デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2:セッションレポート①

Digital Innovation - The Aflac Way
~アフラック式デジタルイノベーションの起こし方~

アフラック生命保険株式会社 執行役員 / チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)ブルース・アップルビー氏
株式会社電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 ビジネス/UXデザイン事業部 部長 桑山晃一

電通デジタルが経営者・リーダー層に向けて開催した「デジタルトランスフォーメーションセミナーVol.2」。開催報告に続く第2回は、アフラック生命保険の執行役員でチーフ・デジタル・オフィサー(CDO)のブルース・アップルビー氏による講演です。アップルビー氏の登場の前に、電通デジタルの桑山がイントロダクションを行いました。

大企業におけるデジタルイノベーションの壁とその解とは

電通デジタル デジタルトランスフォーメーション部門 ビジネス/UXデザイン事業部 部長 桑山晃一

大企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指すにあたって、ぶつかる「壁」とは何か。桑山は「大企業におけるデジタルイノベーションの『壁』」と題し、大企業でよく見られる3つの課題を紹介しました。

1つめは「スタートアップ企業とのコラボレーション」の例です。オープンイノベーションやハッカソンなど、新規事業創出にベンチャー企業との協業を模索するものの、頭からIoTやAIといったテクノロジー起点のテーマで始めることが多く、実証実験を行ってもなかなかプロジェクトがスケールしない。結果、大企業側に「PoC疲れ」が生じてしまうのです。

2つめは「業務に『アジャイル』を取り入れる」です。もともとソフトウェア開発で行われていた手法のため、アジャイル型開発プロジェクトはIT部門主導で始められるケースが多く見られます。しかしアジャイルは、ビジネス部門もIT部門も巻き込んだ部門横断的な小集団による取り組みが前提です。大企業では既存組織の壁に阻まれ、結果IT部門以外に波及せず、ウォーターフォール型に逆戻りすることがあります。

最後は「デジタル専門部署の設立」です。若手選抜メンバーや中途採用で専門性の高いスタッフを招聘し、デジタル推進組織を新設するものの、新組織であるがゆえ充分な権限が付与されない。結果として、事業部門の協力を引き出せず、ビジネスインパクトの出づらい周辺領域でのトライアルに終始しがちになってしまいます。

充分なリソースがあるにもかかわらず、大企業のイノベーションがなかなか進まないのは、既存事業と新事業のマインドセットに大きな違いがあるからです。既存事業は「実行モード」で進みますが、新規事業は「探索モード」でビジネスモデルは常に試行錯誤を伴います。新規事業が既存事業の顔色を窺うようでは、継続的にイノベーションを生み出す文化が形成できません。

イノベーションを生む企業カルチャーはどう形成したらいいか。1つは「デジタルをどうしよう」という発想ではなく、顧客に対する共感・理解を戦略の起点に据えることです。顧客の課題に対する理想の体験をカスタマージャーニーで描き、その実現のためにテクノロジーをどう使っていくのか。このような発想が必要と考えます。

2つめは「何が最適解かはやってみないとわからない」という発想で、学習しながら実行できる組織であること。小さく実行し、顧客の反応を見ながら改善を重ねてプロジェクトをスケールさせていきます。これらを実現させるには、現場のリーダーに充分な権限を付与し、組織間のサイロに横串を通す特命チームを設けることが必要です。

このような組織レベルでのマインドセットのシフトを行ったのが、アフラック生命保険です。ブルース・アップルビー氏は、チーフ・デジタル・オフィサー(CDO)の立場から大企業における3つの「デジタルイノベーションの起こし方」について講演しました。

常に顧客の視点に立ち、企業としてデジタル上の顧客体験を統一する

アフラック生命保険株式会社 執行役員 / チーフ・デジタル・オフィサー(CDO) ブルース・アップルビー氏

ブルース・アップルビー氏の講演タイトルは、「Digital Innovation - The Aflac Way ~アフラック式デジタルイノベーションの起こし方~」。アップルビー氏がアフラック生命保険に着任したのは、1年半前。それまでのアフラックでも、デジタルの試みがいくつか行われていました。しかし大掛かりなプロジェクトとして動いたのは、企業としてより統合的な形でデジタルトランスフォーメーションを推進する必要があったことと、他業種で見られるディスラプションが生命保険業界でも起こり得ると経営トップが判断したからです。

トップに危機感がありながらも、アフラック社内には「デジタル」に対する共通認識がありませんでした。そこで、アフラックは「デジタルイノベーションのミッションとビジョン」を次のように定義します。ビジョンは「『生きるための保険』の価値最大化」と「保険の枠を超えた価値創造」。2つのビジョンを下支えするミッションが「イノベーション組織・文化の構築」です。さらに、イノベーション組織・文化を構築する拠点として、青山に「アフラック イノベーションラボ」を2018年8月に開設しました。
URL:https://aflac-innovation-lab.jp/

アフラック イノベーションラボ開設アフラック イノベーションラボ開設

それでは「アフラック イノベーションラボ」で実際に行われた、デジタルイノベーションを起こす3つの事例を紹介します。1つは「カスタマージャーニーとアジャイル」、2つめは「デジタルUI/UXガイドライン」、3つめは「データドリブンPDCA」です。

