2019.06.03

シェアリングエコノミー×デジタルネイティブ最新動向 ~サービス・事業開発のためのヒント創造セッション~

デジタルネイティブ専門チーム「YNGpot.™」主催セミナー

電通デジタルは、デジタルネイティブのインサイトや購買行動等のデータを軸に、最新トレンドを踏まえた戦略立案から実装までワンストップで行うマーケティングの専門チーム「YNGpot.™(ヤングポット)」を2019年4月に発足しました。これに伴い、2019年4月16日にシティラボ東京(中央区京橋)で開催したセミナー「シェアリングエコノミー×デジタルネイティブ最新動向~サービス・事業開発のためのヒント創造セッション~」のレポートをお届けします。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

デジタルトランスフォーメーション部門
サービスマーケティング事業部

佐々木 駿

デジタルトランスフォーメーション部門
サービスマーケティング事業部

青木 彩恵

デジタルトランスフォーメーション部門
サービスマーケティング事業部

加形 拓也

近年拡大するシェアリングエコノミー市場

青木 : 先日発足した「YNGpot.™」が調査活動の一環として発表した「国内シェアリングサービスに関する生活者意識調査(2018年度)」の調査結果をお伝えする前に、まずシェアリングエコノミーの定義と市場環境についてお話します。

シェアリングエコノミーは、「十分に使われていないモノ、空間、知識・知恵、技能等の遊休資産を ICT(Information and Communication Technology)の活用によって共有する幅広いビジネス」と定義されています。また、シェアリングエコノミーに関するサービスは「空間、モノ、移動、スキル、お金」の5つに大別されます。

シェアリングサービスは、1年半ほどで多くのプラットフォーマーの入れ替えがある活発な市場で、シェアサービス提供者だけでなく、周辺業界も盛り上がっています。民泊でいうと、民泊に使う物件紹介の不動産ビジネスや、民泊後の清掃代行業者、また民泊用のレンタル家具業者など、様々な事業が立ち上がっており、雇用も生まれています。

こうした動きもあり、市場規模自体は順調に拡大すると予測されています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会が発表した「シェアリングエコノミー市場調査2018年版」によると、市場規模は、すべてのカテゴリー総計で、2018年は1.8兆円となっています。現状のペースで成長した場合、2030年には5.7兆円規模となる見込みで、これは海運、アパレル業と同規模になると予測されています。

国はこのような流れに対して、取引の安全性担保や法整備への取り組みを加速させ、より日本国内でのシェアリングエコノミーの市場拡大を推進していく方針です。シェアリングエコノミーは、国を挙げての不可逆的なトレンドになりつつあり、法整備や地域課題の解決など様々な論点があります。

加形 : 多くのサービスは、誰かにモノを所有してもらうということが前提だったと思いますが、今後、所有が前提のビジネスモデルは、売上が減っていくことになるので、まずはシェアリングエコノミーの状況を知るということが重要ですね。

世代で異なるシェアサービスの価値

青木 : このような状況を踏まえ「YNGpot.™」は、1都3県の18~60代男女2万人を対象に、シェアリングサービスの代表的な4つのサービス「モノ、場所、リソース、移動」を対象とした最新の利用実態と利用意識について調査を実施しました。調査では、特にシェアリングサービスの実際の利用者1500人について深掘りしています。これから、調査結果から出てきた注目キーワードに沿って調査結果の詳細をご説明します。

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注目キーワードは4つです。

1つ目は、「身近な生活圏でのサービス」です。シェアリングサービスの認知率・利用経験率・現在利用率を2万人に聴取したところ、1つでもサービスを認知していると回答した人の割合は86%、利用経験がある人は50%を越え、そのうち今も利用している人は45%と、継続率は高めでした。日本ではメルカリやヤフオクなど、モノのシェアサービスの認知度が高くなっています。

モノのシェアサービスの認知度と利用度が高い理由としては、掘り出し物との出会いや、安さが理由に挙げられました。特に2017年から、2018年において、一番認知が上がったサービスは、1位が「Uber EATS」、2位が「ジモティー」でした。これらのサービスの共通点を見てみると、エリアが限定され、生活圏の中で行うシェアのサービスの認知が上がっているように思います。

インターネットを介して、モノのシェアサービスがすでにインフラ化されていることから、今後は、お手軽なちょっとしたニーズを、地域でシェアしていくことが注目されるのではないでしょうか。

