Advertising Week Asia 2019 セッションレポート
「AI・広告・エンターテイメント」

アドバンストクリエーティブセンター AIクリエーティブ開発グループ グループマネージャー 和泉興と、株式会社よしもとロボット研究所 代表取締役 梁弘一氏、データアーティスト株式会社 代表取締役社長 山本覚氏Advertising Week Asia 2019の「AI・広告・エンターテイメント」に登壇しました。今後AIが広告やエンターテイメントをどのように加速させていくのかをディスカッションしています。

Advertising Week Asia 2019の2日目(5月28日)に行われたトークセッション「AI・広告・エンターテイメント」に、電通デジタル アドバンストクリエーティブセンター AIクリエーティブ開発グループ グループマネージャーの和泉興が登壇し、AIを活用した広告の自動生成や最適化に関するツールをご紹介しました。後半には、株式会社よしもとロボット研究所 代表取締役 梁弘一氏、データアーティスト株式会社 代表取締役社長 山本覚氏とともに、今後、AIが広告やエンターテイメントをどのように加速させていくのか、ディスカッションを行いました。

AIを活用した電通デジタルの4つの広告ツール(和泉興)

セッションではまず和泉が、AIを活用した電通デジタルの4つの広告ツールを紹介しました。

和泉興(電通デジタル)
和泉興(電通デジタル)

1つめの「ADVANCED CREATIVE MAKER®」は、AIを使って広告バナーを自動生成するツールで、必要な情報を入力するだけで数千枚のバナー候補を生成し、パフォーマンスが高いと予想した表現案をAIがレコメンドします。コピーを書くのは、電通のAIによる広告コピー生成システム「AICO」です。セッション当日に発表されたバージョン1.0へのアップデートでは、各バナーのCTRがどれぐらいなのかを予測する性能が大きく向上しました。これについて和泉は「1年間の開発期間を経て、ようやく仕事の役に立ってくれそうなところまでたどり着いた」と率直な感想を述べました。

2つめの「AIアートディレクター」は、大量に作られたバナーから、AIがセンスの良い案を簡単に選び出してくれるツールです。「ADVANCED CREATIVE MAKER 1.0」に搭載されています。人間のアートディレクターやデザイナーの感覚をAIに学習させてモデルを作成しており、ブランド広告/ダイレクト広告のどちらに最適かのジャッジができるので、CTR予測と組み合わせれば、印象とパフォーマンスを両立させた表現案をあらよりすることもできます。

3つめは、広告クリエーティブ測定ツール「MONALISA」です。Facebook、Twitterにアップする動画広告の再生完了率とCTRを、AIが予測してくれます。広告クリエーティブの特徴をスコア化し、その配信結果を学習することで、事前にスコアの低いクリエーティブを検知でき、高い効果が見込まれるクリエーティブだけを配信することが可能になります。

4つめの「Multi Impact Switcher」は、ツイート情報に気象データを掛け合わせることで、リアルタイムにデジタル広告の出稿量を制御するソリューションです。「然るべき絶妙なタイミングで広告を届けたい」という目的で開発されました。たとえば、気温の上がり下がりなどから人の気分を予測して、清涼飲料水の広告出稿を自動でオン/オフしてくれます。このツールを使うと、世の中のムーブメントを逃さず、その時々、その瞬間に最適な出稿のチャンスを逃さず配信できます。

最後に和泉は、「AIを使えば、消費者一人一人の気持ちを予測し、商品やサービスに一番近くなったときに広告で橋渡しできる。最適なタイミングで最適な広告を届けるためにも、今後もAIを活用していきたい」とAI活用にかける意気込みを語りました。

人を笑顔にするロボットUXデザイン(梁弘一氏)

続いてマイクを握ったのは、よしもとロボット研究所の梁弘一氏です。同研究所は、「ロボットUXデザイン」というコンセプトを掲げ、感情認識ヒューマノイドロボットPepperの内部アプリ開発に取り組んでいます。

梁氏は、「人を笑顔にするヒューマノイド型ロボットの開発においては、キャラクター造形が非常に大事。これは芸人の役作りにも通じる」と、いくつかのPepperデモ動画を交えながら説明しました。

梁氏は、キャラクター造形を活かした開発事例として、Pepperとの会話がより長く楽しめるロボアプリ「ペッパーとおしゃべり」と、Google アシスタント対応のコンテンツで、6組の芸人の3分のネタが聞ける「よしもとタイマー」を紹介しました。

キャラクターとAIの可能性について、梁氏は、芸人のキャラクターやトークの手法、シナリオをデータ化したAIキャラクターの作成や、そうして作られたAIのキャラクターを、ロボット、チャットボット、カーナビ、サイネージ、スピーカーなど、さまざまな音声デバイスに展開するというアイディアを挙げ、「デバイスと人との関係をもっともっと楽しくしていきたい」と意欲を見せました。

AI技術、とくに画像生成と文脈把握に関しての最新の研究動向(山本覚氏)

山本覚氏が率いるデータアーティストは、2018年3月に電通の子会社になって以降、「ADVANCED CREATIVE MAKER®」「MONALISA」のほか、AI自動コピー生成ツール「Direct AICO」や、テレビ視聴率予測システム「SHAREST_RT」など、電通グループの多くのAI案件に携わっています。

