電通デジタル・サムライインキュベート共催セミナー
「日本企業発の『未来デザイン』―社会を変えるオープンイノベーション―」

電通デジタルは、国内外のスタートアップ支援を手掛けるサムライインキュベートと共同での事業創出支援サービスを展開しています。それに伴い、2018年11月29日にシティラボ東京(中央区京橋)で開催したセミナー「日本企業発の『未来デザイン』―社会を変えるオープンイノベーション―」のレポートをお届けします。

電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスマーケティング事業部 事業部長 安田裕美子

電通デジタルとサムライインキュベートの連携

セミナー開催にあたり、電通デジタルの安田裕美子が、認識の共有としてブリーフィングを行いました。まずは、電通デジタルのデジタルトランスフォーメーション部門は「企業のデジタルの変革に対して支援を行う部門」であり、特に近年の傾向として、「企業の事業開発や新サービスを創造する際に、自社だけでは解けない社会課題に直面し、1社ではリソースが十分ではないという相談を多くいただいている」との説明がありました。そして、「我々もパートナーと共に事業を進めていくべきだと考えている中で、サムライインキュベートとの連携が深化し、新サービスの提供に至りました」と、本日のセミナー開催の背景を紹介しました。

6割以上の企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)に着手

冒頭、2018年9月に行った「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション&デジタルマーケティング2018年度調査」を掲示。「おもしろい結果が出た」として、「企業の63%がデジタルトランスフォーメーションに着手しており、非常にすそ野が広がっています」と報告しました。

デジタルトランスフォーメーションに着手済みの企業では、「業務プロセスの先進化」「サービスのテクノロジー活用」が現在の取り組み領域として挙げられています。一方で、これからデジタルトランスフォーメーションに取り組むという企業では、「ビジネスモデルの変革」が一番に挙げられており、イノベーション領域に意欲的に取り組むことで遅れを取り戻そうという姿勢が見てとれます。

DX推進の課題は自社のブレークスルー

また、「デジタルトランスフォーメーションを進める際の障壁はなにか」との質問に対しては、経営層と実務責任者で感じている課題が違うことが分かりました。経営層が感じる課題は、「コスト」「セキュリティ上のリスク」「人材不足」です。実務責任者が感じる課題は、「既存ビジネスモデルや事業の存在」「組織のサイロ化」「ビジョンや戦略の欠如」で、両者には相容れるところがないという結果が報告されました。

ここから読み取れることとして、安田は、「新規事業やサービス開発を通して新しい価値を市場に問うていくといったときに、日本の企業の問題は、市場よりも自社をブレークスルーできないという状況に悩んでいるのではないか」と投げかけ、「ここをどう解決していくかということ自体が、DX成功の鍵なのではないか」と締めくくりました。

<電通デジタル×サムライインキュベート トークセッション>

<スピーカー>
(写真/左)サムライインキュベート 執行役員 Enterprise Group 成瀬功一氏
(写真/右)電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスマーケティング事業部 チーフコンサルタント 松本健吾
<モデレーター>
電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスマーケティング事業部 グループマネージャー 加形拓也

なぜ両社が連携するのか?

加形 今日は、日本企業発でイノベーションを起こしていくにはどうしたらいいのかを「未来デザイン」というテーマでディスカッションしたいと思います。

松本 事業の開発プロセスは大きく3つに分かれます。「Why」「What」「How」が分断され、シームレスに伝わっていかないという問題が起きています。その中でも大きな課題は、事業戦略のビジョンの欠如が起きているということです。次に、具現化へのハードルも課題として大きいです。

成瀬 事業やサービスのアイデアは生まれたけれど、開発や実行に移れないといった課題があると思います。未来に向けた大きなビジョンを実現するためのアイデアがない、または、社内の承認に時間がかかってしまい、何もせずに終わるということも、よくあるケースです。最近、大企業から「スタートアップと連携したい」という相談が増えていますが、スピード感や文化的差異があり、間をつなぐ難しさはあります。