2つ目の注目キーワードは、「世代で異なるシェアサービスの価値」です。サービスを利用する側の理由は、金銭的な理由を筆頭に、手軽さや手っ取り早さなどが挙げられました。また、シェアサービスでしか手に入らないもの(掘り出し物)があるという結果も、上位にランクインしています。

次に、提供者側のニーズとしては、「整理整頓」や「有効活用感」が挙げられています。若者が「コスパや金銭意識」を持つのに対して、特に年代が上がるほど、「有効活用感」を理由に挙げており、「もったいない意識」を高く持っているようでした。

個別サービスごとに、ユーザーの世代の違いを見ていくと、「ヤフオク」の利用年代層は40~50代、「メルカリ」は18~20代の支持率が高いという興味深い結果が出ました。

提供価値自体がそもそも異なるという前提はありますが、同じようなサービスであるにも関わらず、支持する年代に違いが生まれる理由には、サービス設計の違いが挙げられます。「メルカリ」は、気軽にスマホで取引をし、さらに売る相手を選べます。相手を信頼できるかどうか図る尺度が、機能内に数多くちりばめられている点が若者の心理に沿っているようです。これを鑑みると、世代ごとのサービス設計を、どう考えればいいかというのが、見えてくるのではないでしょうか。

シェアは「18~20代×高年収層」の利用率が高い

青木 : シェアリングサービスの利用者と一口に言っても、使っているサービスの多さや頻度によりレベル感が存在します。そこで、年代・年収別に利用サービス経験を分布すると、多くのサービスを高頻度で使用する利用者である「シェア先端層」は、「18~20代高年収層」に多いことが分かりました。これが3つ目のキーワードです。

所有意識・生活価値観に関する調査を行なったところ、「非所有・非ブランド志向」「体験・他者との出会い重視」「合理的、高コスパ思考」などの特徴が挙げられました。インタビュー結果からは、彼らにとっての「コスト」とは、実際の金額ではなく、体験・場を作り上げるための労力の「トータルコスト」で出費を判断していることが見えてきました。

現状、総合的に見るとシェア先端層は18~20代高年収層に特出して出現しており、一定の年代間での「シェア」に対する価値観の分断が生まれているようにも見てとれます。しかし、価値観やマインドは、環境によっても大きく変わっていくものであるので、他の世代にもシェア利用が広がっていく可能性は大きく、現に全ての年代で「シェア先端層」は昨年と比べて増加傾向にありました。

ただ、現時点で18~20代高年収層のセグメントはシェアを牽引していく存在なので、彼らの動向に、より注目していくことが大事になっていくのではないでしょうか。

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4つ目のキーワードは「TPO消費」です。シェアサービスと既存業界サービスとの関係性についての調査結果を見ていきます。旅行時の宿選びを例に、どういうときにシェアサービスを選ぶのかという質問を、今回のセミナーのテーマでもあるデジタルネイティブに行いました。気を使わなくて良い、仲の良い友達との旅は、ワイワイ楽しめる「Airbnb」などのシェアサービスを使い、そこまで仲良くない子たちとの旅は、清掃などのサービスが行き届いている、ホテルを利用するなど、TPOに分けて利用をしているようです。

シェアを加速させるデジタルネイティブは誰なのか

前半は、調査を元に「シェアリングサービス」の利用実態・利用意識について学ぶことができました。後半はデジタルネイティブの実態と、「YNGpot.™」の事業・サービス開発メソッドに迫ります。

佐々木 : デジタルネイティブは、消費者としての立場だけでなく、次世代のビジネスを担う存在といえます。一方で、多様なクライアント企業と関わる中で、「若者のトレンドは理解し難い」「若者に本音を言ってもらえない」という悩みをよく聞きます。このような背景から、デジタルネイティブ固有のインサイトや、彼らが生み出すビジネストレンドの研究をし、企業の課題や事業開発に応じて活用することをミッションに、「YNGpot.™」は活動しています。

デジタルネイティブは、理想と現実を行き来する世代

今日は私たちが得意とするデジタルネイティブのインサイトの分析から一部を紹介します。 デジタルネイティブは、何事にも独自の理由と納得感が必要です。合理性やコスパが、一般的な合理性とは別に、意思決定に影響していることがあります。