画像生成に関するディープラーニング技術の中で、もっとも大きなトピックとして山本氏が注目しているのは、GAN(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)という生成モデルです。GANが実際のサービスで活用されているのではないかと考えられる例として、写真共有アプリの「男の顔、女の顔、子供の顔などを、AIで高精度に自動生成するフィルター機能」に触れながら、「GANは動画の中の動きの合成にも使えるのではないか」と今後ますます活用が広がっていくという見通しを語りました。

一方、「文脈理解における大きなブレイクスルー」として山本氏が言及したのは、短文の文脈理解でのディープラーニングの活用です。2018年10月にはSQuAD(Stanford Question Answering Dataset)という機械読解のタスクにおいてAIが人間の精度を超えました。その際に用いられたBERT(汎用言語表現モデル)という新手法では、事前に専門分野を学習させる転移学習により精度の向上が可能なため注目を集めています。これらさまざまな技術によって、自然言語処理や文脈理解はかなりの進化を遂げつつある、と山本氏は述べました。

文脈を理解できるAIを使って将来何ができるのか、という点について、たとえば、文章をシェイクスピア風やWikipedia風といった異なる文体で書き分けるというのは、近いうちに可能になると山本氏は予想しています。他にも、先ほど梁氏が言っていた「芸人のしゃべりや動きのデータ化」という話に触れ、データセットを作ったり、芸人をAI化したりすることで生じる問題点やその解決策など、さまざまな課題もあることを示しました。

(左から)和泉興、梁弘一氏、山本覚氏
(左から)和泉興、梁弘一氏、山本覚氏

トークセッション:AI、広告、エンターテイメントの未来はどうなるのか?

最後に、和泉をモデレーターとしたトークセッションが行われました。

山本氏の「AIによる文脈理解の精度が高まっている」という話を受け、梁氏は「音声コミュニケーションのサービスの提供方法がもっと洗練されてくれば、ロボットや音声デバイスなど、マーケット的にも大きくなっていくのでは」と述べました。山本氏は「Pepperの会話を聞いていても、間(ま)がすごく大事。学習データの作り方しだいで、会話の間も学習できるはず」と回答。和泉は「もしかしたらロボットが新しい広告メディアになることもあるかもしれない」と言い、スマホ以外のデバイスにも普及していく可能性を示唆しました。

続いて、和泉が「AIと人間は会話できるようになるのか?」という質問を振ると、山本氏は、「会話に必要な要素技術はどんどん進化しており、用途を絞ればやがて会話は可能になるだろう」と答えました。梁氏は「自然な会話は本当に難しい。まだいくつものイノベーションを超えないといけない」とその道のりを嘆きつつも、「用途を絞ったAIというところで言うと、センシング技術がポイントになってくるのでは」との見解を示しました。

最後に和泉から、「これからの広告は、瞬間瞬間の人の気持ちを知ることが大事になってくる。AI自身が『気持ちよさ』を感じ取ることはできるのか?」と問いかけました。山本氏は、「本質的にAIが『気持ちいい』と感じることはない」と前置きしたうえで、「人間が『気持ちいい』と感じる状況を観察することで、『こういう状況のときに気持ちいいと感じるだろう』という形では理解できる。その範囲が文脈としてどんどん深いところまでつかめる方向には来ている」という見方を示しました。しかしながら、梁氏同様「AIが自然に会話するには、あと3つくらいイノベーションが必要」とし、「ディープラーニング、GAN、BERTと、2年ごとに1つずつイノベーションが起きている。あと3つぐらいなら、意外と早いうちに実現するかもしれない」(山本氏)と、今後のAI技術の進展に期待を寄せ、トークセッションを終えました。

会場

講演者略歴

和泉興

株式会社電通デジタル アドバンストクリエーティブセンター AIクリエーティブ開発グループ グループマネージャー

和泉興

コピーライター/CMプランナーとして、自動車、通信、食品、化粧品等のマス広告制作に従事。
2014年より電通ロボット推進センターを立ち上げ、電通のコミュニケーション領域のノウハウをロボティクス領域への応用を実践。
2017年より電通デジタルAIクリエーティブ開発グループに所属し、ADVANCED CREATIVE MAKER®等の開発を行う。
受賞歴にカンヌライオンズ、スパイクスアジアなど。

梁弘一

株式会社よしもとロボット研究所 代表取締役社長

梁弘一

1997年 吉本興業(株)入社。同社WEBディレクターから、デジタルコンテンツプロデューサーを歴任。
自社お笑いIPコンテンツのデジタルメディア、プラットフォーム展開を担当。
2016年9月より、よしもとロボット研究所に参画。ソフトバンクロボティクスのPepperのアプリ開発を中心に、 お笑いで培ったノウハウを取り入れた、キャラクター演出したロボットやAI、ボイスでのコミュニケーション領域で、 人々を笑顔にするUXデザインを軸にしたソフトウェア開発を行っている。

山本覚

データアーティスト株式会社 代表取締役社長

山本覚

東京大学松尾豊教授のもと人工知能を専攻。導入実績700社のWEB最適化ツール「DLPO」をはじめ「視聴率予測」「広告バナー自動生成」などのAIとビッグデータを活用したマーケティングシステムを提供。モンゴル子会社を設立し海外AI人材を育成。東京大学未来ビジョン研究センター客員研究員も兼務。『ワールドビジネスサテライト』、『NHKワールド』など多数メディア出演・セミナー登壇。主な著書『売れるロジックの作り方』、『AI×ビッグデータマーケティング』など。

PAGE TOP