松本 電通デジタルはオープンイノベーションを活用した新サービス・ビジネス創出の支援が得意です。スタートアップ×大企業を支援するサムライインキュベートと組むことで、ワンストップで新規事業を生み出すことができるのではないかと思っています。

解決のためのKSF

松本 数年後から10年後の未来を見据えたビジョンを構築する「Why」、デザイン思考×戦略思考による実現可能なアイデア発想の「What」、そして実行に向けた外部パートナーとの連携である「How」の3つを行き来しながら進めていくのが、新規事業を進めていく上でのKSF(Key Success Factor)なのではないかと考えています。電通デジタルがもつ、ビジョン構築やコンセプトをつくる力を活かした大企業を動かすようなストーリー性と、サムライインキュベートの実現力が掛け合わさることで、一気に具体化していくプログラムを提供しています。

両社の強みを活かした事業創出支援プログラム

松本 グルグル頭の中で考えても物事はなかなか進まないので、我々と企業が一緒にスクラムを組んで一気に前に進んでいこうというプログラムです。誰とどうやって進めるのかといったポートフォリオ作成まで行います。両社の強みを活かしたプログラムの進め方は以下のとおりです。

  • ●新事業開発に必須となる未来構想段階の「行きつ戻りつ」のアジャイル型ワークフロー
  • ●未来のライフスタイル描写、未来事業コンパスなどの他コンサルにはないクリエーティブツールの活用
  • ●新規事業を誰とどうやって推進するかまで踏み込んだポートフォリオ作成

我々には世界中のテック企業とのネットワークがありますので、掛け合わせることで一気に具体化させます。

プログラムの全体像プログラムの全体像
プログラムの全体像

プログラムの全体像と概要

松本 本プログラムでは、①調査を踏まえながら未来仮説を構築、②アイデア発想とビジョン構築、③サービスアイデアの具体化と受容性の評価を、両社で連携しながら一気に進めていきます。アイデアの実証(POC:Proof of Concept)の後、事業性が見込まれ、社内で上申できるのであれば、事業化支援に進みます。

まず、電通デジタル保有の中長期未来予測トレンドも活用しながら、「人口・世帯」「社会・経済」「地球・環境」「科学・技術」の4領域、55テーマに未来の社会トレンドを分けたオリジナルのデータベースをもとに、企業にとってどのようなインパクトがあるかを考えます。重要なトピックを企業と共に考えながら、専門メンバーや社外有識者へのヒアリングをすることで、企業が着目すべき事象の変化を捉えていきます。

電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 サービスマーケティング事業部 グループマネージャー 加形拓也

「将来を描くこと」と「技術的な探索」はセット

加形 最初は、かなり広くやります。たとえば、食品会社の場合でも、食品業界にこだわらず、生活そのものがどう変わっていくのか、社会制度がどう変わっていくのかということを一気にインプットします。認識の共有を行ってから、食品業界に関係あるものは何かを詰めていくという手法です。

松本 食品会社の場合、やはり自社領域である食品周りのことを考えがちですが、我々が参加することで、フラットな目線かつ幅広く社会トレンドを読み解くことができるようになります。そこに我々の存在価値があると考えます。2020年、2040年の未来を踏まえ、最新の知見を提供し、一緒に考えていく進め方です。

成瀬 我々は、「将来を描くこと」と「技術的な探索」をセットで進めます。企業の話を聞くと、「本当にいいビジネスが目の前を通っても判断できない」という「Why」とつながらないというケースが多くあります。しかし、大きなビジョン(Why)を見据えつつ、リアルなテーマなど粒度の小さいものも入れながら全体を描きながら戦略を描くこと(What)が大切です。そうすることで、スピード感を持って実行(How)につなげることができるようになります。実際に活用し得るテクノロジーやすでに存在しているビジネスモデルを掛け合わせて議論を進めることで戦略を描き、実行のタネも生み出していくことができるのではないかと考えています。我々にはそのためのグローバルなネットワークがあります。