例えば、CtoCプラットフォームの出現により、いくらで売れるのかということも想定し、商品を買う若者が増えています。使ってすぐ売ることは、「コスト=定価-売却価格」の考え方となり、購入ハードルを下げています。極端な例ですが、本の購入直後、フリマアプリで出品して、そのあとに読み始める若者もいるようです。

デジタルネイティブは、コストパフォーマンスのみならず、タイムパフォーマンスも重要視します。例えば、20分電車を待つのであれば、30分かけて歩く方が、彼らにとって合理的な行動であることがあります。歩くことで新しい発見がある、体を動かすことで時間あたりの満足度が高いことが理由に挙げられます。また、できるだけ無の時間(何もしていない時間)を回避したいという思いも強く、時間あたりの満足度を高めるため、タクシーや新幹線にお金を払うこともしばしばあります。

消費する際の、ほかの象徴的な価値観でいうと、「共感」や「共鳴」を大事にする側面があります。モノを直接販売できるプラットフォームができたことから、選ぶ基準がメジャーなブランドよりも、ブランドのコンセプトや物語に共感することが消費の動機になっています。「何を言うか」はもちろん、「誰が言っているか」、さらには「なぜそう言う(言える)のか」をみて、取捨選択しています。その物語への共感や共鳴が、自分の個性を形成する一要素となっているようです。

加形 : 20年ほど前には、「ストーリー消費」という概念が流行っていましたが、今は現実のものとしてありますね。気の合う出品者さんから、モノを買おうとするなど、売り手も買い手も互いに選べる時代となっていますね。

佐々木 : 今まで、様々な切り口からデジタルネイティブを見てきましたが、価値観が今までと大きく変わってきていることを感じていただけたのではないでしょうか。この変化を念頭に考えないと、企業のビジネス活動も大きく外す可能性があるため、インサイトのインプットが重要であると考えています。

デジタルネイティブのインサイトをどのようにビジネスプロセスに生かすか

佐々木 : ここからは、デジタルネイティブのインサイトをビジネスプロセスとして具体的に落とし込んでいくための「YNGpot.™」のメソッドを紹介します。

「YNGpot.™」のオーソドックスなサービス開発は、「インサイト理解」「アイデア創造」「アイデアブラッシュアップ」の3ステップがあります。プロジェクトのサイズにもよりますが、だいたい2ヶ月半〜3ヶ月ほどで回しています。このステップで重要なポイントをご紹介します。

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1つ目のポイントは、「全工程にターゲットを巻き込み続ける」です。社員と生活者が1つのチームとなり、対等な関係で走りきる開発モデルとなっています。

加形 : 顧客調査や共同開発に生活者を巻き込み開発する「Co-Creation(共創)」とは違うのですね。

佐々木 : はい。今までの、「Co-Creation」の手法では、共創の範囲が、アイデア開発のみになったり、各工程によってコミットメンバーがバラバラになったりしがちです。その結果、アイデアの起点となる思想や、ターゲット評価に微妙なズレが生じてしまうことがあります。

そこで、私たちは、社員とサービスのターゲットである生活者で構成されたチームが全ステップに一貫して関与してもらうことを推奨しています。例えば、ユーザーの要望・不満の発掘の段階から一緒になってプロジェクトを進めることもあります。リアルなニーズから、アイデア~体験シナリオまでを同一のメンバーで描き切ることができます。合わせて、コミットメンバー以外のターゲット層にも評価をもらうことで、量的な補完と改善を高速で図ります。

事業会社単体でのコミュニティ型開発は、どうしても生活者とのブリッジに主従関係ができてしまい、対象者の本音に迫れない可能性があります。私たちのチームがバランサーとして入ることで「対等な共創環境」の実現のお手伝いができます。

2つ目のポイントは「速くカタチに、速く磨く」です。初期の方向性は、往々にしてのちに軌道修正が必要になるため、早いタイミングで決定することが大切です。また「使われ続ける」ためには、コンセプト同様に、UI/UXも非常に重要です。細かなニュアンスや操作性への反応を汲み取り、磨き込みます。この過程ではハードウェアやプロトタイプまで電通グループで支援できる体制があります。
 

サービス開発のステップにおける「YNGpot.™」のポイントを説明したのち、実際の事業実施に至るための突破力に必要な視点についても紹介しました。その後同会場で行われたセミナー参加者とのミニセッションでは、社内で事業を進める悩みや提供サービスに関する質問などが挙がり、盛況のうちに幕を閉じました。

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