、極めてスキルの高い専門職であり、一般的なマーケターがこれらすべてを習得するのは非常に難しいのが現実です。有益は「現状、マーケターがAIをうまく活用するというのは、ハードルが高すぎる」とし、「この現状を打破しない限り、AIの民主化は進まない」と問題を提起しました。


デジタル化が進むほど仕事は増える

一方で、近年マーケティングの世界でも、AIを活用するシーンが増えています。その理由を、「従来よりも意思決定をする機会が非常に増えているからだ」と、有益は考えています。
具体的な例として、取り上げたのが、マーケティングオートメーション(MA)でのスコアリングです。スコアリングの部分はマーケターやSEがルールベースで決めていることが多く、「セグメントが多くなるにつれ、管理しきれなくなることが多い」とその問題点を指摘しました。
そこで、「その大変なところを代わりにやってもらおうということで出てくるのがAIであり、DataRobotなのです」(有益)。
「DataRobotは、マーケターにとって、もっとも大変な部分を肩代わりしてくれると同時に、AIの民主化を実現するツールでもある」とし、もはや「AIなくして発展なし」というデジタルマーケティングの現状を明らかにしました。

(左から)中野高文氏、有益伸一

事例1:スコアリングが改善されてアポ獲得数が2倍超に

DataRobotを活用した代表的なケースとして、法人向け名刺管理サービスSansanの事例が、中野氏から紹介されました。
DataRobotの導入目的は、MAでのスコアリングの精度を上げ、インサイドセールスがアポイントメントの獲得数を増やすこと。そのために、ユーザーのデータからアポイントメントが取れそうな確率を予測するモデルを作りました。結果、スコアリングの精度が大幅に改善され、2倍以上のアポイントメントが獲得できました。
中野氏は、「これまでMAを利用するうえでボトルネックとなっていたスコアリングの部分をAIに行わせることで、マーケティングでも、非常に大きなインパクトを出すことができるという好例」と語り、有益も「アポイントメントの獲得数が2倍以上というのは、本当にすごい成果」と絶賛し、AIとMAの連携可能性を示唆しました。


事例2:プランニングのスピードが大幅に改善

続いて、有益より、電通デジタルにおけるAIのビジネス活用事例が紹介されました。 電通グループは、People Driven DMP®という独自のパブリックDMPデータを所有しており、これらを活用してさまざまなチャネルのユーザーときめ細やかなコミュニケーションを行う、People Driven Marketingを推進しています。 DataRobotを導入して大きく改善されたのが、プランニングのスピードと精度でした。「従来は1ヶ月かかっていたところを、数日でプランニングに持っていけた事例もある」(有益)と述べました。

有益伸一(電通デジタル)

事例3:バジェットの最適化

3つ目の事例として有益は、バジェットを決めていく作業にDataRobotが活用できる例を紹介しました。
あるマーケティング施策に投入した金額、予算額、PV数、リーチ数、インプレッションなどのデータを学習させることで、それぞれのチャネルが売上に対してどれぐらいの価値があるのかを弾き出してくれるのです。
「アトリビューション分析の考え方に近いですが、現時点でここまで複雑な計算に対応できるツールは他にない」と有益が言うように、DataRobotをうまく活用することによって、E2E(エンドツーエンド)で、その売上に対して何の施策が効果的だったかが明確になるのが利点となります。

3つの事例を総括して有益は、「今、電通デジタルでは、ありとあらゆるマーケティングに対して、AIがドライブしています。そういう考え方のもとに、さまざまなご支援をさせていただいている」と語り、マーケティングにとってAIは欠くべからざる存在だということを、改めて強調しました。


DataRobotの特徴とは?

続いて、中野氏自らがDataRobotを操作してのデモが行われました。今回のデモは「とあるECサイトでのユーザーの休眠予測モデルを作り、そのモデルを使って、実際に休眠しそうなユーザーを予測するケース」を想定して行われました(休眠とは半年間購入がない状態)。
教師データであるExcelのデータをDataRobotにドラッグ&ドロップして、「休眠顧客化」をモデルのターゲットとして選び、画面の真ん中にある大きな「開始ボタン」を押すだけです。
モデリングが始まると、1,000~2,000のさまざまな分析のデータ前処理とアルゴリズムを組み合わせたブループリント(分析の青写真)の中から、今回のデータに適したブループリントを30~40選んで、自動でモデリングを行います。

中野高文氏(DataRobot)

これをデータサイエンティストが人力で行うと数ヶ月はかかりますが、DataRobotなら、文句ひとついわずにモデリングしてくれ、どれが一番いいのかもすぐに分かります。「これがDataRobotの一番特徴的な機能」と中野氏は説明します。
完成したモデルは、リーダーボード(モデルの順位表)の画面に、最適順に一覧表示されます。もちろん、そのモデルの詳細も見ることができます。
最後に、作成したモデルを使って、「現在のユーザーの中でどんな人が休眠確率が高いのか」 を予測すると、該当ユーザーが示され、さらに「予測の説明」という形で、休眠確率が高く出た理由が表示されました。 ここまでほんの20分ほど。これぐらいの短時間で、モデリングから予測までできるツールは「今のところ、DataRobot以外にない」と中野氏は強調しました。


AIがビジネスをドライブする

デモを終えて、中野氏は、「DataRobotを使ってマーケティングファネルのさまざまなユーザーに対して、AIを活用することができる」とし、「ぜひ、さまざまなマーケティングの場でAIを活用していただきたい」とまとめました。

最後に、有益は、「これからマーケティング領域では、AIの存在感がますます大きくなり、マーケターは否応なしにAIを活用する側になる。その事実を恐れずに、AIと共創していくという感覚を持ちつつ、マーケティングを良くしていっていただきたい」と話し、今回のセッションを締めくくりました。


講演者略歴

電通デジタル チーフコンサルタント
有益伸一

事業会社において、デジタルマーケティングを軸とした事業推進・マネジメント及び、マーケティングコンサルティング業務の実行を経て現職。
CRM、MA、機械学習、BI等の最新マーケティングテクノロジーを統合的に活用し、企業のデジタルトランスフォーメーションを実現し、経営課題・事業課題を解決に導く事を強みとする。デジタルマーケティング関連の講演・寄稿多数。

DataRobot データサイエンティスト
中野高文

イギリス、カナダの修士・博士過程で量子情報論を専攻。 機械学習を活用することで高いパフォーマンスのリターゲティングサービスを提供するCriteoのData Science/Analyticsチームリードとしてビッグデータを用いた分析を行う。
2017年5月より日本2人目のデータサイエンティストメンバーとしてDataRobotに参画。 より多くの人がビジネスで機械学習を活用できるよDataRobotを使った機械学習の民主化を推し進めている。小売の需要予測からマーケティングでのターゲティングまで幅広い課題を解決し、企業のAI変革を推進する。

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