2018.12.07

サービスグロースハックを支えるデジタル組織の作り方

デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2:セッションレポート④ (パネルディスカッション )

電通デジタルが、経営者・リーダー層を対象に開催した「デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2」。4回にわたってお送りした再録レポートの掉尾を飾るのは、「サービスグロースハックを支えるデジタル組織の作り方」をテーマとしたパネルディスカッションです。株式会社 電通デジタルの高木をファシリテーターに据え、株式会社 Moonshot 菅原氏、株式会社 メルカリ 樫田氏、株式会社 ディー・エヌ・エー 小東氏のデジタルネイティブ世代を牽引する若手企業リーダー3名が登壇しました。

会場からは質問を、オンライン質問投稿・回答サービス「Sli.do」で随時受付。気になる質問をパネラーが都度回答するフランクなセッションとなりました。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

電通デジタル
デジタルトランスフォーメーション部門
デジタルコンサルティング事業部
グループマネージャー

高木 僚平

株式会社Moonshot
代表取締役 CEO

菅原 健一 氏

株式会社メルカリ
データアナリスト/マネージャー

樫田 光 氏

株式会社ディー・エヌ・エー
ゲームサービス事業部 分析部 部長 兼ゲームサービス事業部 第一ゲームサービス部 部長

小東 祥 氏

企業が成果を上げるには目的設定が不可欠

高木 : 今回は、デジタルネイティブ世代で活躍する若手リーダーの3名をお呼びし、既にリリースされているサービスをどう成長させていくのかについて考えていきます。多くの企業で見られる悩みは、データ分析がなかなかビジネスに結びつかないことです。分析がビジネスに直結しない場合、何に問題があるのでしょうか。

Moonshot 代表取締役 CEO 菅原 健一 氏

菅原 : 会場の皆さんにお伺いします。目標ではなく、目的を管理されている企業の方はいらっしゃいますか? ほぼ手が挙がらないでしょうか......。会社の資源は、人・モノ・金しかありません。限られた企業の資源を目的のブレた経営意識で使ってしまうと、会社の成果は出にくくなります。まずデータ分析の前に、プロジェクトの目的を定めることが必要です。

樫田 : 菅原さんの言葉に付け加えるなら、目的をただ単に言語化しただけでは、必ずしもすべてのメンバーが同じ方向に進んでいけるわけではないということです。皆を同じ方向に向かわせるには例えば「継続率を2倍にする」といったように、数値に落とした具体目標を掲げる必要があります。いわゆるOKR(Objectives and Key Results:目標と主要な結果)ですね。オブジェクティブの設定は経営レイヤーの仕事ですが、現場ではキーリザルト(数字)に落としこみ、「このチームは目的を達成するためにこの指標を〇〇まで改善する」などといった具体的な目標を持つことになります。チームの目的・目標を作る際に、数字をベースにコミュニケーションし、そのためにデータを活用するというのが、データの賢い使い方だと思います。

メルカリ データアナリスト/マネージャー 樫田 光 氏

企業のビジョンと目的、目標をしっかりと意識する

高木 : 企業にはオブジェクティブ(目的)のほかにビジョンがあります。ここでビジョン、オブジェクティブ、目標という言葉を整理してみましょう。

菅原 : ビジョンは企業固有のもの。オブジェクティブは、ビジョンに比べるとより現場に近いフェーズにあるものですね。

小東 : ビジョンは、例えるなら北極星のようなものです。いつまでたっても辿り着かないが、進むべき方向性は示されている。ビジョンを提示するだけでなく、従業員全員がなぜそれを目指しているのか、その目的まで落とし込む必要がありますね。

樫田: ビジョンというのは、例えば個人で言うと「市場価値の超高い人材になる」と言ったレベルのものかと思います。その人材を仮に「圧倒的人脈のある人」などと設定するとしたら、その実現のために「今年は社外で500人の人に会う」などの具体的な"目標"が出てくるでしょう。もし組織の話でわかりづらいと感じたら、このように個人レベルに落として、1つずつ階層にわけて考えてみるといいですね。

ディー・エヌ・エー ゲームサービス事業部 分析部 部長 兼ゲームサービス事業部 第一ゲームサービス部 部長 小東 祥 氏

デジタルネイティブ企業の特徴

高木 : 会場から「Sli.do」を使った質問が来ていますので、ご紹介します。デジタルネイティブ企業が一般的な日本企業と違う部分があるとしたら、どんなところでしょうか。

樫田 : メルカリの例でいうと、人材流動性の高さや前職・前々職のベストプラクティスを持っているという点は大きいと思います。社内には、メルカリより1世代前のメガベンチャーなどで働いた経験のある人材多く、そこで得たベストプラクティスを持っていたり、社外の勉強会に顔を出していたりと、新しい情報や技術を豊富に持っていたりします。

そのため、新しい技術やソリューションを使うことに躊躇がない。「以前の会社でこの手法を取った」という強力な説得材料があると、新しいトライアルの際に無駄打ちをせずに済みます。一方、昔ながらの企業ですと人材流動性が低いため、新しい技術やソリューションの導入に勇気がいると思います。

電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 デジタルコンサルティング事業部 グループマネージャー 高木 僚平

高木 : デジタルネイティブ企業特有の採用方法はありますか?