アフラックは1つめの「カスタマージャーニーとアジャイル」に取り組む際、事業のスピードが早まるなかで、以下の課題が浮き彫りになりました。

  • ・部署ごとのKGIやミッションの違いによってオンライン→オフラインの連携など、フェーズやチャネルごとに分断が見られた
  • ・ユーザーの課題を認識できていても、部署間の隙間に落ちる課題に対しては対処が遅れていた
  • ・企業視点が強くなってしまい、ユーザー視点に立った課題対応が不十分であった
カスタマージャーニーの取り組みカスタマージャーニーの取り組み

まず顧客の困りごとを解決するために、カスタマージャーニーを作成。そこからペインポイントを顧客セグメントごとに洗い出し、どのペインポイントから効率的に対処するかを探りながら、3〜5年後のあるべき顧客体験像(To-Beのカスタマージャーニー)を規定しました。次にあるべき顧客体験像を実現するために、MVP(Minimum Viable Product)と呼ばれる「最小限の実現可能なプロダクト」を設定し、どの部分から着手するのか優先順位を決めた上で、最後にKPIや中長期目標などの数値に落とし込むのです。

具体的には、保険ニーズが顕在化するフェーズから保険金を請求するフェーズまでのEnd to Endのカスタマージャーニーと、それに付随する21のサブジャーニーを規定しました。そのうち8つのサブジャーニーに対して、今期アジャイルチームを立ち上げました。アジャイルチームで重要視していたのは、対面営業やコールセンターなどのデジタル化されていないチャネルとデジタルチャネルのスムーズな連携でした。プロジェクトを設計するだけではダメで、きちんと実装まで落とし込むことが重要なのです。

アフラックは顧客体験を改善するアプローチとして、設計フェーズと実装フェーズの双方でアジャイルの手法を取り入れました。
まず当初に設定したMVPのリリース計画をもとに、アジャイルチームはスプリントのスコープと役割分担を規定します。
毎日実施するデイリースクライムのミーティングで1日単位のゴールや課題を共有。さらに週単位でジャーニーオーナー立ち合いのもと、その週に実施したスプリントの成果物のレビューを行います。
スプリント終了時には、スプリント全体を振り返り、実施プロセスやチームコミュニケーションの改善に向けた議論を行い、次のスプリントに活かします。1回のスプリントで着手するスコープを限定し、なるべく早期にプロトタイプやプロダクトをリリースし、お客様からのフィードバックを得ることが重要です。

2つめは「デジタル UI/UX ガイドライン」です。この施策の背景としては、従来、特定の部署のみで行っていたデジタルプロダクトの制作が、近年社内の多くの部署に大きく拡大してきたことがあります。その影響で、各デジタルプロダクトが部署ごとに最適化されたUXやUIとなり、顧客にとってはバラバラで一貫性のない体験となる可能性がありました。

そこでアフラックは、まず3つのUXの戦略方針を定めました。

  • ・究極のOne to One
  • ・クロスチャネル
  • ・モバイルファースト
UX戦略方針UX戦略方針

これらの方針は保険業界特有のものではなく、特定の業界に依存しないお客様の日常生活における情報探索行動や体験に根差したものです。

ガイドラインはこの3つの基本方針を基に、戦略、要件、構造、骨格、表層という5つの章で構成しています。通常のデザインガイドラインでは順守すべきルール、規則を中心に規定することが多いですが、アフラックとしてのUXの思想やコンセプトから記載することで、初めてアフラックのデジタルプロダクトの制作に関わる社内のメンバーや社外の協力会社の方が、容易に理解できるように配慮しました。

アフラックはアジャイルチームだけでなく、他部門の社員やパートナーが通常業務の中でガイドラインを活用してもらうことを重視しました。そのために他部門へのトレーニングも実施し、彼らがガイドラインを自律的に適用できる状態を目指しています。

今後は生体認証・ボイスといった新しいテクノロジーを活用した接点も増えるでしょう。こちらも顧客体験としてガイド化し、さらに体験を一貫させる予定です。

最後の3つめは「データドリブンPDCA」です。この施策を推し進めるに至った背景として、企業として取得できるデジタルデータが近年そもそも増えてきている中、一方でそのデータを取得する基盤やツールが整備されておらず、更にはそのデータを分析する体制が整っていない、という課題がありました。

そこで、社内外のデータ活用のポテンシャルを探り、ユースケースを定義することから、アフラックとしてのデータ戦略を検討しました。

データ戦略データ戦略

さらにユースケースの実行体制も整えました。一つのユースケースの例としてアップセル・クロスセルのユースケースでは、先ほどのアジャイルチームに似た部門横断型の組織体制を組んで、データサイエンティストの専門性をレバレッジに顧客体験の最適化に取り組んでいます。

以上、この一年間アフラックが取り組んできたデジタルイノベーションのアウトラインをご紹介しました。

アフラックのデジタルイノベーションの取り組みは、まだ始まったばかりです。今後は他業界、場合によっては同業の皆様とのコラボレーションも積極的に行っていきたいと考えています。

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