サムライインキュベート 執行役員 Enterprise Group 成瀬功一氏

グローバルなテーマを組み込むプログラム設計

成瀬 もともとグローバルで事業展開されているような企業からは、海外のスタートアップと手を組みたいというオファーも多くあります。日本のスタートアップの特長は、技術的な面でグローバル市場と伍す企業が多いわけではありませんが、日本の市場に合わせてビジネスモデルやサービスを展開できる強みがあります。我々は、日本のスタートアップがサービスを展開しながらイスラエルの技術を使ったビジネスを作り上げることも行っています。

一方で、イスラエルの技術は要素技術としての精度は高いが、実用にはプロダクト化やサービス化が必要だという側面もあり、日本の企業と組みたいという意欲は高いです。中国は、IoTやスマートシティ、物流に関する技術は、圧倒的に日本より進んでいます。そういう分野では、中国のスタートアップも一つの選択肢として選べる状態にはあります。

アメリカはエリアによって違います。シリコンバレーにはハイテク系や、今までなかったようなコンセプトを打ち出すビジネスが多くあります。ニューヨークにもスタートアップは多く、リテール、エンターテインメント、広告、金融などの分野で進んでいます。

分野によって、どの国のどのスタートアップと組むべきなのか考える必要があります。このようなグローバルなテーマを戦略設計の段階から組み合わせながら議論することができるプログラムになっています。

業界の第一人者を迎え、具体的な未来像を結ぶ

松本 サムライインキュベートの強みであるスタートアップとのネットワークと、電通グループの強みである人のネットワークの融合が今回のプログラムの根幹にあります。それ以外にも我々のチームは、東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究組織「共創イノベーションラボ」を立ち上げています。まちづくりやコミュニティをテーマに研究しており、加形を中心に活動しています。

加形 今年は、エネルギー企業と一緒に、2030年に日本の地方はどうなっているのかを考えました。ガソリン自動車がなくなった2030年に僕たちはどのように生活しているのかをテーマに、「どんな課題が生じるのか」「誰がどのように困るのか」「ガソリンスタンドの機能がどう変われば喜ばれるのか」「法律的には大丈夫なのか」などを話しながら、具体的な未来像を描いていきました。我々と組むことで、企業の課題も明確になり、詰めた議論ができるようになっています。

松本 有識者やデスクリサーチ、定量定性調査などを通じて、「どういう未来が待っているのか」「そのときに出てくるニーズはなにか」を一緒に考えています。

構想から事業アイデアへと落とし込む

松本 予測された未来からどのようなニーズが出てくるかを紐解き、そのニーズを満たすサービスを考えていきます。アイデアはすぐ出てこないので、我々はアイデアを出すためのさまざまな刺激剤を用意しています。

成瀬 企業の中で考えられたアイデアを具体的な、すでに実現している技術やビジネスモデルと組み合わせることで、より実現性を高めていきます。また、開発の手としてスタートアップとの連携を推進していくこともあります。一つのアイデアの中でもいろいろな技術が使えます。未来戦略と整合のとれている新規事業や協業のポートフォリオを組むことで実行につながりやすくなります。

松本 実際にどのような協業パートナーがあり得るのかを考えたうえで、収益構造やサービスのスケール展開を一緒に考え、最終的には上層部への説明資料も作っていきます。実際に出てきた事業アイデアを実行に移すために、資産の掘り起こしやどのパートナーと連携していくのかも一緒に考えます。

「事業創出支援プログラム」の概要説明の後、大手通信事業者、国内大手自動車メーカー、大手食品メーカー、テレビ局等、複数の具体的な事例をご紹介しました。質疑応答の時間には、会場に集まった新規事業に携わる企業担当者から、社内で事業を進める悩みや提供サービスに関する質問などが挙がり、その後同会場で行われた懇親会でも、引き続き活発なディスカッションが行われ盛況のうちに幕を閉じました。

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