小東 : 人材は組織の掲げたビジョンや事業領域を旗印に集まるイメージがあります。ディー・エヌ・エーではディー・エヌ・エーで働く全ての人に求めるマインドセットを定義しており、それを満たす人しか採用しません。例えばデータ分析チームの採用であれば、候補者がデータ分析をする際のモチベーションがどこに向かっているのかを見ます。自分の市場価値を高めることが最優先!などモチベーションが自分に向きすぎている人よりも、事業の成長に目が向いている人がいいですね。マインドセットを重視するからか、既存社員からリファラル採用でいい人材が集まっていると思います。

樫田 : メルカリもリファラル採用が多いです。見ているのは「マインド」や「バイブス」が合うかどうか。今日のセミナーのテーマである「デジタルトランスフォーメーション」も、一緒に働く人同士のマインドが合わないと実現が難しいのではないかと思います。

あと先ほど小東さんがおっしゃった「働くモチベーションの方向性がどこに向かっているのか」という点は、採用時に重要視しています。私はメルカリに入りたいという人に必ず聞く質問があります。「入社してから1ヶ月間あなたに完全な自由を与えたとします。その時にあなたは何をしますか。大事な行動の順で、3つ教えてください」というものです。

小東 : 私も同じ質問をしますよ。データは自由に取れて、こちらは何でもサポートします。その上で何をしますかという質問ですね。

樫田 : 本当ですか、全く一緒なのはすごいですね。


AI社会を見据え、必要な個人スキルとは

高木 : 採用時に重視するというお話がありましたが、もう一歩踏み込んだ話をしたいと思います。働くモチベーションやマインドはいいけれど、個人のスキルにやや不安を残す人がいた場合、過去にご苦労された経験はありますか?

菅原 : このスキルという言葉が何を指すかが、結構難しいですね。今日はデジタルトランスフォーメーションがテーマなので、データ分析をする上で必要なことという観点でお話ししますと......。データ分析に携わる人に持っていてほしい力は、「分析方法を知っている」「分析能力がある」ではなく、「問いを立てられる力」です。もっと具体的にいうと、「この問題は解くべきなのか、解かざるべきなのか」。「もっと大きい問題は何なのか」を考える力です。

皆さんの目の前に小学生の男の子がいて、試験問題の解答シチュエーションを思い浮かべてください。子どもは必ず難しい問題を解かずに、簡単な問題から解いていきます。そのほうが点数は高いからです。でもビジネスは逆。この問題は解くべきなのか、問題用紙自体を疑う能力が必要です。また難しい問題から解いたり、目の前のものより難しい問題を探したりする能力も問われます。そして簡単な問題を解くのは、やがてAIの仕事になっていくのです。

樫田 : スキルでもマインドでも共通で確認すべき点は、採用時点で足りないものが「後天的に獲得可能なもの」かどうかを見る必要があるということです。まずスキルからお話しすると、菅原さんの話された「分析の勘所」は年齢にもよると思いますが、短期でそう簡単に獲得できるスキルではありません。逆に分析に必要なプログラミングのスキルなどは、地頭のいい人なら3ヶ月もあれば使いこなせてしまう。

マインドも同様です。「メルカリの事業に興味があるか」どうかは、採用フローを通して意向が増していくケースも十分あるので応募時にはそこまで強くは気にしない。逆に「仕事や自己成長にそもそも興味がない」というマインドの人だと、短期でそれをやしなうのは困難で、先天的に備わっていてほしいマインドに乖離がある。

高木さんの質問に戻りますと、マインドは良さそうだけど、先天的に獲得していてほしいスキルが足りない場合を指して、その人をどうすればいいのかという問いですよね。結論として、採用は難しい。だから採用の段階で、「後天的に獲得できる可能性が低いもの」でフィルタリングをかけることが重要だと思います。


そのほか会場から「部門を横断するプロジェクトを立ち上げた時に、経営理念と結びつかない目標提示があった場合、どのようにモチベーションを保ったらよいか?」などの質問がありました。

概要を含め、全5回にわたる「デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2」のレポートは、今回を以て終了です。デジタルネイティブ世代ならではのスピーディーで歯切れのよいトークセッションは、約1時間の持ち時間では足りないほど盛況のうちに終了しました。

「デジタル変革を事業成長につなぐビジョン・組織・人づくりとは?」と題した今回のセミナー。大手企業におけるデジタルトランスフォーメーションの事例と、デジタルネイティブ世代が活躍する企業での取り組みを余すところなくお伝えし、実務担当者にとって有益な内容となりました。

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